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見ることの塩(上) イスラエル/パレスチナ紀行 河出文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 河出書房新社 |
発売年月日 | 2024/03/27 |
JAN | 9784309420905 |
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商品レビュー
4.3
3件のお客様レビュー
四方田さんによるパレスティナ滞在記。といっても時期は2000年ごろ。昨年10月以降の情勢を踏まえて、追加的なコメントを付しての再版らしい。 と言っても、この時点で、つまり第2次インティファーダの時点で、今日のような事態になってしまうだろう必然性は十分理解できる。 基本は、現地...
四方田さんによるパレスティナ滞在記。といっても時期は2000年ごろ。昨年10月以降の情勢を踏まえて、追加的なコメントを付しての再版らしい。 と言っても、この時点で、つまり第2次インティファーダの時点で、今日のような事態になってしまうだろう必然性は十分理解できる。 基本は、現地での見聞が中心で、そのリアリティにこの本の価値があるわけだが、パレスティナ問題に関する簡単な説明も載っていて、これがとてもわかりやすく、論点が明快であった。 この解説を読むだけでも、この本を読む価値はある。その上で、さまざまなエピソードを読んでいくと、何だかこの問題が具体的な感覚を伴って感じることができる。 この問題に関して最初の方に読む本として、推奨できる。
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20年も前に書かれた本だが、今とまったく状況が変わっていない(むしろ悪くなっている)ことに驚くし、無力感に打ちのめされる。スパイと見なされたアラブ女性による「私刑」は今も行われているのだろうか。単なるイスラエル対パレスチナでは語れない問題がいくつも絡み合って、永久にほぐれないので...
20年も前に書かれた本だが、今とまったく状況が変わっていない(むしろ悪くなっている)ことに驚くし、無力感に打ちのめされる。スパイと見なされたアラブ女性による「私刑」は今も行われているのだろうか。単なるイスラエル対パレスチナでは語れない問題がいくつも絡み合って、永久にほぐれないのではと思ってしまう。 それでも、「見ることの蜜」を求めて、関心を寄せつづけるしかないのだ、とも思う。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「ユダヤ人とアラブ人との対立だけを漠然と想像していたわたしは、この地に滞在してしばらく経つうちに、社会がけっしてそれほど単純なものではないことを、少しずつ理解するようになった」 冒頭の章、「ユダヤ人の定義不可能性」で記された、この一文に尽きる。 それは何も、イスラエルとパレスチナ問題に限った話ではない。 「ロシア人とウクライナ人の対立だけを・・・」と置き換えても良さそうだし、宗教や民族間の対立のように見える、中東やアジアに見られる諸問題もしかり。 むしろ、戦争を起こさんがための方便として、そうした二項対立が煽られているともいえる、この世界の不条理を理解しないといけない。 だが、それを理解したとして、紛争や、人が人を殺める行為を止められるのか? 「ない」と諦めるのは容易いし、そこで思考停止しててもしょうがない。 では、どうするか? 著者のように、現地に赴き、肌感覚で現地の様子、ユダヤ人とは? パレスチナとは? を感じてこなければならない。 それが叶わぬのなら、せめてこうした良書を手に、想像を働かせ、机上の空論を振り回すことなく、統計学的ではない、地を這うような目線での理解が必要だ。 この文庫版は、2005年の紀行文に、2024年1月の追記が加わっている点が良い。 「これはもはや惨事ではない。決壊と呼ぶべき事態である」 と著者は記す。 イスラエルを中心とする、あの界隈の、これまでなんとか抑えて来た内圧が、小さな綻びから噴出し、崩壊をもたらさんとしているのだろう。現地を見聞きしてきた著者には、その小さな綻びの数と多様さが手に取るように分かるのだろう。 本書には、滞在四カ月でスニーカーを2足、履き潰して見聞きした体験が詰め込まれている。
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