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航西日記 パリ万国博見聞録 現代語訳 講談社学術文庫2809
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 講談社 |
発売年月日 | 2024/03/14 |
JAN | 9784065348390 |
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航西日記 パリ万国博見聞録 現代語訳
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1867年頃に記録を現代語訳した一冊で、大変に興味深い。なかなかに興味尽きない感の一冊に出会えた。愉しく読了に至った。 1867年と言えば、翌1868年に江戸幕府体制が終焉を迎えてしまう、正しく幕末であり、開国後に諸外国との間で色々な事柄も重なっていたというような時期だ。 「万国...
1867年頃に記録を現代語訳した一冊で、大変に興味深い。なかなかに興味尽きない感の一冊に出会えた。愉しく読了に至った。 1867年と言えば、翌1868年に江戸幕府体制が終焉を迎えてしまう、正しく幕末であり、開国後に諸外国との間で色々な事柄も重なっていたというような時期だ。 「万国博覧会」、後年には「国際博覧会」と呼ばれている催しが在る。1851年にロンドンで催された例が最初であるという。1853年にニューヨーク、1855年にパリ、1862年にロンドン、1867年にパリと続いた。最近、日本国内で話題の2025年予定の催しは、こういう催しの後裔ということになる。 1867年のパリ万国博覧会には、日本から初めて出展が行われた。15代将軍となった徳川慶喜(1837-1913)は、実弟でもあり清水家を相続した徳川昭武(1853-1910)を幕府代表としてパリへ派遣した。当時15歳であった徳川昭武の渡航に関して、そのまま数年間滞在し、欧州諸国の文物等について学ぶという「留学」という意図も在ったのだという。 所謂「御三卿」の一つである清水家は「10万石の大名」の格式を有していて、その後継者たる徳川昭武は、当時若年ながらも高い身分を有している。そういう徳川昭武が欧州を目指し、更に滞在するにあたっては随行した人達も多く在った。その随行した人々の中に杉浦譲(1835-1877)や、渋沢栄一(1840-1931)の姿が在った。 この杉浦譲や渋沢栄一が、パリを訪れた際の記録を綴っている。本書にはそれに加え、帰国した際のことを回顧した渋沢栄一が綴ったもの、帰国後に帰郷した際の様子を回顧する娘が綴ったものの一部も末尾の側に添えられている。 本書『航西日記』を綴った人物としては渋沢栄一が知られている。が、当初は杉浦譲が記録担当として船を乗り継ぐ長い旅や、辿り着いたフランスでの出来事等を綴っていたという。徳川昭武一行の関係者は、色々な事由で順次帰国の途に就いた。杉浦譲が帰国することになり、渋沢栄一は記録の役目を引継ぎ、様々な見聞に関して綴り続けた。その記録が後年に編纂されたということになる。そういう経過を踏まえて、本書では渋沢栄一と杉浦譲を並べて著者として挙げているのだ。 更に、このパリでの万国博覧会の件で、渋沢栄一は後年に活躍して有名になったこととも相俟って、最も知られた随行員かもしれない。徳川昭武が旅立って以降の道中で常に近くに在り、帰国を決める迄の行動を共にし、更に帰国の道中も共に動いた。乗船した船が着いた横浜港で、水戸徳川家の屋敷へ向かうことになった徳川昭武が出迎えの人々と港から離れる様を見送り、横浜港で後始末の事務をしたという渋沢栄一なのである。最も長く共に在って、何でも一緒にやったとして徳川昭武にも慕われていたようだ。 長い道程を辿り、道中にも様々な文物に触れながら進む様や、辿り着いたフランスでの出来事や、欧州の各地を視察に出掛けての見聞等、生き生きと綴っていることに加え、万国博覧会での日本による展示への反応等を新聞記事の抄訳を引いて紹介している様子に、何か凄く引き込まれる。そして「生き生きと様子が伝わる報告」を綴る幕吏たる杉浦や渋沢の「出来る男達」という様が伺えた。 石造から木造、鉄骨を組んだ硝子張りと様々な建物を方々で見て、下水道や道路を見て、新聞印刷の印刷機や供される情報提供の力を知り、銀行や貨幣の管理や製造を見学し、船から大砲迄の諸々の機械を見て、様々な国々からの来賓が登場する催しに加わっている様子が本書からよく伝わる。 正しく「明治の初め頃の或る時、徳川昭武に随行して欧州を訪ねた方の土産話に耳を傾ける」という調子で読む事が出来る本書だ。そしてこの「土産話」こそが、明治時代以降の様々な動きの原点にもなっているのだ。 なかなかに貴重な内容が、読み易く整えられ、手軽な文庫本として登場している。大変に幸いであると思う。愉しい読書体験が出来た。
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