三人の女(下) 二〇世紀の春 ajuma books

チョ・ソニ(著者), 梁澄子(訳者)

• 販売会社／発売会社: アジュマ
• 発売年月日: 2023/08/15
• JAN: 9784910276120

商品レビュー

2024/08/23

実在した三人の女性たちの人生を激動の歴史の流れの中で描く。植民地朝鮮の「新女性」である許貞淑（허정숙）、朱世竹（주세죽）、高明子（고명자）は、ほぼ同世代でそれぞれ弁護士の娘、没落した両班の娘、大地主の娘である。それぞれが時代の流れで朝鮮独立運動に関係し、刑務所に収監されたり、ソビエトに留学し流刑になったり、中国共産党の長征についていったりした。1939年、高明子は一度転向をしているので総督府の命令を拒否することができず、「東洋之光」という親日雑誌の仕事をすることになった…。1942年、許貞淑は中国の太行山麓で朝鮮義勇隊員と農業用水の普及闘争をしていた。延安から来た人たちと一緒に日本軍から逃げたり追いかけたりしていた。延安から持ってきた短波ラジオを聞くと「アメリカの声」が日本軍がミッドウェイ海戦とソロモン諸島で敗退していると言っていた…。1945年、朱世竹はカザフスタンのグズロルダで日本の敗戦を知った。昨年モスクワで娘のビビアンナに会ったが、娘からは冷たい態度をとられた。ビビアンナは民族舞踊のダンサーで有名なようだった。それで自分が流刑囚だとは言えなかったのだ…。三人のその後は様々で、高明子はソウルで貧困のうち亡くなり、朱世竹は娘に会いに来たモスクワで病死し、ひとり朝鮮で厳しい政治闘争を生き延びた許貞淑は90歳を超えるまで長命だった。韓国・朝鮮の近現代史を読むような小説であった。