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夏至遺文 トレドの葵 河出文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 河出書房新社 |
発売年月日 | 2023/06/06 |
JAN | 9784309419701 |
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夏至遺文 トレドの葵
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商品レビュー
4.5
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※このレビューにはネタバレを含みます
皆川博子の推薦文を信じて、よかつた。 「拾貳神將變」に對して岸夲佐知子が「これはまう、文字でできた麻藥」とコメントしてゐたが、ちよつと難しくてそこまでのめりこめなかつた。 が、夲作は瞬篇だけあつて、文意が讀み取れなゐことはなく、而も壹篇壹篇に凝縮された情報、寓意、念、が強烈で、それこそ「讀む麻藥」だと感じた。 「拾貳神將變」が讀み解きを必要とする曼荼羅的布地だとすれば、夲作は砂金。 數ページでここまで陶醉させてくれるとは。 割合としては、「夏至遺文」が參分の壹、「トレドの葵」が參分の貳。 かなり前に中井英夫の短編を耽讀したが、そのときに似た愉樂を覺ゑた。 とゐふのは單にソドミヰの性向で聯想したゞけではなく、裏切りと祕密と背徳の快樂(けらく)、典雅と瀟洒の混交、文體の魔術で眩暈が生じるが、實は皮肉たつぷりの俗つぽゐ題材なので、實にシニカルな讀後感。 「とらんぷ譚」と同じく竝びに趣向が凝らされ、言葉で文を綴り夲を編む愉しみに滿ちてゐる。 而も塚夲の場合は古語が自在に凝らされて、雅俗自在とは此こと。 題字を列擧するだけで初めて知る言葉多數。 @ 塚本邦雄は短篇小説を「瞬篇小説」と名付けるほど愛し、多くの作品を遺した。その中でも特に名高い瞬篇小説集『夏至遺文』、「虹彩和音」「空蝉昇天」を含む『トレドの葵』の二冊を収録する。 ときに辛辣、ときに哀切、ときに冷徹、 そうしてつねに美しい、 砂金のような物語。 ――皆川博子 さらば。さらば、みじかき夏の光よ――。同じ夢を見続けた二人の男、ハムレット外伝、猫嫌いの男と空色の猫、石榴聖母の下に集う七人の虚々実々、少年の日の花鎮めの一夜、主と美しい奴僕達が迎えた最期。眷恋と別離が交錯する白昼夢へ。言葉の魔術師の神髄、目眩く傑作瞬篇集。 @ ■■『夏至遺文』 ■禽 ■受難 ■蠍の巣 ■異牀同夢 ■葡萄鎮魂歌 ■夏至遺文 ■霞の館 ■絵空(書肆季節社版)(湯川書房版) ■妹 ■放生 ■二の舞 ■如月の鞭 ■鷹の羽違ひ ■月落ちて ■僧帽筋 ■賓客 ■蕗 ■■『トレドの葵』 ■風鳥座 ■聴け、雲雀を ■トレドの葵(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)(Ⅳ)(Ⅴ) ■鳥兜鎮魂歌 ■七星天道虫【しづかに胡桃】【夢のマラスカ】【花散れど雉隠】【薔薇色葡萄月】【アミこそは妹】【グラナダ喀血】【花月胡蝶文様】【暮れて夕星虫】 ■無弦琴【火砲】【琵琶】【聖娼婦】 ■凶器開花【三肉叉(さんにくさ)】【双花(そうくわ)】【伐氂戡(バリカン)】【麪包刀(めんぱうたう)】【萌蘖(はうげつ)】【双榻(さうたふ)】【蒼凕(さうめい)】【朝貌(あさがほ)】 ■虹彩和音【純白】【淡青】【紺碧】【紫紺】【二藍(ふたあゐ)】【猩紅(しやうこう)】【深朱】【黄丹(わうだん)】【雄黄(ゆうわう)】【浅緑】【濃翠(こみどり)】【漆黒】 ■石榴【草 Mai】【水 Juin】【星 Juillet】【月 Aout】【雨 Septembre】【霧 Octobre】【霜 Novembre】 ■空蟬昇天【初鶯】【班雪(はだれ)】【花篝】【朝凪】【照射(ともし)】【八朔】【蘆火(あしび)】【竈馬(いとど)】【冬霞】【千鳥】 ■月光変 「魔笛」に寄せて ◇我が師 塚本邦雄 皆川博子 ◇解説 瞬篇小説という言葉の爆弾 島内景二
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1974年刊の瞬篇小説集『夏至遺文』と、1986年刊の短篇+連作瞬篇小説集『トレドの葵』の合本。 この世の既婚男性は全員男と不倫するのか?!とツッコまざるを得なかった『紺青のわかれ』に比べると、本書では明確に同性愛を扱った作品は少なめ。ただ、キリストとユダを江戸町人に置き換え...
1974年刊の瞬篇小説集『夏至遺文』と、1986年刊の短篇+連作瞬篇小説集『トレドの葵』の合本。 この世の既婚男性は全員男と不倫するのか?!とツッコまざるを得なかった『紺青のわかれ』に比べると、本書では明確に同性愛を扱った作品は少なめ。ただ、キリストとユダを江戸町人に置き換えて太宰の向こうを張った「受難」や、同じ夢を見続けた男たちが後追い心中する「異牀同夢」など、最初から塚本節フルスロットルである。 『夏至遺文』では、女嫌いというか強烈な女性蔑視を主題にした「葡萄鎮魂歌」が一番面白かった。女性名詞で表されるものを避けまくり、ステーキ肉が牡牛か牝牛かで悩む主人公が最高にバカなのだが、葡萄狂いになる理由とオチがさらにアホで笑える。塚本さんの”男の秘密”の尊さをぶち上げると同時にアホさ、小ささをもユーモラスに描いてちょっぴり切なくさせる小説が好き。 『トレドの葵』収録作は、『夏至』の十数年後に書かれただけあってより円熟した深みのある作風になっている。ミステリ色が強くコミカルなオチがつく作品が多い『夏至』も好きだが、読後に甘苦い余韻を残す『トレド』の作品たちも好きだ。「七星天道虫」以降の作品は瞬篇の連作になっていて、それぞれに短歌や俳句が添えられているのが、塚本邦雄の小説を読むことの贅沢さを思いっきり堪能させてくれる。視点人物を変えながら嘘と策略に塗れた一家の顛末を語る「柘榴」が特に好み。下世話でドロドロな愛憎劇を描きながらも、教会に全員が集合して弥撒を捧げるラストが美しく、格好良い。 物語の嗜好は全く違うけれど、細部までこだわりつくされた銅板のような〈画〉の強さと、そこに流れる空気の質感や音楽まで支配する筆力は、山尾悠子を読むときと近い快感を与えてくれる。巻末には皆川先生の寄稿。塚本オマージュのような文体で書かれているのがなんだかうれしい。島内景二の解説では、『夏至』刊行時に活版の種字を塚本好みに作り替えたエピソードを紹介していてアツい。
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