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鏖戦/凍月
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 早川書房 |
発売年月日 | 2023/04/25 |
JAN | 9784152102263 |
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鏖戦/凍月
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商品レビュー
3.7
8件のお客様レビュー
「鏖戦」 人類の見た目は私たちが知るものと大きく異なっている。社会制度も倫理観も同様だ。遠い遠い未来で起きた――起き続けているこの戦争はどこまでも壮大で果てしなく、終わりが見えない。 人類と相対するは異星種族「セネクシ」。単体生物ではあるものの、蔵識嚢(ぞうしきのう)という記憶の...
「鏖戦」 人類の見た目は私たちが知るものと大きく異なっている。社会制度も倫理観も同様だ。遠い遠い未来で起きた――起き続けているこの戦争はどこまでも壮大で果てしなく、終わりが見えない。 人類と相対するは異星種族「セネクシ」。単体生物ではあるものの、蔵識嚢(ぞうしきのう)という記憶の貯蔵庫が器官として備わっており、さらにその蔵識嚢ごとに5つの識胞が隷属していて、器官ごと個体差があり戦いにおいても何らかの役割を担っている。セネクシ側の語り手は識胞のうちの一個体であり、中枢からの命令に沿って行動しているのだが、人類の研究者であるためか思考が人類に寄りつつあり、やや特殊な個体という位置づけ。 対して人類側についてはプルーフラックスという兵士を主な視点人物として据え置き、戦闘員の一人である彼女が誰と出会い、その過程でどのような心境の変化を経験し、やがて戦争に赴くのかが描かれていく。 いわば両陣営の末端兵士から見た戦争についてのノヴェラなわけだが、主となる視点人物が両者とも相手側を”理解しよう”としているところに科学的なマインドをひしひしと感じる。 何万年という単位で続く恒久的な戦争状態。クローン技術を用いて使い捨てにされる個。上位者による歴史認識の改変と文化の喪失。超遠未来で行われる戦争は、規模も戦闘方法も戦闘員の姿も火力もすべてが大きく異なっており度肝を抜かれるが、実のところ込められたテーマは、いま、このときも、起こり続けている「戦争」と「政治」に他ならない。 しかし何よりも酒井昭伸による漢字とカタカナを駆使した遠未来のビジョン。そこにこそ本書のすごみがある。この圧倒的な迫力。読み手の想像力を押し広げていくような超絶文体。文字を視覚的な官能として頭の中に叩き込むイメージ喚起力。すごい。すさまじい。脳内に目も眩むほどの美しい「絵」が出来上がるようだ。ピカソの「ゲルニカ」? ポロックの「No. 5」? 藤田嗣治の「黙示録」? いやダメだ。このイメージは小説という文字媒体だからこそ可能な無限の爆発。物体としての何かに置き換えることなど出来はしない。ただただ、宇宙で繰り広げられる鏖戦が、瞬く光の数々が、目も眩みそうなほど綺麗で、もはや言葉も無い。 「凍月」も面白くて好きだけど感想は電書版の方にも書いたし割愛。
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グレッグ・ベア氏の作品を読むのは初めてでしたが あまりに重く濃密で凄まじい、恐ろしい中短編集でした 2作とも、もう30年以上も前の作品だとは信じられない 『鏖戦』は遠い未来の宇宙戦争の話 時折現れる古文調の文体が超絶格好いいし、当て字の漢字による固有名詞が頻発するのにもわくわく...
グレッグ・ベア氏の作品を読むのは初めてでしたが あまりに重く濃密で凄まじい、恐ろしい中短編集でした 2作とも、もう30年以上も前の作品だとは信じられない 『鏖戦』は遠い未来の宇宙戦争の話 時折現れる古文調の文体が超絶格好いいし、当て字の漢字による固有名詞が頻発するのにもわくわくする 過酷な戦争の描写があるのに、どこか美しく儚い情景が浮かぶし、とても女性的な印象をうける物語でもあった 難解だけど流麗な文章、語り手や視点が入れ替わる幻惑されるような物語、そして訪れた結末の無常さ… どこか日本の古典文学に通じる印象を感じました それにしてもほんとに、翻訳の文体がめちゃくちゃ格好いいし難解です これを翻訳された酒井昭伸氏の他の訳書もぜひ読んでみたい 『凍月』は『鏖戦』での世界よりは、現代に近いかもしれない、月に移住して数世代が過ぎた、月生まれの住人の政治や陰謀、科学研究の話 高度な科学実験や、人体の冷凍保存技術、新興宗教とそれに絡む政治、などの様々な要素が絡み合い、どんどん展開するストーリーがずっと先が読めず、斬新でめちゃくちゃ面白い 語り手の主人公と、その姉、その夫の関係性が何とも魅力的でしたし、語り手の前に障害として立ちはだかる人物の描写も、あるいは教え諭し利用もするし、でも導いてもやる師匠役の人も、作中に名前と音声しか出てこないけど重要なキーパーソンとなる新興宗教の教祖の逸話も、どれもキャラ立ちが秀逸で面白い 何よりも、周囲の人物と比べどこか印象が薄めであった語り手が、どんどん打ちのめされて変わってゆくさまの鮮やかさが楽しい作品でした こちらの中編の訳者さんは『火星の人』や『プロジェクト・ヘイル・メアリー』も手がけている小野田和子氏、さすがです それにしてもこの2作が、同じ著者さんの手による物だとは恐ろしい でっかい引き出しが無数にあるグレッグ・ベア氏なんですね
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昨年秋(2022年11月)に亡くなったSF作家、グレッグ・ベアの代表中編、『鏖戦(原題:Hardfought)』(ネビュラ賞受賞)と『凍月(原題:Heads)』(星雲賞受賞)を収録した一冊。以前読んだ同著者の『ブラッド・ミュージック』がとても面白かったので、本新訳を手に取ってみる...
昨年秋(2022年11月)に亡くなったSF作家、グレッグ・ベアの代表中編、『鏖戦(原題:Hardfought)』(ネビュラ賞受賞)と『凍月(原題:Heads)』(星雲賞受賞)を収録した一冊。以前読んだ同著者の『ブラッド・ミュージック』がとても面白かったので、本新訳を手に取ってみることに。 『鏖戦』は、「これぞハードSF」と言わんばかりの高難度なファンタジーSF。姿形や社会構造が大きく変容した人類が、異星種族<セネクシ>との果てない戦いを繰り広げる世界が舞台。<セネクシ>を抹殺することだけを目的に育てられた、妖精のような姿をした少女・プルーフラックス。<セネクシ>の研究者で、人類のことを知ろうとする阿頼厨(アライズ)。両者の視点を中心に描かれるSFファンタジー。 設定や用語がかなり特殊で、誰の視点・会話なのかを把握するのもなかなかに難しいため、整理しながら読み進めないと訳が分からなくなること請け合い。その難解なテキストに酔いしれることが出来れば、内容をしっかりと理解出来なくても楽しめることが出来ると思うが、そうでない人には苦痛で仕方がないかと。間違いなく人を選ぶ作品。 『凍月』は、『鏖戦』とは対称的で、比較的読み進め易い近未来SF。人類が地球から月や火星に植民した世界が舞台で、地球から冷凍保存された人間の頭部410個を月に持ち込み、その記憶を甦らせるプロジェクトを巡る物語。 絶対零度を実現するという研究内容や、ラストの展開をちゃんと説明しろと言われると難しいが、物語の展開と結末を大枠で理解することは、テキストを追っていれば十分可能な内容となっている。 "The Hard SF"な『鏖戦』も嫌いではないが、個人的には読み易さのバランスが取れた『凍月』の方が好みだったかな。
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