回樹

斜線堂有紀(著者)

• 販売会社／発売会社: 早川書房
• 発売年月日: 2023/03/23
• JAN: 9784152102256

商品レビュー

2024/08/15

短編アンソロジーで引っ張りだこの斜線堂有紀さん。
彼女のエグい作風(←褒め言葉)連打の短編集かと思いきや、「奈辺」が意外にも読後感の良い終わり方だった。
やっぱり個人的に「奈辺」がお気に入りで、読みやすい。

2024/06/09

初読の作家さん。
ふーん、SFにカテゴライズされるのか…
短編か…
と思いながら読み始めましたが、何これめっちゃ面白いじゃん！
登場人物のネーミングがちょっとアレですが、個人的注目作家さんになるかもな予感です

「回樹」　死体を取り込む植物？の話。百合と愛と死
「骨刻」　タトゥーじゃなくて骨に刻む想い
「BTTFT葬送」　映画を観ているようだ！映画の話なんだけど
「不滅」　存在し続ける死体問題
「奈辺」　設定も問題提起も含めて全部面白かった！ジョジョに出てきたミキタカ思い出した
「回祭」　回樹に纏わる別エピソード

2024/05/19

葬送や別れをテーマにしたSF短編集。六篇を収録。

全体的に抒情的な描写は少なくドライな文体で語られる。特に海外を舞台にした「奈辺」は、翻訳小説のような雰囲気があった。

納骨や墓、埋葬についてなど、まさにいま日本で問題になりつつあるテーマ。色々考えさせられるものがある。

帯を見て気づいた。SFだけれど、これらは全て「愛情」をベースにしたお話たちなんだな。奇抜な設定に目を囚われがちだけれど、確かに恋愛小説として読めるものも多い。

【以下、少しネタバレあり】
表題作「回樹」。発想と設定は突飛だけれど、主人公カップルに起こった出来事はどこまでもありふれている。恋人同士、それが異性であれ同性であれ、気持ちがすれ違うことはある。主人公たちの馴れ初めで始まり、主人公の愛がどんなものだったかという独白で終わる。恋愛小説として読めると思う。

「骨刻」。骨刻を新興宗教に発展させていくくだりが好きだった。これまた恋愛絡みで、やっぱりすれ違っちゃうんだよね。真相が明かされるラストはなんだか切なく狂おしい。

「BTT F葬送」。映画の輪廻転生というお話。荒唐無稽に思えるけれど、冷静になってみると理解し難い政策、制度なんて巷に溢れているよね。BTTFって何かと思ったら、映画好きの間ではそういう言い方をするんですか、そうですか。

「不滅」。突然全ての死体が腐敗しなくなった世界。溢れる死体の埋葬先に困った人々が考え出した解決策とは。死者の尊厳について考えてしまう。「自分の死体が使われることになっても別にいい」「でも、自分の子供とかの死体が使われるのはちょっと嫌」、このセリフに尽きると思う。

「奈辺」。舞台はアメリカ。肌が白いとか黒いとかで歪みあっているけれど、そこに緑の肌の宇宙人が来ちゃったらどうする？という展開。瑕疵のないハッピーエンドではなく、どうしても分かり合えない人もいる、という展開がよかった。

「回祭」。再び「回樹」のある世界が描かれる。主人公の行動の動機はなんなのか、終盤にやっと明らかになる。表題作と対を成すお話。

どれもとても印象深く、考えさせられる作品だけれど、特に「奈辺」が好きだなあ。