家族トンネル

辻上みひろ(著者)

• 販売会社／発売会社: 文芸社
• 発売年月日: 2023/01/01
• JAN: 9784286280059

商品レビュー

2023/06/26

感動した。
誰しもが持ってる黒い感情。
自分の家族のようにはなりたくないと思っていたのに、思うようにいかない人生。
それが思いもよらないきっかけで変わっていく。
人を変えることは出来ないけど、自分が変わることで人に影響は与えられる。
当たり前だけど、難しい。
奇跡のようだけど、ただの日常の延長線。
自分も頑張ろうと思える作品だった。

序盤は、登場人物それぞれの視点で物語が進み、
誰がどういう思いで過ごしていて、
なぜか上手く噛み合わないすれ違いが起きていることが、
個々の視点を繋ぎ合わせることで見えてくる。

正直、最初はもう少し登場人物の詳細を描いてとも思ったが、詳しく描かれていないことで、
想像する幅があるのが、後から効いてくる。

徹は忖度が下手で、上司の気に入らない行動をしたのかもしれないとか
正義は親に自分を見てもらえない苛立ちから、親が気に入らないだろう道を進んだけど、
そんな自分が嫌で、本当は優しい気持ちを知っていたんだろうなとか。

私的に1番背景が分からないのが美穂子。掴めないキャラクター。多分美穂子の過去の詳細が出てきてないからかもしれない。何でそこまでステータスを気にする生き方になってしまったのか全く見えてこない。女友達の影響かもしれないけど、
その1人との関わりでそこまで自身の生き方まで囚われるくらいの影響力があるかなと。

家族トンネルという題名も良い。
ただのトンネルだけじゃないことで、家族全員が人生に迷っている感じが出るし、
1人でトンネルに居ないからこそ、手を取り合うことも出来るだろうなという暖かい想像もできる。

この本は、優しさと勇気を思い出し、頑張ろうという気持ちになるような本だと思う。