デジタル時代のアーカイブ系譜学

加藤諭(編者), 宮本隆史(編者), 柳与志夫(監修)

• 販売会社／発売会社: みすず書房
• 発売年月日: 2022/12/05
• JAN: 9784622095552

商品レビュー

2024/10/02

研究者11名による多角的な視野から見たアーカイブのこれまでとこれからについての論考集です。
アーカイブと呼べる資料は博物館、図書館、文書館に溢れるほどありますが、現代のそれは館外へ飛び出してYouTubeなどの動画配信サイトにおいて法人と個人を問わず大量に投稿と保存が日々行われています。
目下のところ情報に貴賤など無く、学術的であったり文化的な側面を持つ資料として全てのアーカイブに価値がある…とされています。
ただ司書の立場で俯瞰すると、情報量と正確さに差のある資料が日々増え続ける状況を認めると重複するものや質の悪い資料を保存するために資源を使うことへの危惧を覚えます。
過激な結論に至ってしまうのですが…ここまで情報が氾濫してしまう時代には、アナログでもデジタルでもアーカイブとして未来永劫に保存する価値のある資料であるかを吟味＝検閲する必要があると考えさせられました。

2023/03/14

アーカイブの概念は広い。学術的なものからオタク文化的なものまで。そして集めようと意図しなくてもアーカイブが成立する場合もある。デジタル時代のアーカイブの起源を突き詰めるのではなく、「アーカイブ」や「デジタルアーカイブ」がどのように形成されてきたか、あるいは現在、形成されつつあるかを考察する図書。デジタルアーカイブがはじめは、博物館の電子版のイメージから始まり、東日本大震災の経験による災害の記録、MLA連携と時代に応じて広がっていく様がわかる。また９章のコミュニティとアーカイブについては、コミュニティの記憶、想像のされ方に大きな影響を与えることが示される。アーカイブの作り手が意図しない、社会的なメッセージとして機能しうるのは面白いと思う。