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崩壊学 人類が直面している脅威の実態 草思社文庫
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崩壊学 人類が直面している脅威の実態 草思社文庫

パブロ・セルヴィーニュ(著者), ラファエル・スティーヴンス(著者), 鳥取絹子(訳者)

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崩壊学 人類が直面している脅威の実態 草思社文庫

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 草思社
発売年月日 2022/12/05
JAN 9784794226198

崩壊学

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2024/12/06

本書のメッセージは単純明快である。すなわち、私たちの文明社会が近い将来に崩壊する可能性がある。「崩壊」という言葉は色んなイメージを喚起するが、本書で2回以上言及されているCochetの定義では、崩壊とは「人口の大半に法的な枠組みで供給される生活必需品(水、食糧、住居、衣服、エネル...

本書のメッセージは単純明快である。すなわち、私たちの文明社会が近い将来に崩壊する可能性がある。「崩壊」という言葉は色んなイメージを喚起するが、本書で2回以上言及されているCochetの定義では、崩壊とは「人口の大半に法的な枠組みで供給される生活必需品(水、食糧、住居、衣服、エネルギーなど)が、最終的に供給されなくなるプロセス」を言う。要は、私たちの日常生活が立ち行かなくなるということだ。 3部構成をとる本書の第1部は上記のメッセージの根拠を示すことに充てられている。崩壊の兆しは至るところに見える。私たちの社会を支えているのは化石燃料だが、最も重要な石油は生産のピークをすでに過ぎていて、今後は減少に向かう(2章)。石油を他の燃料資源で代替するのは難しい。それだけでなく、「主要な鉱石や金属も、エネルギーと同じ道をたどっている」(p. 51)。「それを超えると、生態系が急激に想定外に崩壊する、目に見えない閾」(p. 89)を「転換点」といい、気候変動や大気汚染、生物多様性の消滅もまもなく転換点を超えそうである。また、生態系だけでなく、経済、社会、文化にも転換点がある。 崩壊の兆しが見えているなら、何か対策を講じる必要がある。しかし、これは言うは易く、行うは難し。望ましい代替手段があっても、「経路依存性」や「ロックイン現象」によって方向転換は極めて困難だ(4章)。また、細部に目を向けて崩壊に対処しようとしても、結局は崩壊を免れないかもしれない。なぜなら、現在の世界はグローバルに接続され、複雑化しているため、世界の遠いところで何か1つが「崩壊」すれば、その影響は世界全体に波及するからである(5章)。相互依存関係が世界を脆弱にしている。金融システムが停止すればサプライチェーンが停止し、それが食糧不足をもたらす。こうした「ドミノ現象」が起こる。 こうした現状を受け入れたとして、では崩壊が起こるのはいつなのか。残念ながら、それを明示することはできない(第2部)。地震や金融危機が起こるとは言えても、それが「いつ」起こるのかはわからない。崩壊への対応の難しさがここにある(6章)。多くの大惨事と同じく、それが起きるまでは誰も信じない。哲学者デュピュイが言うように「現実となったことで普通になる。現実になる前は可能と判断されていなかった」(p. 143)。これも大惨事と同じく、要因を特定するのが難しいため、あとからしか対処できない。直感的には理解できても理論的に示せない(7章)。ただし、崩壊の起きやすさを特定化する研究はすでに行われている。例えば、ある数理モデルによれば、階級差の激しい社会は文明崩壊を免れにくい(8章)。 では、社会が崩壊するとして、それはどのように進むのか? これは「崩壊学」の重要なテーマの1つもある。オルロフによれば崩壊には段階がある。「金融の崩壊→経済の崩壊→政治の崩壊→社会の崩壊→文化の崩壊→生態系の崩壊」と進む。第3部では、崩壊の兆しに関する山ほどの証拠を前にしても、それを信じない、無視する心理的機構についても紹介している(認知的不協和、心理的バリア)。崩壊を止めることはできないが、本書は最後に崩壊を遅らせるために私たちができることを紹介している。・アグロエコロジーなどの代替農業を採用し(p. 94)、石油エネルギーからの大幅な脱却、文明からの切断、脱成長。階級間の経済格差を減らし、人口が危機的レベルを超えないような措置をとる(8章)。 本書の内容は示唆に富んでおり、私たちが当たり前と考えている生活に対する反省を促す内容だ。ただし、程度の差はあれ、これらの内容は部分的には色んなメディアを通じてすでに伝えられているものであり、その意味で新鮮味は乏しいかもしれない。多くの警告が発せられているとしても、心理的バリアに包まれた人には届かないということもあるだろう。 本書の内容には共感する部分が多いが、読後も「崩壊」をリアルに想像できないのは私自身の想像力の欠如のせいだろうか。崩壊に向かうプロセスの「遅さ」が原因のひとつなのかもしれない(似たような記述が本書のどこかにあったはずだが、どこにあるのか忘れてしまった)。 多くの読者に本書を手に取ってほしいと考えているが、本書の読みにくさには少しだけ言及しておきたい。原書のスタイルのせいか翻訳のせいかは不明だが、補足を示す()が多すぎるせいで全体的に読みづらい文体になっている。読んでいて回りくどさも感じた。少し残念な点である。

Posted by ブクログ

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