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我々はどこから来て、今どこにいるのか?(下) 民主主義の野蛮な起源
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商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 文藝春秋 |
| 発売年月日 | 2022/10/25 |
| JAN | 9784163916125 |

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商品レビュー
3.5
11件のお客様レビュー
フロイトの精神分析的に社会を意識、下意識、無意識の重層的構造としてイメージすると今まで見えなかったものが見えてくる。 •意識は政治、経済。この経済こそが決定的な要因を持つものとして分析するのが経済学。経済の発展段階の上部構造に政治があるというのが従来の考え方である。 では、経済は...
フロイトの精神分析的に社会を意識、下意識、無意識の重層的構造としてイメージすると今まで見えなかったものが見えてくる。 •意識は政治、経済。この経済こそが決定的な要因を持つものとして分析するのが経済学。経済の発展段階の上部構造に政治があるというのが従来の考え方である。 では、経済はどのようにして決まってくるのが。なぜ世界の地域により経済に差があるのか。 例えばマルクスは(1) 原始共産制 → (2) 古代奴隷制 → (3) 封建制 → (4) 資本主義 → (5) 社会主義 → (6) 共産主義と生産力の発展に伴って進むと考えたが、西洋視点の偏りという問題点がある。 これを人間で下意識と無意識に目を向けたのが本書である。 •下意識層は教育。識字率、女性の教育率、中等教育から高等教育率の後を追って経済は成長する。 •無意識層は宗教と家族構造。これらが経済構造と政治構造に大きな影響を与えることに気づくことでコペルニクス的転回がある。 家族構造は原始は核家族から始まり、農耕の発展に連れて直系家族、共同体家族と発展する。何万年、何千年単位の大きな変化であり、数百年や数十年の短いスパンで見れば逆行や例外が起きる事はある。 この観点で見れば最も進んだ形が共同体家族であり、その次が直系家族、そして最も原始的な形が核家族であることがわかる。つまり文明発祥の地に近い場所では最新の共同体家族、その周りに直系家族があり、文明から最も離れた周縁部に核家族が残っている。 そして文明中心部では核家族時代に民主主義は経験済みで、今は英米仏といった最も遅れた地域で民主主義社会となっている。民主主義は産業革命の後の資本主義と親和性が高かったため、西洋が現在の世界覇権を握ることになったと言うストーリー。 ちなみに対戦後に社会主義国となったのはすべて共同体家族構造の地域で、権威主義に基づく平等主義が受け入れやすい土壌があったと考えられる。現在のロシア中国はマルクス主義社会主義ではないが、共同体家族構造が受け入れやすい権威主義体制となっている。 EU、ユーロはキリスト教の神に変わる支配体制。権威主義、不平等主義を受け入れる土壌がある直系家族やゾンビカトリシズムの国家が加盟している。 英国はゾンビプロテスタンティズムかつ絶対核家族であることからユーロに加盟しなかった。EU離脱はその現象。 社会主義国家が共同体家族国家にのみ発生したのと同じメカニズム。 EU、ユーロはフランスがドイツを抑え込むために作ったが、フランスの意図に反してドイツとの経済戦争になり、フランスは敗北。 EU、ユーロがもたらしたもの。 ドイツの経済的一人勝ち。 各国に財政規律=緊縮財政を強いることによる経済的低迷→失業率上昇→有能なエリートの若者のドイツへの流入→ドイツ出生率低下の穴埋め。 グローバリズムにより米国では過去にないほど経済格差が広がっているが、EUを単一国家と見た時は同じ現象が起こっている。 ドイツは経済成長のために移民導入を優先目標としており、そのためにEU内の国家さえ犠牲にしている。ウクライナへの介入もその文脈にあり、民主主義を守るなどは単なるお題目にすぎない。 ウクライナ戦争は西洋の敗北である。ロシアはGDPで測れない強さがあり、西洋以外の国はむしろロシアを積極的または消極的に支持している。 表層的な部分に囚われて本質を見誤ってはいけないことを気づかせる本書である。
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人類史を家族構成から読み解き、民主主義の本質に焦点を当てる。 著者によれば、現在先進国に見られる核家族の形態は原始的なものであるという。原始の人類は核家族を単位として生活していたが、それが直系家族、内婚性共同家族、外婚性共同家族などに分岐し、それぞれ独自の政治的経済的様態を生じる...
人類史を家族構成から読み解き、民主主義の本質に焦点を当てる。 著者によれば、現在先進国に見られる核家族の形態は原始的なものであるという。原始の人類は核家族を単位として生活していたが、それが直系家族、内婚性共同家族、外婚性共同家族などに分岐し、それぞれ独自の政治的経済的様態を生じるようになった。核家族の形態を持っている先進国においてはある意味原始の形態に収斂した結果という。 そして核家族の形態の国々(個人の自由という概念が生まれやすい)が民主主義を発展させ、資本主義に基づく豊かな生活を謳歌しているわけだが、著者はこの民主主義に警鐘を鳴らしている。 特に核家族形態を突き詰めた英米などは、資本主義に基づくグローバル化を推し進めた結果、体勢に順応した高学歴エリートとそこからこぼれ落ちたグループの分断が深まり、トランプの登場やイギリスのブレグジットなどを引き起こしたと分析している。 本書を読んでいて、いくつか疑問が浮かぶ。なぜ家族構成が分岐した後、ロシアや中国などの共同体家族は核家族に収斂しないのか?核家族に収斂するのが例外的な事象なのだろうか?今後も家族構成のあり方が多様に展開するのだとするとすると、今後我々は「どこに行くのか」? これらについて、著者は確定的な言辞を避けているようにも思うが、もとより安易な予測はできないだろう。東西冷戦終結の頃フランシス・フクヤマの「歴史の終わり」のように、リベラルな民主主義や自由経済が勝利を収めたような論調の時代感からすると、今日はあまりに混沌としていて先を見通すことができないとあらためて感じる。
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上巻に引き続き、読了。 良い副題である。つまり、民主主義には必ず『生贄』が伴う、という意味である。例えば、アメリカはトランプ大統領の元、メキシコ人恐怖症を発症することで国内(白人と黒人の)統一を試みる。 ただ、いざ民主化に成功しても、民主主義は教育の普及をもたらし、メリトクラ...
上巻に引き続き、読了。 良い副題である。つまり、民主主義には必ず『生贄』が伴う、という意味である。例えば、アメリカはトランプ大統領の元、メキシコ人恐怖症を発症することで国内(白人と黒人の)統一を試みる。 ただ、いざ民主化に成功しても、民主主義は教育の普及をもたらし、メリトクラシーによる客観的な能力主義を産む。『生贄』によって団結したはずの集団が、今度は学歴によって再び引き裂かれ、新たな階級闘争が生じる。何という皮肉か。 本書は、イギリスにおいては上流階級の貴族的かつ謙虚な価値観から、労働者階級をそこまで蔑視しない文化があり、それが上下階級を統合できる可能性があるとして、同国への期待という形で締めくくられている。ただ、日本語版後書きでは、その期待が裏切られたと記しており、ため息。 良くも悪くも英米世界は民主主義の最前線である。今日も、英米諸国(欧州も?)は、ウクライナに油を注ぎ、ロシアを『生贄』にすることで、民主主義を守ろうとしている。野蛮さは中々抜けないのである。本書を読むと、何だかロシアに同情したくなるのは私だけであろうか。
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