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月のような山 あの頃に戻る時間
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 港の人/JRC |
発売年月日 | 2022/08/12 |
JAN | 9784896294095 |
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月のような山
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著者の「櫻井田絵子」さんは、山形県鶴岡市に生まれ、十八歳で上京しましたが、東日本大震災を機に、故郷に戻り、人と人、人と地域がつながる、「コワーキング・キッチン」を営むことになりますが、そうした思いに至った櫻井さんの心の拠り所が、子どもの頃の自分にあった事は、私にとって、とても印象...
著者の「櫻井田絵子」さんは、山形県鶴岡市に生まれ、十八歳で上京しましたが、東日本大震災を機に、故郷に戻り、人と人、人と地域がつながる、「コワーキング・キッチン」を営むことになりますが、そうした思いに至った櫻井さんの心の拠り所が、子どもの頃の自分にあった事は、私にとって、とても印象的でした。 これまでも、子どもの頃の自分と向き合う事で、今の自分の人生に活かすことが出来るのは、様々な本から知りましたが、本書のエッセイの場合は、子どもの頃の、おそらく誰でも体験してきたような、何でもない、ささやかな出来事の中にも、今ならば、たくさんの人達の何気ない中にも芯のある思いや、真剣で温かい創意工夫が詰まっていた事を実感させてくれて、それは、「昭和の働く女性たち」の、お店での支払いが『通い』と呼ばれる通帳に記して、月末まで付けで買うことができた時代の、人と人が、お互いの信頼性によって関わることの出来た、素晴らしさを思い出させてくれます。 また、自然の中に於いて、人と人の関わる思い出の、そのあまりの鮮明さが、大人になっても忘れられず、心に焼き付けられている理由を、作者は、「レイチェル・カーソン」の『センス・オブ・ワンダー』の言葉で表しているのが印象的で、櫻井さんが幼い頃、故郷の象徴のように、彼女の心に存在し続けた、ブナの森の大きなケヤキの木は、大好きな友達と出かけた際の、お気に入りの休憩場所で、そこで話した内容は覚えていないけれど、楽しかったことだけは記憶しており、その記憶のまま、約半世紀後に再会したときは、ごく自然の流れであの木に会いに行ったそうで、それだけの思いを感覚的に抱かせる自然の素晴らしさは、まさに『センス・オブ・ワンダー』ですし、それを介した、人と人の心が繫がる糸の強さには、自然だけがもたらす、大らかで温かい懐の深さがあるからだと、感じさせるとともに、ここにおそらく、震災後に戻りたくなった理由の一つもあると思い、それは、今の自分と大切な友達を形作っている、かけがえのないものを二度と失いたくなかった、とても直向きで強い気持ちなんだと感じました。 実は、いつもの図書館の新刊コーナーで、パラパラ見たときは、その『センス・オブ・ワンダー』の言葉に惹き付けられて借りたので、正直なところ、もっと自然に対する思いを綴ったエッセイ集だと思ってしまい、想定していた内容と少し違っていた残念さもあったのですが、それとは別に、子どもの頃の自分と向き合う意義は、その頃、想像することや慮ることが出来なかった、周りの人達の、子どもに対する様々な思いの深さを知ることでもあったのだと実感できた事が、私にはとても嬉しかったです。
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