サファイア 新装版 ハルキ文庫

湊かなえ(著者)

• 販売会社／発売会社: 角川春樹事務所
• 発売年月日: 2022/08/09
• JAN: 9784758445078

商品レビュー

2024/11/08

「サファイア」と「ガーネット」以外は関連性がなく、色んなお話。
どれもドキッとするような展開がありおもしろいけど、ラストがゆるっと終わるので湊かなえ作品にしては物足りなかった。
一番好きなのは「ムーンストーン」で、あがり症のクミの救いになった友人さゆりのキャラクターが素敵だった。うまく音読できないクミを蔑む教師に堂々と異議を唱える場面はスカッとした。
読書感想文コンクールに向けてクラスメイトも協力的になっていく素敵なエピソードがあるのに本番の描写が省かれていたのが残念だったけど、そこは本筋ではないらしい。
クミとさゆり、どちらが夫を殺したのかはラストにならないとわからない構成。

2024/10/31

あなたに、いつか「恩返し」をしたかった──「二十歳の誕生日プレゼントには、指輪が欲しいな」わたしは恋人に人生初のおねだりをした。
「やっと、自分から欲しいものを言ってくれた」と喜んでくれた彼は、誕生日の前日、待ち合わせ場所に現れなかった……（「サファイア」）。
人間の不思議で切ない出逢いと別れを、己の罪悪と愛と希望を描いた珠玉の物語。
表題作他「真珠」「ルビー」「ダイヤモンド」「猫目石」「ムーンストーン」「ガーネット」全七篇
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短編集なので読みやすいと思います。

2024/09/25

短編集だと気づかずに最後まで読んだ。
伏線の回収を楽しみにしていたけど回収はなかったことに残念な気持ちになった。
イヤミス小説の湊かなえさんと言われる様に、嫌な気持ちになる話はあった。
放火して、整形して、結婚して、また放火して、逮捕されて、反省していなくて、救いようのない女性の話。でも彼女も被害者であり、ある意味病気であり、可哀想な人。母からの強すぎる束縛、自由に食べたい物を食べさせてさえ貰えない、好きに匂いさえ奪われる。
だからと言って、人を殺めるのを許されると思う様になるのは病気だろう。
殺したくないのに殺してしまった議員の妻の話。
殺された方が99%悪いのに刑務所に入る事になる話は辛い。幼少期に自分を励ましてくれる、認めてくれる、馬鹿にせず、個性だと受け止めてくれる、頑張れって言ってくれる大人や友達がいる事は大切だ。
馬鹿にしたわけじゃないのに、なぜか馬鹿にされている気分になり、傷つき、あがり症になる。
親も兄弟も先生も、気にするなとか、神経質な子供とか、そんな風に言ってしまう人しかいなければ人の可能性を潰してしまうかもしれないし、自信のない人間になってしまう可能性もある。
正義感、器量のあるクラスメイトのおかげで彼女は思春期も乗り越えた。そして最後に刑務所に弁護士として現れてくれた。
ピアスをさりげなく自然に分けた事に感動し、お土産を人数分買って来なかった人を軽蔑した。
わざとにそうしたとしか思えず、悲しい気持ちになった。

無意識のウチにツナ缶の万引きを繰り返しているというのを読んで、彼氏に「私が万引きしているのを見たらどーする？」と聞いてしまった。全力で止める、棚に戻させると言われた。

結婚詐欺にあった男性の話のすずめの声は、オーディブルで聴くと辛かった。キンキンしていた。
スズメが消えてしまったのはどーしてだったかな。確か、ダイヤモンドを取り返して…羽にはめてあげたのが最後。
不倫しながら、不倫相手の借金を婚約者から騙し取り、その男に貢ぐ。
男性も女性も幸せになれないだろうと思う。
心の闇があるのかもしれないけど、人を騙して、傷つけて、それを勉強代と思って潔く諦めた彼、金持ち。

サファイアとガーネットは凄く好きな話になった。
彼が死んでしまったのは何故だろう。
もう1人の指輪を買った人が突き落としたのかな。
事実はわからなかったしやっぱり謎だけど、それは考えても仕方のない事だ。
最後まで読んで涙が止まらなかった。
夢の中に彼が出てきて、小説を書いて、それを読んだ読者2人からの反響。
田中と死んだ彼から指輪を買った2人。
田中は罪の意識から遠くの山で写真を撮り、彼女に送っているのだろうか。
そこがちょっとわからなかった。2人は好き同士で、田中は罪悪感を持ち、彼女は向上心を持ち。「田中さんと幸せになってくださいね」と死んだ男性の彼女から言って貰えた事で2人は無事に結ばれて欲しい。
自分には見えない物が指輪を通して見えるようになった。

最後のファンレター、夢の中にオーダーメイドのリュックを持っていき、彼が背負い消えて行った。
またリュックの中に新作の小説を入れておけば、彼が読んでくれるだろう。

その部分を思い出しただけで胸が締め付けられる思いになる。

彼から指輪を買った女性が小説と対談を読んで良かった。ファンレターも書いてくれて良かった。
彼女の元に手紙が届いて良かった。
59万円の指輪を買った女性が幸せで良かった。買った事に後悔していなくて。

たった一つの本や物が人生を変えてくれる事がある。
一つの物だけじゃなくて、沢山のものやサービスに支えて貰い生きている。

煩悩が渦巻く世の中で、お仕事をして、生活して、日々過ごして行くのは大変だ。