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モルドヴァ民話
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モルドヴァ民話

グリゴーレ・ボテザートゥ(著者), 雨宮夏雄(訳者), 中島崇文

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モルドヴァ民話

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 明石書店
発売年月日 2022/07/19
JAN 9784750354149

モルドヴァ民話

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2022/10/24

モルドヴァ(Moldova、日本政府が採用している正式名はモルドバ共和国)は南北と東でウクライナに、西でルーマニアに接するヨーロッパの小国である。大きさは日本の九州よりやや小さく、人口は400万人ほど。元々はルーマニアの北東部と併せてモルドヴァ公国を形成していたが、19世紀にロシ...

モルドヴァ(Moldova、日本政府が採用している正式名はモルドバ共和国)は南北と東でウクライナに、西でルーマニアに接するヨーロッパの小国である。大きさは日本の九州よりやや小さく、人口は400万人ほど。元々はルーマニアの北東部と併せてモルドヴァ公国を形成していたが、19世紀にロシアが進出、ロシア化が進むが、20世紀のロシア革命後は大ルーマニアの一部となる。が、1940年にはソ連に併合され、再びロシアの支配下に入る。モルドヴァ共和国として独立したのは1991年のことである。 ただ独立後も順調ではなく、基幹産業が乏しく、経済的にはロシアへの依存度が高いという。東側には自称・独立国の「沿ドニエストル共和国」と称する、親ロシア派が支配する地域があり、なかなか複雑である。 そんな地域の民話集。 全13話。 冬の炉辺で練り上げられたような濃厚なお話。 勇者がいて、目的を遂げに遠くまで旅をする。強い敵と戦い、これらを斃して、財宝や囚われの姫を手に入れる。そして勇者は故郷に帰る。といった展開が多い。 キーとなるのは「3」の数字。3つの難題であったり、3羽の鳥であったり、3人の王子であったり、多くの物語には「3」が関わる。2では少ない、4では多すぎる、お話の収まりとしては3がちょうどよいのだろう。 邪悪なるものは多くが龍。単に強いだけでなく、腹黒い。財宝を抱え込んでいることもある。お話の中には、ヘビと龍が混在しているようなものもあって、イメージとしては龍はヘビの親戚的な感じなのだろうか。ただ、全般にヘビよりは龍の方が邪悪そうである。お姫様が龍に連れ去られて結婚して、という話もあるのだが、龍との結婚生活、どんなものなのだろうか・・・? 「金」(「かね」ではなく「きん」)も重要な要素。豊かさの象徴は金。金の林檎なんていうのも出てくるのだが、林檎は金じゃ食べられないと思うなぁ・・・。 大きく広がる葡萄畑、樽いっぱいのワインなど、葡萄も印象的である。ウクライナやジョージアと併せて、この地域は葡萄の生産に適しており、古くからワインを製造してきた。そんな歴史が顔を覗かせる。 主人公たちの冒険の範囲は幅広い。深い森の中から、天界まで。旅路は長く厳しいが、行ったきりというより帰ってくる話が多い。故郷に勝るものはない、というところか。旅の途中、開けると必ず食べたいものが取り出せるカバンが出てくるお話もあり、なるほど、こんなものがあったら旅も安心である。 どのお話も練れていておもしろい。 第9話「魔法の馬」は、ちょっと男性版シンデレラのようなところもあるお話。3人兄弟の末っ子は、いたずら者で父や兄からは軽く見られている。ある時、トウモロコシ畑を荒らしていた馬を捕まえたが助けてやる。実はこれは不思議な力を持つ馬で、いつか恩返しをすると末っ子に約束する。その頃、国の王様は一番下の姫の婿を探していた。兄二人は立派な馬に乗り、きれいな服で出かけるが、さて末っ子はどうする? 馬の左耳から右耳へと通り抜けると魔法が掛かるという設定が楽しい。 第7話「フェザー王」は、「長靴をはいた猫」のような展開。老父母に先立たれた少年。残されていたのはオス猫「トムキャット」だけ。だが知恵者の猫は、頭を働かせて龍の宮殿を乗っ取り、王の姫を少年と結婚させることに成功する。ここでめでたしめでたし、で終わればよかったのだが、後日談がちょっと苦い。恩を受けたらちゃんと感謝しないとね・・・。 第12話「アリスター」は、単独で英訳本が出ているという。ザ・モルドヴァ民話というところなのだろう。天涯孤独となり、旅に出たアリスター。途中立ち寄った龍の家で働かせてもらうことにするが、実は龍はアリスターを殺して食べるつもりだった。それに気づいたアリスターは、龍の息子を身代りにする。怒り狂う龍を後に、消えないキャンドルを持って逃げ出すアリスターの運命やいかに。このお話でも龍との対決は3回。キャンドルが消えない謎も最後にわかる。 本書の著者(収集・語り)はモルドヴァの著名な民俗学者で2014年に逝去している。訳者は、職業翻訳者ではなく、国際交流基金理事やルーマニア大使を歴任した元外交官で、現在は一般社団法人モルドバジャパン顧問を務められているそうである。

Posted by ブクログ

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