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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 河出書房新社 |
発売年月日 | 2022/05/17 |
JAN | 9784309208527 |
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商品レビュー
4
4件のお客様レビュー
老いた主人公がかつて愛した人の日記に書き込みを入れながら過去を語る。夫のこと家族のこと、そして自死を選んだ娘のこと。 気丈な主人公はどの出来事に対してもきっぱりしているけど、歩んできた人生への深い諦念も伺える。強い人でも持つどうしようない諦念。 自らも同じようにして息子を亡くし...
老いた主人公がかつて愛した人の日記に書き込みを入れながら過去を語る。夫のこと家族のこと、そして自死を選んだ娘のこと。 気丈な主人公はどの出来事に対してもきっぱりしているけど、歩んできた人生への深い諦念も伺える。強い人でも持つどうしようない諦念。 自らも同じようにして息子を亡くしたリーがどんな気持ちでこの小説を書き上げたのだろうと思わずにはいられない 主人公はリーではないけれど、言葉のひとつひとつに彼女の本心がどこかにないのだろうかとつい探ってしまう 彼女が小説を書き続けていること自体が奇跡だとそんなことは思いたくないけど タイトル”Must I go”が家に来たお客を見送る時の”Must you go?”(もう行ってしまうのですか?)の主語を置き換えたものだと読んで、主人公はきっぱりと「もう行かなくては」と言っているけれど、そこにはどこか名残惜しさもあるのだろうなと思うと彼女の深い寂しさにも触れたような気がして少し悲しい
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最新作を常に読んでいる少ない作家の一人、イーユン・リー。前作が自死した長男との対話という衝撃作だったわけだけど、今作もなかなかのヘビーっぷりで圧倒された。人生がふんだんに詰まっているのはいつもどおりで「生きる」意味を考えさせる小説。 これまで著者は自身と同じ中国人もしくは中国系アメリカ人を登場人物として描いてきたが今回はアングロサクソン系のアメリカ人、イギリス人が登場人物になっている。この点からアメリカ文学のクラシカルなムードが漂っていた。構成がまた特殊で人称の使い分けはさることながら本著は主人公の女性が若い頃に関係を持った男性の日記に対して高齢者となった主人公がコメントを入れていくスタイルとなっている。この相手の男性の子どもを主人公は出産し育てるものの、その子どもが自殺してしまったという過去がある。たいていの読者が想像する子どもを自死で先に亡くした母親像を覆し、彼女はひたすらに強気で人生を肯定している。まるで自分の子どもが間違っていたことを証明したいと思わせるくらいに。辛いことがあった場合、いつまでも考えるタイプと吹っ切っていくタイプに分かれると思うけど、主人公は後者になろうとしている前者のような感じで、微妙な揺れ動きを感じるたびに胸が締め付けられた。たとえばこんなライン。 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------- でも人が泣かずにいると不思議なことが起こるの。その涙を堤防で全部押しとどめておけそうにないから、それを監視する警備員みたいになって人生を送ることになるのよ。昼も夜も。ひびが入っていないか、漏れていないか、あふれ出す危険がないか確認しながらね。(中略)でもその堤防を何年も見守っていたら、ある日また水を見たいと心の中で思うの。でも、どの水のことですか、奥さん、なんて堤防に言われるものだから、てっぺんに上がってみるでしょ。すると本当に、どの水のこと?向こう側は砂漠なの。 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------- 「理由のない場所」は実際に著者が長男を自死で亡くしたあとに書かれた作品だけど、本作はその前から執筆されていたらしく自身の小説のテーマで自死を取り扱っている最中に自分の子どもを亡くすだなんて想像もできない…前作を読んだときにはまだ子どもがいなかったので、自分自身が子どもの視点しか持っていなかった。しかし今回は子どもが誕生し、親の立場となって読むことにもなったために全然違う辛さがあった。人生の終盤に死者へ思いを巡らす中に自分の娘がいること。そして彼女の決断に何があったか分からない謎に絡みとられていく辛さ。自死は本人が一番辛いのは当然かもしれないが、残された側の人生の過ごし方がまるっきり変わってしまうことを痛感させられる作品だった。
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「理由のない場所」は好きだったけど、これは刺さらなかった。主人公のリリアがかつて愛人だったローランドの日記を読み、突っ込みや思ったことを書き入れて孫に遺すという内容。その孫とはローランドとリリアの子供(この子は自殺している)の娘である。 リリアがいわゆる冷笑系みたいな感じで全く好きになれなかったのと、ローランドの日記に頻出するシデルとの会話がなんか人同士の会話というより一人の人形遊びのように生気なく感じてしまった。「自己不信はトリュフみたいなものだよ」みたいなすごく観念的な会話が延々続くので…。たぶんローランドは嘘つきで話を装飾しているというのがこの部分にもかかっているのだろうけど、だとしても面白くはならない。 そういうところは「理由のない場所」にもあったけど、あれは息子を亡くした母が必死に行っている脳内会話だという前提があって成立していたんだなと思った。
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