Mr.マロウブルー(3) あすかCDX

サマミヤアカザ(著者)

• 販売会社／発売会社: KADOKAWA
• 発売年月日: 2022/05/24
• JAN: 9784041125106

商品レビュー

2024/09/07

雨の日の海の、どんより灰色になって
空と海も雨音と波音も区別がつかなくなって
落ち着くようなあの美しさの描写がとても綺麗。
雨で烟る向こうに見える夕焼けの美しさも素晴らしい。
筆者は港町で暮らした事がある方なのだろうか。

蒼井くんが可愛いものが好きだと正直に言えて良かったし、
そう言葉にする事でカフェにも行けた訳で
願い事を口に出すのも大切だなと思う。

水無月くんはバレたく無い理由が
蒼井くんを慮ってのところなのが優しい人だが、
それなら打ち明けて見ても良いのではとも思った。
打ち明けてもらえるような人間になれたら、
と思っている蒼井くんも本当に優しい人だ。

蒼井くんが姿は可愛い女の子なのに
仕草がちゃんと男の子なのが描写が丁寧。

誰かのことを嫌いになれと条件をつけられて、
引くのではなく仲良くしたいからと従い
嫌うだけでなくわざわざ嫌がらせをするユメの取り巻きの子達がよく分からない。

水無月くんの周りの子達も酷い。
きっかけは高橋くんでこの人は本当に駄目な人なのだが
彼からどこまで詳細に話を聞いたか知らないが
それで水無月くんを利用しようとするのが信じられない。
否定しなかった水無月くんも悪かったが、
教師達もおかしいと思った時に水無月くん本人を疑うだけなのが残念。
ボヤの時に疑えたなら、何故他の事も疑ってくれず信用出来ないと切り捨ててしまうのか。

金平糖を持ち歩いていたのはお母さんが初めにくれたお守りだったからなのか。
お茶の話もこんな状況でのことだったとは。
お父さんも怒鳴ってきた時はどうしようかと思ったが
お母さんは話を聞いてくれて顔も認識出来て良かった。
これが無ければお父さんとの関係もこの時点で切れていただろう。
何故全寮制の学校を選んだのかと思っていたが
光を無くしたと思ったなら家から離れる選択肢も確かにある。

桜を呼び出して謝ろう、弁償もしようという発想が
それなりにお金持ちのよいところの子達なのかなという印象。
応えられないと聞いて逆ギレすることもなく少し安心した。
水無月くんが自分の事を少し話しながら
楽しい事で塗り潰す話をしてくれたのが良かった。
ユメが桜に気づいたように、もし蒼井くんが元の体に戻っても彼の顔は認識できるのではなかろうか。

今は1人じゃないと言ってもらって
咄嗟に顔を上げた時の水族館の描写がとても美しい。
察して急かさない水無月くんが本当に優しい。
ユメと桜は互いが女性であることで肯定できなかったのだろうか。
桜は自分が男だったらと願って、
ユメが好きかもしれない『男』である水無月と入れ替わりたくてぶつかったのか。
しかし何故水無月くんがスイッチになるのだろう。

蒼井くんも戻らなくて良いと思っているのが
少し意外なような気もしつつ
本心を水無月くんに打ち明けてほしいし、
可能なら桜も交えて話し合える時間があれば良いのにと思う。