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蓬莱島余談 台湾・客船紀行集 中公文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 中央公論新社 |
発売年月日 | 2022/01/20 |
JAN | 9784122071650 |
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蓬莱島余談
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商品レビュー
3.5
9件のお客様レビュー
『阿呆列車』の百閒先生が、日本郵船の嘱託職員としての乗船三昧の日々を綴ったエッセイ集。 乗車体験を綴らせたら当代随一だったが、その力は乗船体験においても劣ることなく発揮されている。 文人として畏まったところが一切なく、あくまで一人の人間として、そして失礼ながら決して立派ではなく...
『阿呆列車』の百閒先生が、日本郵船の嘱託職員としての乗船三昧の日々を綴ったエッセイ集。 乗車体験を綴らせたら当代随一だったが、その力は乗船体験においても劣ることなく発揮されている。 文人として畏まったところが一切なく、あくまで一人の人間として、そして失礼ながら決して立派ではなくどちらかというとスノッブ的な生き方をしている人間が感じることを一切装飾なく等身大に語る。 今でも作者の等身大の目線で綴られるエッセイやら漫画はごまんとある。 それでも、 ・大した下調べも裏取りもせずに、自分にあてはめて適当に推測する虚脱感 ・虚脱の中でもリアリティを感じさせる場面を切り取るジャーナリズム ・時折はっとさせられるような美しいセンテンス を絶妙に織り交ぜられる作家を、私は内田百閒以外知らない。 本当にどうしようもない人間は、こんなに「どうしようもないなあ」と思わせるような文章は決して書けない。その、作り出されたどうしようもない人間像こそが私たちが愛する内田百閒像であり、それを生み出したかの作家の実力なのであると思うと、私はため息しか出ない。頭良すぎ。
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内田百閒が日本郵船の顧問だった時に横浜、神戸、下関等を船で行き来した際の随筆を編集したもの。前半は台湾の製糖会社重役の知人を訪ねて9日間訪台した紀行文。当時の日本人の台湾に対する見方が素直に読み取れる。後半では郵船が誇る豪華客船の一等船室やレストランの様子もよくわかる。旅客機が一般化する前、客船黄金期の旅に同行しちるかのような不思議な感覚を得た。「郵船秩父丸」という随筆が特に洒脱で笑った。船旅は良いなと思った。
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台湾は良かった、もう一度行きたくて夢に見るとまで書いている。 途中で持病が出て苦しかったはずだが・・・招待してくれた、お砂糖会社の重役さんへの気遣いか。 船で台湾の基隆(キールン)に着き、そこから鉄道で、明治精糖のある蕃仔田(ばんしでん)駅に着くのだが、特に用事もないのに、終点...
台湾は良かった、もう一度行きたくて夢に見るとまで書いている。 途中で持病が出て苦しかったはずだが・・・招待してくれた、お砂糖会社の重役さんへの気遣いか。 船で台湾の基隆(キールン)に着き、そこから鉄道で、明治精糖のある蕃仔田(ばんしでん)駅に着くのだが、特に用事もないのに、終点まで乗ってみて、海を見て折り返してくる鉄オタ百閒先生である。 日本郵船の嘱託を務めていた関係か、何度も船旅をしている。 横浜、神戸間が多い。 豪華客船の旅である。 食事代は船賃の中に含まれているので、ご馳走を食べ放題なのだが、麦酒をお腹に入れたい百閒先生は、そのためにお腹を空けておく。(アルコールは有料らしい) 船旅の紀行文は、昭和41年頃の発表のものが多い。 日本が一番調子に乗っていた頃だ。良い意味でも悪い意味でも。 日本人は、最後のいい思いをしていた。 しかし、外食では麦酒は一人1本と制限されたとか、航路が変更になったり閉鎖されたりしたというちょっとした描写に、戦争に転がり落ちていく時代を感じる。 言及されていないが、文筆業の人たちは書く内容に頭を悩ませていたことだろう。 海に関しての発言で、「日本の海は広がった」と言っているのは、ご時世的に一般的な考え方だったのか、心からそう思っていたのかは、はかり難い。 船旅での、ちょっとした「こんなはずじゃなかった」エピソードがいくつかあって、ユーモラス。 船から見る、さまざまな波の観察と考察が興味深かった。 戦後の1963年発表のエッセイでも、同じ41年の船旅に関するものを収録している。 日本の客船の黄金時代だった。 これは、戦後だから書けたエピソードだと思うものもあり、政府がローマ字表記を変更したせいで、秩父丸が鎌倉丸と名前を変えなくてはいけなくなった話が面白かった。
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