東京オリンピック2017 都営霞ヶ丘アパート 改訂版

武田砂鉄(著者), 青山真也(編著)

• 販売会社／発売会社: 左右社
• 発売年月日: 2021/12/25
• JAN: 9784865280609

商品レビュー

2022/08/11

間借り本屋トカクで取り扱っている本の紹介。

東京オリンピックの会場を設営するとの名目で、取り壊された都営霞ヶ丘アパート。
住み処をおわれた方々の単なる郷愁でおわらないのは、おそろしく、わたしたちに関わるリアルだからだ。

今回、ちょうど、2022年上半期だったので、『東京オリンピック　経費報告』で検索してみた。
費用が二倍かかったのは、散々当時のニュースでさわがれていたが、結局、それが適切だったのか、最終報告を経ても一切議論されていないよう。

お金が過剰に使われたことは、批判するつもりはない。予想を外れてしまう（思ったよりかかった）、というのはしょうがないことではあるかもしれない。
突発事象はいくらでも存在する。
でも、一般企業ではプロジェクトがなぜ予算通りにいかなかったのか、可能な限り影響を小さくするにはどうすればよいか、どこか削れるところはないか　を相当突き詰めて、議論している。毎月、あるいは毎週。

今回、それはあったのだろうか？
わたしたちの税金は、公共のために使われたんだろうか？

それがわからないのが、途方もなくくやしい。

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140ページより引用
権力によって 「雑音」 が消された。 逆に自分たちはいくつもの疑惑を放置した。 東京への招致を決める際、シンガポールのペーパーカンパニーへ支払ったとされる2億数千万円の不透明な資金 の詳細は、いまだに明らかになっていない。 「福島原発は完全に制御されている」とスピーチで嘘をついた安倍晋三首相(当時)の責 任も問われていない。招致委員会が作った立候補ファイルには、日本の夏の気候について、 「晴れる日が多く、かつ温暖であるた め、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想 的な気候である」と書かれていた。 なかなかスケールの大きな嘘 だ。 結果、 多くの選手や関係者が熱中症に苦しんだ。 無観客開催 となったが、もしも有観客で行われていれば、さらに多くの熱中 症患者が出たに違いない。 環境問題に向き合うと言いながら、 意された弁当を大量に棄てていた。

現時点で、この五輪開催にどれくらいのお金がかかったのかが明 らかにされていない。 2022年前半に会計報告をする予定になっ ているが、くまなく検証されるとは思えない。なぜなら、これまで も、生じた問題について誰が判断するのかを曖昧にしてきたのだ

2022/02/01

2022年2月読了。
1960年に前の東京オリンピックに向けた国立競技場整備のために建設した都営霞ヶ丘アパートは、2020年開催予定(コロナ感染拡大のため実際は2021年に開催)のオリンピックのため新国立競技場建設のために解体された。
巻末の武田砂鉄さんの抜粋。
「「これほど大きくて、できる前から様々な雑音が多かった建築なのに、こんなにも早く、この一瞬が訪れたのが不思議だった」。彼(隈研吾のこと、引用者注)は、自分が担当することとなった国立競技場建設をめぐる一連の動きを「様々な雑音」と言った。この言葉を、どうしても受け入れられない。体に刺さる。地域の生活をぶっ壊した人たちが、そこにいた生活者からの訴えが含まれる声を「様々な雑音」と呼んだ。許してはいけない。東京オリンピックはあらゆる意味で暴力だった。」
何一つ感動も面白みもない運動会だったどころか、そこにあるコミュニティを破壊した害悪だったという話。多分多くの人はそんなことは知りもしないだろうから、せめてこうして記録を残しておこう。
ちなみに本書は同名タイトルの映画の公式冊子という位置付け。映画の方は上映の機会を逃してまだ観ていない。いつか必ず観よう。