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カリブ海アンティル諸島の民話と伝説
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カリブ海アンティル諸島の民話と伝説

テレーズ・ジョルジェル(著者), 松井裕史(訳者)

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カリブ海アンティル諸島の民話と伝説

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 作品社
発売年月日 2021/11/30
JAN 9784861828768

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2022/10/10

カリブ海はメキシコ湾の南、大西洋に隣接する水域である。キューバやハイチといった比較的大きな島から、トリニダードのような小さい島まで、大小アンティル諸島が浮かぶ。何だか南の楽園のようだけれど、この地域の歴史は実のところ、それほど長閑ではない。 大航海時代、ヨーロッパ人が渡ってきたこ...

カリブ海はメキシコ湾の南、大西洋に隣接する水域である。キューバやハイチといった比較的大きな島から、トリニダードのような小さい島まで、大小アンティル諸島が浮かぶ。何だか南の楽園のようだけれど、この地域の歴史は実のところ、それほど長閑ではない。 大航海時代、ヨーロッパ人が渡ってきたことによって先住民が滅ぼされる。その後、アフリカから黒人奴隷が連れ込まれる。この際、反乱が起こらないように言葉の通じない部族同士が船に乗せられたと言われており、歴史の記憶を共有することはなかった。後に、中国人も渡ってきた。 そうして白人、黒人、ムラート(混血)など、さまざまな出自の人々が混在する社会が形成される。 幾重にも分断され、それらが混じり合った独特のるつぼである。 彼らが使うのはクレオール語、独特の素朴な言語である。 まえがきで述べられるように、本書に収められたお話は、夜に語られていたものである。労働の後、気温の高い晴れた夜、多くの場合、年よりの女中「ダー」が語り始める。ウサギやゾウの話、どこかの末っ子の話、美しい娘の話。 皆はそれを聞きながら、笑い、泣き、拍手喝采する。一緒に合唱することもある。 時にお話に引き込まれて静まり返ってしまうと、「ダー」は聞く。 「みんな寝ているのかい?」 皆は答える。 「いいや、寝てないよ!」 ちゃんと返事をしなければ、お話はおしまいになってしまうのだ。 本書に収められるのは34話。 著者については、著書がこの1冊しかなく、どんな人物だったのかもよく知られていないようだ。だがまえがきを読む限り、この地域にゆかりがあった人物で、自身、「ダー」が語る物語を聞いた思い出があるようである。 キリスト教のマリア様やイエス様と土着信仰のような神様が混在する。 あるものがどうしてこうなったかを語る「なぜなぜ話」のようなものもある。 「大工と鬼六」のように、魔性のものが名前を当てさせる話もある。 ナポレオンの妻となったジョゼフィーヌ(マルティニーク出身)など、実在の人物のお話もある。 娘と魚が恋をする悲恋の物語もある。 シャルル・ペローやグリム兄弟のようなお話があるかと思えば、イスラム文化圏の笑い話のようなお話もある。もちろん、アフリカに起源がありそうなお話もある。 お話は時には大団円を迎えるが、そこで終わりなの?と思うような尻切れとんぼのものもある。 さまざまな文化の断片がつぎはぎされて出来たような変わった風味のお話もある。 総じて、文字で読んでもおもしろいが、やはりこれらは「語り」の物語なのだと思う。 熱帯の夜。ホタルが舞い、コオロギが鳴く中、ほのかにたばこの匂いがする「ダー」に身を寄せ、皆で夢中になって聞く。 時には火の玉が飛ぶのが見えるかもしれない。闇には魔が潜むかもしれない。 その中を朗々と流れるクレオールの物語。 思い浮かべるその情景自体が、1つの物語のようでもある。

Posted by ブクログ

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