一万年生きた子ども 統合失調症の母をもって

ナガノハル(著者)

• 販売会社／発売会社: 現代書館
• 発売年月日: 2021/11/22
• JAN: 9784768459096

商品レビュー

2023/09/21

国立女性教育会館 女性教育情報センターOPACへ→
https://winet2.nwec.go.jp/bunken/opac_link/bibid/BB11516836

2022/11/28

今でこそヤングケアラーという言葉があるが、なかなか表には出てこなかった当事者の声。このような環境で子どもはどう感じ、何を思ったかが伝わってきた。

そして今も抱えながら回復を続ける著者の姿があった。孤独で不安で、恥ずかしくて、苦しかった自分を受け入れながら。
まわりには言えない辛さを抱えていたと思うと心が痛い。しかも家族のことだからなおのことだと思う。

2022/11/22

P170
人間関係の境界線がわからない。
その人になりかわり、その人のやるべきことを勝手に背負って勝手に自滅し、恨む。
あの人画コーヒーを飲みたいと思っているだろうから、お湯を沸かし、コーヒーを淹れて持っていったのに、いらないと言われた。
それで怒る。わざわざコーヒーをいれてあげたのに、いらないなどとは!気分じゃなくても一口くらい飲めばいいじゃないか!

精神疾患のある親をもつ子どもを、ヤングケアラーという社会問題と考えるようにはなってきた。
が精神疾患について、まだまだ差別や偏見の目が強く、当事者の多くが「まわりに言えなかった」「家族の存在が恥だと思っていた」という気持ちがとても強く助けを求めにくい。

妄想の中で生き何度も失踪する母。
連れ戻しに行く8歳の私。
仕事で家にいない父。
学校での生活だけが自分の癒やしの、平和な生活を保てる場所だった。やがて成長した私は、自分自身が精神的不調になる。
「一万年生きた子ども」は、子どもとして生きることができず、大人になってからも悩まされた経験を表している。

中年になり、病気が落ち着いていた母親が、薬を止めてしまい、再発し、病院の床に寝転がって暴れるシーン。困り果てた著者が、精神保健福祉センターに電話をかけると名前を聞かれ「あなたも精神病ですね。そう登録されています」と言われて、そのまま電話を切られる。母親の病状が悪化し、困っている人間が電話をかけて、最後の砦的なセンターに助けを求めているのに、精神病の登録があるか検索をして、精神病だと、「相手にしない」そういう対応。母親と電話口の私は別人格であるにも関わらず。

という記述がある。
今の時代は違うかもしれないが、とても衝撃を受けた。

そもそも口に出してヘルプ要請できない、勇気を出してヘルプしてみたら、こんな目に遭うなんて。
センター側にも、事情はあるだろう。
相手の言い分を聞いていないから。でも、もしかすると、このような電話がひっきりなしに鳴り続けるのかもしれない。

たまたま私の仕事が、電話対応に関する業務が多いため、色々な人に接する。声で、あれっ、と思うこともしばしばある。
でもここに書いてあるセンターで、してはいけないことだろう、と思う。
どうするのがベストか正解はわからない。
けど、このような状況下で困っている人を狭間に落とさず、きちんと見守ってほしいと思う。