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やさしい猫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 中央公論新社 |
発売年月日 | 2021/08/18 |
JAN | 9784120054556 |
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商品レビュー
4.4
178件のお客様レビュー
入国管理局、外国人労働者、アジア人、品川駅周辺の警官、シングルマザー、貧困、難民移民、収容所、東京オリパラ、行政書士、弁護士、クルド、在特、仮放免、尊厳。 考え、憤り、驚き、恥じ、光を感じ、省みる。 外国人労働者。アジア人なのにアジア人を蔑視・危険視している風潮に、嫌気と申し...
入国管理局、外国人労働者、アジア人、品川駅周辺の警官、シングルマザー、貧困、難民移民、収容所、東京オリパラ、行政書士、弁護士、クルド、在特、仮放免、尊厳。 考え、憤り、驚き、恥じ、光を感じ、省みる。 外国人労働者。アジア人なのにアジア人を蔑視・危険視している風潮に、嫌気と申し訳なさと。 保釈金50万が払えず、カードローンに頼らざるを得ない家庭があること。 人権なき収容所。人として見ない対処をする収容所。希望が見えない収容所。 外国人を取り締まり、保護する部局が同じという不条理。 法的に金銭的に仕事で、見てくれる人がいる心強さと未来への光。いない場合の、選択肢の無さ。 小説の体で、ものすごく多くのことに気付き知る。 これからの起点になる本。
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入管管理局がこれ程ひどいところだとは。クマさんの受けた不当な扱いに言葉もない。日本の、外国人に対する考えや決め事は黒船来航当時と何ひとつ変わっていない気がする。尊厳もなく心無い言葉や仕打ちをする、これが日本の実態かと思うと情けない。出頭しに行く人を捕まえる警察官も然り。収容所に窓...
入管管理局がこれ程ひどいところだとは。クマさんの受けた不当な扱いに言葉もない。日本の、外国人に対する考えや決め事は黒船来航当時と何ひとつ変わっていない気がする。尊厳もなく心無い言葉や仕打ちをする、これが日本の実態かと思うと情けない。出頭しに行く人を捕まえる警察官も然り。収容所に窓くらいつけてよ、病気ならきちんと治療してあげてよ、難癖つけて何年も収容しないでよ、人として接してよ、こんな当たり前のことを願わなければならない場所なのか。「きみ」が誰なのか実は最初から何となく気づいていた。でもやっぱり涙が出たよ。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
日本に来たスリランカ人とその日本人の家族が、日本の外国人に対する様々な法律関係の問題に翻弄されながら家族一緒に暮らすために戦うお話。率直に言って大変ヘビィな読書となった。だが同時に多くの日本人に読んで欲しい内容だとも感じた。現実の非常に深刻な問題であり、日本人が今まさに問われることであり、我々が黙認している暴虐について詳らかにする物語であり、かなりショックを受け、最後まで読み切るまで大変であった。、 主人公のクマさんは日本でマヤ・ミユキ親子と出会いトラブルもありつつも家族として絆を深めたが、ほんのちょっとしたボタンの掛け違いでその生活は一転落下してしまう。理不尽な目に合い、尊厳、過去、現在、意思、思い出など色々なものを国という巨大な機関から一方的に奪われることになってしまったのだ。 本編の長い長いパートで描かれる重苦しい裁判の大変さ、尋問の容赦ないやり方、揚げ足取りと相手の反応を操る方法、誘導、わざと怒らせるような喋り口、傷口を抉り長期にわたって苦しめる性格の悪い言葉と言った要素は自分にも割と小規模ながら似たような経験があるだけに一層に恐ろしい。あまり裁判に詳しいわけではないのだが、裁判以前の調書とりにおいて尋問の素人と玄人をタイマンで対決させるシステム、これは本当に公平な裁定になっているのか?とすら思えてしまう。ここまでやっても弁護代が相当にかかり補償もないというのも大変だ。収容所での過酷な生活や命の尊厳の軽視、不当に扱われているだけなのにやたらと金をかけて解決しなくてはいけない理不尽さは本当に重々しい。お金のない人間はこうした制度の罠にハマってどうにもならなくなってしまうだろう。普通に生きていたつもりでもとんでもない落とし穴がある恐怖、抜け出せないし自由と尊厳を制限されてしまう。しかもそれは法律的には正しいことであり文句も言えない。 この外国人を日本にどう受け入れていくかの過程は、法的には正しくても道理は間違っていて、感情的には嫌でも道理的には正しいと行ったことが頻繁に起きる。貢献、正誤、善悪、色々な基準が混じり合い矛盾して絡み合っている問題だ。おまけにただ緩めるだけでは外国の犯罪組織や文化衝突の助長などを招いてしまうために、素早く解決したいのに慎重に動かざるおえない。 そしてこれは我々にも無関係ではない。この問題は我々に、そうしたものに加担していた罪、知らず知らずのうちに積み上げてしまった差別、先祖から受け継いだような生まれついた国そのものが持つ業、全自動的に植え付けることとなる。クマさん達を襲ったものも裁判で襲いくる恐怖も、これらの読んだ時に感じる罪悪感も、そうした自分の意識外から自分にのしかかってきていたものなのだ。 こうした問題はやはり少しずつ改善させるしかないわけだが、我々に何ができるだろうか?改善した際の問題点は?そもそも組織自体に変わる余力がない以上、外部からより上への働きかけ?しかし全てを譲ってしまうのもどうなのか?厳しさがあるのは仕方ないが救済策を用意する必要性があるのでは?今の性格は大きく変えずともやはり責任を分割しておく必要性があるのでは?本作では外国人を受け入れる日本人、受け入れない日本人が登場しておりそのギャップも考えなくては…と次々と疑問や思考が湧いてきて消えない。 だが理性、倫理、感情、さまざまな側面から考えていかなくては悲劇を生みかねない問題ゆえに自分で正しく考えることなどできるのか?となると他の人たちにも考える機会を持ってもらいたい。政治や法律の分野でもう一度考えもらいたいということを伝えるためにも、読み記憶して考えなくてはならないのだ。いつか自分は正しく判断できるのか?虐げた弱者達を受け入れようとした、やさしい猫になることができるのか?だが理不尽な目に遭う人を救うことを考えればこの複雑で大変な問題から目を背けてはいけない。知ってしまった以上悩み、考えていきたいことだ。 ネガティブな部分ばかり書いてしまったが本作にはクマさんとのちに家族となる親子やその友人の、温かく柔らかでかけがえないのない生活のパートも筆力を持って描かれている。それを奪われて紆余曲折あってそれを取り戻そうとする二人と弁護士や仲間達を応援するように読んでいた。だがたとえクマさんは戻っても傷や記憶は残り完全に元には戻らない。それゆえに問題まみれの今を変える必要性があるのだ。またこの作品で巧みだと思ったのは外国人に厳しく当たる入管の人にも協力者やクマさんと仲の良い人を作り、なぜ彼らがここまで頑ななのかも語らせるバランス感覚である。外国にも邪悪な動きはある以上、ただ単に優しくすればいいのではなく、優しさと厳しさを二つの組織に分けて運営していくという形の提案はまさしく的を射ているように感じられた。
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