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アメリカの〈周縁〉をあるく 旅する人類学
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 平凡社 |
発売年月日 | 2021/07/23 |
JAN | 9784582838732 |
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アメリカの〈周縁〉をあるく
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3件のお客様レビュー
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旅行に行けない世界線になって久しい中、旅行欲を満たしてくれるかと思って読んだ。結果、かなり満たされてオモシロかった。アメリカの中でもメジャーではないところ(つまりは周縁)をロードトリップして、その際に感じたことが綴られている。エッセイ的な要素が強いのだけど、著者は文化人類学者で...
旅行に行けない世界線になって久しい中、旅行欲を満たしてくれるかと思って読んだ。結果、かなり満たされてオモシロかった。アメリカの中でもメジャーではないところ(つまりは周縁)をロードトリップして、その際に感じたことが綴られている。エッセイ的な要素が強いのだけど、著者は文化人類学者であり、それぞれの旅がネイティブアメリカンという軸でアメリカを見ており、知らないことが多くて人文書としても興味深かった。 読んでいて一番強く感じたのは、野村訓市がJ-Waveで毎週放送している「Traveling without moving」というラジオ番組との近似性。リスナーから届く旅行にまつわる思い出メールが番組内で読まれるのだけど、バックパッカー談が読まれることが多い。本著もアメリカの周縁で当てもなくふらふらと流れに任せて旅行する、というのはバックパッカーっぽいし、観光地ではない場所で立ち上がる思いが率直に書かれている点が似ていると思う。(ときににじみ出るポエジーも含めて)また街で出会った初対面の人との様々な会話が収録されており、これが旅の醍醐味だよなーとコロナ禍の今だととても贅沢に見える。すぐに会議したがったり、出社を要求する人を「大事なことはface to faceでしか伝わらないよな」と言って揶揄したりするけど、face to faceのオモシロさが存分に詰まっていた。 アメリカは自由と民主主義の国であり、思い通り生きることができるというのは事実なんだけども、それを達成できているのは既に住んでいたネイティブアメリカン(インディアン)を排除した結果であることを改めて認識した。特にドラッグやアルコール、貧困の問題を抱えているリザベーションを訪れた際の何とも言えない、略奪された後の残滓のような虚無感が印象的だった。またトランプが大統領へ立候補した選挙の頃に、いわゆる「真っ赤」なエリアを旅していて、そこでの風景や人物描写、それにまつわる論考もかなり興味深かった。印象的なライン。何か解決したり、断定しているわけではないが、この逡巡こそが今必要な時間な気がる。 「分断」と報じられ受け容れられた現象をそのまま分断として語ることに、どれほどの意味があるのだろうか。そう語ることで得をするのは誰なのだろうか。しかしその逆に、二分化した両極は、結局のところ相互補完的であると哲学者を気取ってみても、なにかうすら寒いものが残るのだった。
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2011年から2018年まで、2014年を除く各年計七回にわたるアメリカ紀行をまとめたもの。共著ふたりのうち文章は文化人類学者の中村氏が担当し、文中にマコトとして登場する写真家の松尾氏が撮影した写真が各章の合間に掲載される。第一章の2012年から第六章の2018年の旅まで時系列順...
2011年から2018年まで、2014年を除く各年計七回にわたるアメリカ紀行をまとめたもの。共著ふたりのうち文章は文化人類学者の中村氏が担当し、文中にマコトとして登場する写真家の松尾氏が撮影した写真が各章の合間に掲載される。第一章の2012年から第六章の2018年の旅まで時系列順に、それぞれ約一週間ずつの旅程で各地をめぐる。エピローグではこの旅の第一回にあたる2011年の旅にさかのぼって終わる。 タイトルに含まれる<周縁>は、アラスカとハワイを含むように一部は地理的なものを指すが、どちらかといえば社会的な意味合いが強い。とくに主な目的のひとつとなっているのは、居留地を中心に各地のアメリカ先住民を訪ねあるくという試みである。親しくなったインディアン(原文ママ)一家との再会も含まれる。 アメリカ先住民への聞き取りが大きなテーマではあるが、著者が「積極的ノープラン」を標榜するように目的を限定しているわけではない。道程の飲食店などで出会う行きずりの一般人の声も多く収め、現代のアメリカを素描する。また、最終の第六章では旅の目的地そのものに先住民ゆかりの場所が含まれていなかったり、設定した目的地に到達しないまま終わるケースもある。 前半は多くの感動的な出会いによって暖かく明るい雰囲気に包まれており、おおむね紀行文として楽しめる。第四章の旅の途中でアメリカ大統領選挙でトランプが勝利したあたりから重い空気感に移り変わり、人文系の研究者としての考察に割く紙数が増える。第六章では、異文化や異教徒に配慮を見せることを忘れないトランプを支持する一般市民との会話や、極右に劣らずたちの悪い極左の人びとの行いから、「リベラル」対「保守」というわかりやすい文法に疑問をもつくだりは印象に残った。多数決でものごとを決定してしまう国家的な「民主主義」と、旧来の誰もが納得するまで話し合って答えにたどり着くような「民主主義」との質的な違いへの着目は、最近読んだ『くらしのアナキズム』にも通じる。 副題に人類学とあるが、著者がいうとおり「狭い意味での専門書ではな」く、風まかせの紀行文としての傾向が強い。そして、出会いや偶然性を引き寄せるために専門家ではない同行者として選ばれたのが写真家のマコトで、気さくな関西弁と人懐っこい言動で作中の空気をなごませる役割も担う。著者が着想を得た著書のひとつとして紹介する小田実の『何でも見てやろう』のような紀行文と比べて物足りなく感じた理由は、単純に旅程がぶつ切りでそれぞれの旅の期間もやや短くせわしかなかったからかもしれない。あと、エピローグに収められた第一回にあたる旅はなぜ短い扱いに終わったのかがわからなかった。
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