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地域金融の経済学 人口減少下の地方活性化と銀行業の役割
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 慶應義塾大学出版会 |
発売年月日 | 2021/07/21 |
JAN | 9784766427578 |
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地域金融の経済学
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著者は法学部課程を修了後に日本銀行小樽支店に勤務経験を持つ政治経済学者。題名や出版元からわかるようにかなり学際的な性格の強い本ではあるが、地域金融に携わる実務家や学生にも気配りした、丁寧な説明に富む内容。仮説を実証的データに照らして検証するというスタンスを貫いており好感が持てた...
著者は法学部課程を修了後に日本銀行小樽支店に勤務経験を持つ政治経済学者。題名や出版元からわかるようにかなり学際的な性格の強い本ではあるが、地域金融に携わる実務家や学生にも気配りした、丁寧な説明に富む内容。仮説を実証的データに照らして検証するというスタンスを貫いており好感が持てた。 著者の現状認識は、現在の地域金融機関の置かれた苦境の原因は金融政策にはなく、生産年齢人口や技術革新の停滞など、実体経済のファンダメンタルズに起因するものだという。自然利子率という直接観察困難な指標を用いることの矛盾は著者も認めるところだが、実際に生産年齢人口の減少に見舞われる地域ほど金融機関の利鞘が縮小することを示す統計データを見ると、現代日本の構造的要因がドライバーであることは疑う余地がないだろう。なお、勃興するフィンテック勢や異業種からの参入は既存金融機関にとって脅威ではある反面、伝統的金融業と棲み分け可能なものでもあることが、金融包摂や大数の法則の概念を用いて示されているが、このフィンテック興隆の背景描写はよくまとまっており、下手なテック礼賛本を読むよりよほどわかりやすい。 第3章の銀行業の本質の経済学的再検討を経て、邦銀の利鞘縮小要因を因数分解する第4章が面白い。一見信用コストの縮小が主な利鞘減少要因とみえるが、融資供給関数の〈競争要因〉と〈需要弾力性〉に着目すると、異次元金融緩和後の地域金融機関が極めて厳しい競争環境に置かれていることが浮き彫りにされている。これまでは金融緩和やビフォーコロナのインバウンド需要勃興により需要曲線が上方に押し戻され、融資額は増加傾向にあったが、今後は地域経済における生産人口減少が融資需要弾力性(金利に対する融資額の感応度)を低下させ、ますます金融機関を〈利回り追求〉や〈リスクシフティング〉、つまり過剰なリスクテイクに追いやるシナリオが提示される。事実、自己資本の脆弱な金融機関ほど海外運用にシフトする傾向が実証的に示されている。 このような現状に照らし、現在も進行する金融機関の統合に関して、本書でもいくつかのあるべき姿が提案されている。例えば地域の2、3番手銀行の統合によるトップ行の規模経済の抑制による競争的な環境の創出などである。このタイプの統合は、コスト抑制による銀行の便益増加に寄与している可能性が、金融機関統合前後の各種指標を比較したデータから示唆されている。しかし本書でも幾度となく触れられるように、金融機関とユーザーの利得を合計した融資市場全体の経済厚生を考慮すると、果たして競争が効率を生むのか否かは容易に結論づけられず(集中安定仮説/競争安定仮説)、やはり更なる実例の蓄積を待たねばならないように思えた。
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