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小さきものたちのオーケストラ
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 早川書房 |
発売年月日 | 2021/07/14 |
JAN | 9784152100351 |
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商品レビュー
3.8
4件のお客様レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
チノンソはとても心優しい人で人の為に動ける人ではあるけど物語が進むにつれて元々の気質である暴力性だったり自己犠牲的だなぁと思った。 物語が不運すぎるのもあってか怒りや悲しみ羞などの心の描写が分かりやすい 人の出来る限界、人に降り掛かる不運についても、鶏は何が起こっても泣いて喚く事しか出来ないと重なって、自分でどうにもならない事ってあるよねと言うのがタイトルからも内容からも感じた。
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読み進めるにつれて、気分が重くなった。 優しさの影も形もない姿になってしまった宿り主。それが、彼女への愛と、負った苦しみの大きさを物語る。 小さきものたちとして生まれたら、仕方のない結末なのだろうか。この後の人生で幸せを感じる出来事があることを願いたい。 一方で、いつも復讐に燃えている宿り主は、手放すことや自分を鑑みることなしには、結局、幸せにはなれないのかもと思った。(例えば彼女と結婚出来ても何かあれば、彼女を恨み始めそう)
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小さきものたちのオーケストラ 著者:チゴズィエ・オビオマ 訳者:粟飯原文子(あいはらあやこ) 発行:2021年7月25日 早川書房 唯物Vs観念 ナイジェリア出身、アフリカ文学の若手作家の第2作。英国の最高賞であるブッカー賞の最終候補作。現在はアメリカのネブラスカ大学で教鞭をとりつつ執筆。 本作はナイジェリア南東部にいるイボ人の話。60年代後半、この地域はビアフラ共和国として分離・独立宣言をしたため、ナイジェリア内戦となり、イギリスやソ連など大国の干渉も受けた。ムスリムではなくキリスト教徒が多く、登場人物たちもキリスト教徒だが、教会へ通いつつも、イボの宇宙観や宗教が行動原理の根底にある。最も偉い神はチュクワ(創造主)で唯一だが、人にはそれぞれ「チ」と呼ばれる守り神がつき、誕生から死亡まで見守り、導く。人は「宿り主」と呼ばれる。「チ」は死なず、「宿り主」が死ぬと別の人間に「チ」として宿る。 この「チ」は常に観念論で「宿り主」に語りかけ、アドバイスを行う。他の人間の「チ」と交渉をしたり、時空を越えて移動して例えば「宿り主」の先祖などと対話したりする。しかし、神とはいえ実質は人間(宿り主)の心の内であり、葛藤する気持ちであり、メタ認知をする視点でもある。現実社会を生きる「宿り主」は、当然のことならが唯物の世界に生きている。主人公は喜怒哀楽の中、唯物志向でセックスをしたり、仕事をしたり、人に復讐をしようとしたりする。それに対して主人公の「チ」は、観念論で彼を止めたり、アドバイスをしたり、諭したりしていく。常に、唯物と観念の闘いで語られていく。小説は、主人公の「チ」の一人称で語る物語だ。 小さな養鶏場を営む主人公は、ある自殺をしようとしている女性を見かけて思いとどまらせる。やがて2人は恋仲になる。主人公は大学に行っていない。父親の具合が悪くなって養鶏場の仕事をしなければならなくなったために諦めたのだ。彼は若い内に両親をなくし、妹はかけおちをし、孤独の身だった。しかも、恋をした相手は首長でお金持ちの娘。大学に行っていない彼との結婚は許されなかった。そこで彼は養鶏場や家を処分し、キプロスへ留学することを決意する。 キプロスはヨーロッパ。ナイジェリアの人たちからすると白人の別世界であり、自由が手に入る夢の世界。しかし、彼は欺されていた。養鶏場や家を売った大金を旧友に預けて留学手続きを頼んだが、そのお金は持ち逃げされた。しかも、旧友に薦められた大学は北キプロスであり、トルコからしか承認されていない。自由の島は南キプロスだということを知る。 旧友に対して激怒を覚える中、彼は冤罪に巻き込まれ20数年の懲役刑となる。刑務所では男性囚人からレイプされ、絶望に追い打ちがかかる。ナイジェリアで待っている婚約者に手紙すら出せない環境だった。しかし、4年後、冤罪がわかって再審となり、ナイジェリアに帰国できた。しかし、学位も取れず、養鶏場もない。そして、婚約者も行方知れずとなった。欺した旧友に対する激怒と復讐心、冤罪で囚われとなった経験、そして警察や刑務所で受けた陵辱・・・PTSDと闘いながら生きていかなければいけない。 旧友は、主人公を癒やしてくださいと神に祈る。しかし、主人公はこう思う。 苦悩の核心にあるのは、失ったものを取り戻したいという願望なのだ。自分が求めているのは、ジャミケ(旧友)が言うような癒しや許しではない。そんなことより人生を取り戻したい。 観念論的な話しではなく、唯物論的な物理的な時間であり損失なのである。しかし、人生を取り戻すことなどできっこない。結局、その埋め合わせは観念論的な癒ししかないのか・・・ ナイジェリアの文学作品を読んだのはおそらく初めて。友人が書評を書いていたので興味を持って読んだ。イボのことなどを知ったし、物語としても退屈することはなかったが、一言でいうと長すぎた。会話がほとんどない地の文で560ページには、無駄と思われる文章も多かった。しかし、訳者後書きを読むと、そうした繰り返しや回りくどさはイボの特徴だとのことだった。読む価値は十分にあった。
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