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身もこがれつつ 小倉山の百人一首
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身もこがれつつ 小倉山の百人一首

周防柳(著者)

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身もこがれつつ 小倉山の百人一首

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 中央公論新社
発売年月日 2021/07/07
JAN 9784120054471

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商品レビュー

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2023/02/28

文歴二年(1235年)藤原定家七十四歳。 十四年前の承久の乱で北条義時に敗れ、隠岐へ遠流になっていた後鳥羽院が許されて還御されるといううわさを聞く。 老いた定家の胸に懐かしさと悔恨、さまざまな思いが去来する。 後鳥羽院と、定家と、藤原家隆の三人はくすしき絆で結ばれていた。 十四...

文歴二年(1235年)藤原定家七十四歳。 十四年前の承久の乱で北条義時に敗れ、隠岐へ遠流になっていた後鳥羽院が許されて還御されるといううわさを聞く。 老いた定家の胸に懐かしさと悔恨、さまざまな思いが去来する。 後鳥羽院と、定家と、藤原家隆の三人はくすしき絆で結ばれていた。 十四年前のあの時、家を守るため、歌道のために、院と無関係であることを貫いた定家。 守るべき家も後ろ盾も無いからと、院に寄り添うことを選んだ家隆。 家隆は夢見る人であり、定家はいくぶん現実的だった。 後世まで歌道に残した定家の功績を思えば、花より団子を取った・・・と責めることはできまい。 しかし、鎌倉に頭が上がらず、勅撰集にも厳しい修正が加えられる現実。 不本意に沈む定家に、宇都宮蓮生から、新築中の山荘の障子を飾る和歌を選んでくれないか、誰にも気兼ねせずお好きなものを、と依頼があった。 定家は、ならばそこには院の歌も入れよう、そこに還御なった院をお招きして歌の会を催そう。本当の気持ちを示すことができると喜ぶのだったが・・・ 過ぎし日々が追想される。 院と家隆と定家、恋の三つ巴・・・定家と家隆の切れることのない絆と、院の妨害。 院と鎌倉と摂関家、権力の三つ巴・・・ 承久の乱へと至る後鳥羽院の絶望感がリアルである。 かつて白河院は、自分の思い通りにならないものは「賀茂川の水、双六の賽、山法師」と言ったと聞くが、後鳥羽院にとっては、思いどおりにならないことだらけだったのではないだろうか。 院政の時代の終焉、沈みかけた船からは人が去り、院は孤独に隠岐へと船出する。 北条の姉弟、政子と義時はつぶさに描かれないことでかえって、顔の見えない魑魅魍魎のような存在感を出している。 実朝はここでも哀しく、儚い(みんな、実朝大好きだなあ) 「鎌倉殿と13人」の頃に京で繰り広げられていたのは、花びらと金箔が風に舞っているような、幽玄の世界だったが、それも武者の世に飲み込まれていく。 百人一首の成立について、その選出の意図は何を意味するのか、ということはこれまでも諸説挙げられてきたけれど、この物語もその答えのひとつだろう。 『一の章 還御の噂』 『二の章 いとしの友よ』 『三の章 菊花の王』 『四の章 はかなき鎌倉将軍』 『五の章 勅勘と大乱』 『六の章 嵯峨山荘の障子和歌』

Posted by ブクログ

2022/02/20
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

雅な百人一首作成の裏側で、こんなにも政治的策略が蠢いていたとは。 時代は平安末期の、貴族社会から武家社会へと大きく変わる激動の頃。 平家が滅び源氏が台頭、鎌倉に幕府が置かれ平安京の影も徐々に薄まりつつある。時の権力者が目まぐるしく変わり、政の中心も京から鎌倉へ移ったことで治安も乱れ放題。 このような国の混乱期に、今昔の歌人のうちから百名の秀歌を選びましょう、なんて呑気なことをやっていたことに驚いた。 朝廷VS鎌倉幕府(西東の天下分け目の戦いってこの頃からあったのね…)、北条政子・義時姉弟の高圧的な武力行使、からの後鳥羽上皇隠岐への島流し、と歴史的に見ても面白かった。後鳥羽上皇目線で見るとこの姉弟の所業はまさに鬼のようでびっくり。 藤原定家が何度も唱えていた「古歌に学べ」のように、今までさらっとしか見ていなかった古の歌も意味深く思えて面白い。百人一首を改めて詠みたくなる物語だった。

Posted by ブクログ

2022/01/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

定家の人物造形が独特。冴えない風貌で、スマートな遊びも人付き合いもバツ。理屈っぽくて籠りやすく、でも人並みの出世欲と歌の家を背負っている気負いはあって、保身に駆けずり回る。なのに思いがけないタイミングで、真っ直ぐに気持ちを必死に寄り添わせてくる、ピュアな健気さ。イマドキだと「ギャップ萌え」って言うの?こりゃやられるわ~ 院は院で、20も年上の男達を両方とも従わせたがる傲慢さと、時折チラつく暗い水底で宝剣を守る兄幼帝のイメージに翻弄されるアンバランスが堪らんわ。 ただ、家隆は内村幹子『海は哀し』よりだいぶ美化されてて、うーん。 げに恐ろしきは作家の想像力。 ま、この流れじゃ式子内親王への淡い恋心は放置するしかないわね。 「あはれ嘆きの煙比べに」は圧巻。 木っ端な若者に懸想される皇女に我が身をなぞらえ、こともあろうに帝寵を疎ましがるなんて…グッと来ちゃうじゃあないのよ! そう、強く想う方が負けってのが、恋愛の鉄則だったっけな。

Posted by ブクログ