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愛についてのデッサン 野呂邦暢作品集 ちくま文庫
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愛についてのデッサン 野呂邦暢作品集 ちくま文庫

野呂邦暢(著者), 岡崎武志(編者)

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愛についてのデッサン 野呂邦暢作品集 ちくま文庫

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 筑摩書房
発売年月日 2021/06/14
JAN 9784480437495

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愛についてのデッサン

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商品レビュー

3.7

20件のお客様レビュー

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2024/10/23
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※このレビューにはネタバレを含みます

〈文庫になることが奇跡の1冊〉という帯文は「なかなかにどうかな」と思うが。 現役当時はバリバリ文庫化していたわけだし、今も他に文庫あるし。 でも確かに岡崎武志さんが推薦してくれることで強調される、一群の作家から得られる滋味がある。ありがたい。 その路線の作品を定期的に文庫化してくれる、ちくま文庫編集部のその人。ありがたい。 以前「日本文学100年の名作 第6巻 1964-1973 ベトナム姐ちゃん」(新潮文庫)に収められた「鳥たちの河口」には、S評価をつけて、〈凄まじい。いや、これはすごい小説だよ。描写もすごい。会話もすごい。内面もすごい。〉とたどたどしく書いた。 その凄みは、本書でいえば「世界の終り」「ロバート」「恋人」「隣人」「鳩の首」といった短編に通じる。 個と個の存在的断裂にまざまざと直面したときの強烈な感覚というか。 (特に「世界の終り」は、大江健三郎や池澤夏樹が使いそうなタイトルを持ってきた上、黒澤明が「夢」で映像化してもおかしくないような、凄い作品。) で、かたや本書の表題になっている「佐古啓介の旅」連作は、なんというか「頑張って中間小説ふうにしよう」という意気込みが判ってしまって。 そりゃ広く読まれることはいいのだが。 読者の興味を惹くための「旅」が、若き佐古のルーツ探しにもなるという、連作全体の結構もわかるが。 どーうしてもなかなか昭和当時のオッサンが若者に仮託した抒情という感じが、うっすら辟易したり、その時代感が逆に善かったり。 もちろんいい連作であることは間違いないし、書痴的な記述は、それこそ三上延「ビブリア古書堂の事件手帖」が後に連なることになる系譜なので、楽しく読んだ。 以下、書痴的メモ。( )は架空の作家や作品。 ■燃える薔薇ー佐古啓介の旅(一) (伊集院悟「燃える薔薇」 ※「堕ちる」「別離」引用あり) 宮沢賢治 高村光太郎 三吉達治 百田宗治 丸山薫 田中冬二 萩原朔太郎 三島由紀夫「金閣寺」 ■愛についてのデッサンー佐古啓介の旅(二) J・G・フレイザー「金枝篇」 クラウゼウィッツ「戦争論」 シーザー「ガリア戦記」 丸山豊「愛についてのデッサン」 ※引用4篇あり アントニー・クラーヴェの版画 バートン版「千夜一夜物語」 フランク・ハリス「わが生と愛」 ジェイムズ・パーディー「アルマの甥」 バーナード・マラムッド「フィデルマンの絵」 ※マラマッド ■若い砂漠ー佐古啓介の旅(三) 萩原朔太郎 三吉達治 中原中也 金子光晴 安西均「葉の桜」 ※金葉和歌集、プーシキンの引用。「雨」引用あり 山村暮鳥 田中冬二 西脇順三郎 伊東静雄 田村隆一 草野心平 (佐古啓介の自作詩「花の店」) 網干作郎「中世歌謡の研究」 (鳴海健一郎「仮死」) ■ある風土記ー佐古啓介の旅(四) (綾部直清「出雲風土記註解」限定本) ゴヤの画集 夏目漱石の全集 竹久夢二の絵 アーネスト・ヘミングウェイの小説論、「老人と海」「移動祝祭日」「武器よさらば」「誰がために鐘は鳴る」「陽はまた昇る」 (与謝文子「八雲」 ※「わが風土記」「距離」「偏在」引用あり) オルダス・ハクスレー、京都の評言 ■本盗人ー佐古啓介の旅(五) 「古書通信」 小栗虫太郎「オフェリア殺し」 稲垣足穂「一千一秒物語」 立原道造「萱草に寄す」 丸谷才一「笹まくら」「たった一人の反乱」 安部公房「時の崖」 内田百閒「新方丈記」 谷崎潤一郎「鍵」 ※棟方志功の装丁 与謝野晶子「みだれ髪」 アガサ・クリスティー 「ニンニク健康法」 「愉しいサイクリング」 三吉達治「測量船」 井伏鱒二「夏の狐」 宇野浩二「思ひがけない人」 「私は一千万円をこうして貯めた」 「梅干健康法」 吉岡実「僧侶」 庄野潤三「クロッカスの花」 ■鶴ー佐古啓介の旅(六) (「歌集 友鶴」 ※父佐古啓蔵が所属した玉波会) 「税法大全」 「会社経営の要諦」 「相続税の実際」 「税務必携」 「贈与税の抜け穴」 「大久保県維新記」 「佐倉藩分限帳」 「松尾藩御法度集」 大江健三郎「死者の奢り」「芽むしり仔撃ち」「万延元年のフットボール」 大内兵衛「財政学大綱」 島恭彦「財政学概論」 ハンセン「財政政策と景気循環」 調来助・編「長崎爆心地復元の記録」 (「近代長崎文芸史」)

Posted by ブクログ

2023/12/02

標題の連作短編は好きだった。洗練された文章が現代でも非常に読みやすく、古臭さを感じることなく読めた。 後半の短編は対人関係の薄暗いテーマと爽やかな文体にどこかギャップを感じてしまって、個人的には合わなかった。

Posted by ブクログ

2023/11/08

よかった。解説まで読まないと正直よく分からないけど、解説を読んで、いろいろ知れて納得した感じがする。 そもそもこれが1970年代の作品であり、野呂邦愓が長い年月をかけて評価され続けている芥川賞作家だということも知らなかった。長崎出身で、地元で作品を描き続けたらしい。かっこいい。...

よかった。解説まで読まないと正直よく分からないけど、解説を読んで、いろいろ知れて納得した感じがする。 そもそもこれが1970年代の作品であり、野呂邦愓が長い年月をかけて評価され続けている芥川賞作家だということも知らなかった。長崎出身で、地元で作品を描き続けたらしい。かっこいい。 佐古書店を営む若い男が主人公で、その主人公がいろいろな事情でいろいろな場所を旅する、佐古啓介の旅シリーズが6作。 若い砂漠、と、本盗人、が印象に残ってる。古本に一万円が挟まってるのをちゃんと主人に伝えた本売れっ子作家とか、彼氏?が古本を万引きしててそれをこっそり返しにくる女子大生とか、設定が新鮮でなんだか面白いなって思う。描写とか喋り方とか表現の仕方とか、全体的に昭和の香りがすごくて、主人公が父親のこととかいろいろ解雇しながら、古本のことを考えながら、旅をするのは良かった。 そして5個の短編がついてるんだけど、どれもまじで意味わかんなくてよかった。笑 とくに、世界の終わり、と隣人、が印象的。鳩の首も怖かった。 野呂邦愓は幼少期に長崎で原爆を目撃していて、租界してたからギリギリ助かったけど、戦争のことをいろいろ描いてきたらしい。 そんな人が、核爆弾が爆発したディストピア的な世界で無人島に流れ着いた甲板員の世界を描く。同じく無人島にいたボートの男とのディスコミュニケーションがすんごい。怖い。ディスコミュニケーションどころではない。伝わらなさすぎてつらい。 隣人、も、顔も知らない隣人と嫌がらせ合戦を続けて、それが生きがいみたいになる、コミュニケーションの取り方が間違えすぎてて怖かった。そして隣人はある日突然出ていってしまう。主人公の喪失。救われない。 鳩の首は、動物大好きだった小5が、新しい父親が消毒剤を撒きまくる中で変わってしまう。思春期にもなってない子供の、不安定な環境に置かれて追い詰められた時の変容みたいなのが怖い。鳩を殺したのは少年なのか?子供の価値観は家庭環境で形成されることが分かる。ストレス環境って罪だなと思う。目の前の家庭教師も、必要ないと思ったら変えられてしまうのかな。 ロバートとかまじで意味わからんかったけど、 戦争のせいで精神不安を抱えた元アメリカ兵と、それに振り回される日本人。なるほど、滑稽を描きつついろんなものへの皮肉があるのかな。漫画化とかされてるらしい。いいね。 解説ついてて良かった。解説あるだけでかなり頭整理されて、面白いと思えた。何より、激動の時代を生きた作者の生い立ちが知れて、その人が40年も前に描いた作品を、こうやって解説付きで読めるのがありがたい。ちくま文庫さんありがとう。

Posted by ブクログ