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地政学で読む近現代史 対立する米中の「覇権の急所」はどこか KAWADE夢新書
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 河出書房新社 |
発売年月日 | 2021/05/20 |
JAN | 9784309504247 |
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地政学で読む近現代史
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商品レビュー
4.7
4件のお客様レビュー
「近現代史」となってるが、随所で近代以前に遡り、各国、各民族がいかに地理的な制約条件に縛られ、それを克服すべく攻防を繰り返してきたかが述べられている。手軽な本で著者は国際政治の専門家ではないがそこそこためになる。技術の進歩やパワーバランスの変化に応じて地理の持つ意味は幾分変わるが...
「近現代史」となってるが、随所で近代以前に遡り、各国、各民族がいかに地理的な制約条件に縛られ、それを克服すべく攻防を繰り返してきたかが述べられている。手軽な本で著者は国際政治の専門家ではないがそこそこためになる。技術の進歩やパワーバランスの変化に応じて地理の持つ意味は幾分変わるが、歴史的に見れば、繰り返し立ち現れる対立の構図は大きくは変わらないことが理解できる。 本書では「米中の対立」がクローズアップされているが、最前線でその狭間に立つ日本の岐路はいかに?というのが著者の問題意識だ。ロシアにもあてはまることだが、自然の国境を持たない大陸国家たる中国は必然的に膨張主義を追求する。南モンゴル、東トルキスタン(新彊ウイグル)、チベット、満州という周辺エリアを自国の盾にするという戦略だ。かつて清帝国はこのエリア全てを版図に収めていた。近年のシーパワーとしての覇権追求は、アヘン戦争、日清戦争でイギリス、日本の海上封鎖に苦杯を舐めた記憶が動機になっているという。対して第二次大戦でモンロー主義をかなぐり捨て、冷戦にも勝利したアメリカは、中国の太平洋における覇権を決して許さないと著者は見る。中国を封じ込めるには、アメリカ、日本、インド、オーストラリアという海洋勢力の包囲網(=「クァッド」)に「陸の力」をもう一枚加え、五角形(ペンタゴン)を形成すべしというのが著者の構想だ。 だが評者の見るところ、このシナリオはそう簡単ではない。仮に中国がリージョナル・パワーに留まるなら、国力の低下に直面するアメリカは中国の西太平洋における覇権を受け入れる可能性がある。アメリカにその用意があるなら、本来的には大陸国家である中国は太平洋全域でアメリカに挑戦することを踏み留まるだろう。そうなれば、遅かれ早かれ朝鮮半島は統一され、まさに日本は匕首を突き付けられる。著者の言う「ペンタゴン」の一角を占める「陸の力」の最有力候補ロシアも、戦略的重点を欧州にシフトさせており、アジアで中国と対立することを望まないだろう。ロシアにとって中国は石油・天然ガスの重要顧客でもある。米中の手打ちというこの悪夢のシナリオが現実となれば、経済的に中国に依存する日本は,政治的にも軍事的にも中国への従属を強いられるだろう。そのインパクトはソ連という共通の敵が存在していた頃のニクソンショックの比ではない。 中国にとっての爆弾はアメリカを追い出してアフガニスタンを制圧したタリバンのイスラム原理主義だ。これがウイグルに波及すれば、その対応に追われて海洋進出どころではなくなるかも知れない。アフガニスタンは東西の戦略的要衝であるが、険しい山岳地帯に守られたこの地域を、かつてどの国も完全には攻略できなかった。ソ連然り、アメリカ然りだ。敵の敵は味方とは言うものの、日本がタリバンと手を組むなどということをあまり想像したくはない。だがいずれにせよ、自国の安全は自国で守るしかないという、当たり前の現実をそろそろ直視せざるを得ないのは確かだ。
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ウクライナ紛争の前に書かれており最新の状況を、反映し切れていないが、日本の置かれた状況は理解できる。
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歴史はかつて起きた出来事をなぞるにとどまらず、様々なことを教えてくれる。だから歴史は面白いのだが、同じ社会科の一分野でも、「地理」にはあまり関心を持てなかった。理由はよく分からないが、おそらく日本史にせよ世界史にせよ扱うのがある時代に生きた人間の営みを扱っているのに対し、地理は専...
歴史はかつて起きた出来事をなぞるにとどまらず、様々なことを教えてくれる。だから歴史は面白いのだが、同じ社会科の一分野でも、「地理」にはあまり関心を持てなかった。理由はよく分からないが、おそらく日本史にせよ世界史にせよ扱うのがある時代に生きた人間の営みを扱っているのに対し、地理は専ら地図とにらめっこをするイメージがあったからであるような気がする。 地政学についても、敬愛する出口治明氏が薦めていなかったら手にすることはなかったかもしれない。だが、本書を読んだ今、是非ともお薦めしたいとまで思っている。よく考えてみれば、地球を形成する地形は、長い歴史的時間を経て多少は変化したかもしれないが、大きくは変わっていないだろう。周囲をぐるりと海に囲まれた日本で生まれ育ったために、これまであまり実感してこなかったが、陸続きのある場所に、時の為政者たちが国境を設け、自分たちの領地を守り、また拡張を目指した。あるいは島国は、遠くの地に進駐し、属国化して、さらなる拡張の足掛かりにしようとした。ときには、来るべき戦争に備え、自国から隣国を攻めるにあたり、地理的に東西から挟撃できるように用意周到な同盟を組んだ例もある。 つまり、ほぼ不変ともいえる地形に、人間の(特に国家同士の)思惑を重ねるとどんな相乗効果が生まれるか、を読み解くのが地政学である。歴史の著書はもちろん読んでいて面白いが、ここに地形的条件を投影して、様々な歴史的事実の因果関係を探るのは、ミステリーにも似た知的好奇心を喚起される。地政学という側面から歴史を見ることで、これまで読んできた歴史上のできごとは、時に今まで常識だったはずの因果関係をひっくり返すような仮説も出てくるし、あるいは別のできごとにおいては、純粋に歴史として説明されてきた内容をさらに深化させてくれる。 地形、地理的条件というフィルターを通して、人間同士の思惑が交錯し歴史ができあがる様を見つめることがこんなに楽しく、また知的であることをこれまで知らなかったことが悔やまれるほどである。 本書では、アジア、アメリカ、中東、ヨーロッパ、アフリカと、主要な大陸ごとに、「地政学」というまなざしで歴史を見ると何が見えてくるのかが詳しく記されている。2021年現在、なぜ中国がアメリカを超越する大国になろうとしているのかといったことを、このまなざしは見抜くことができる。情勢が安定しない中東も、「地政学」で見れば、その理由に首肯できる。歴史とは、人と人との営みが生み出した結果の因果的連鎖であろう。だが、そこに関与しているのは「人」だけではない。「人」が生きてきた「地」がもたらす地理的条件にも、絶えず人は右往左往しながら、頭を悩ませてきたのである。地中海のとある小島の占有権を巡ってある時代には争いが起きたし、運河により地形を変えることで覇権を手にした例もある。 地政学とは、無味乾燥な地図を眺めながら、かつての人々の権謀術数をめぐる楽しい謎解きでもあった。つい「地理」をイメージして敬遠してしまう(私のような)人こそ、今すぐに読むべき著書であろう。
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