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冷たい豆満江を渡って 「帰国者」による「脱北」体験記
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冷たい豆満江を渡って 「帰国者」による「脱北」体験記

梁葉津子(著者)

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冷たい豆満江を渡って 「帰国者」による「脱北」体験記

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 ハート出版
発売年月日 2021/05/07
JAN 9784802401173

冷たい豆満江を渡って

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2021/07/23

18歳で両親とともに北朝鮮に「帰国」した著者の脱北に関連するエピソードを収めたもの。 言葉も知らない、知り合いもいない北朝鮮に本当は「帰国」したくなかった著者。しかし一番上の兄以外みな北朝鮮に行くことを決めたため、と家族とともに「帰国」することになる。 著者は帰国した直後から「...

18歳で両親とともに北朝鮮に「帰国」した著者の脱北に関連するエピソードを収めたもの。 言葉も知らない、知り合いもいない北朝鮮に本当は「帰国」したくなかった著者。しかし一番上の兄以外みな北朝鮮に行くことを決めたため、と家族とともに「帰国」することになる。 著者は帰国した直後から「来なければよかった」と感じてしまう。そんな気持ちで父親に反抗してしまった際、帰国に最も積極的だった父親が最も「帰国」を後悔していることを察して黙り込んでしまう。 著者は北朝鮮で40年を暮らし、「苦難の行軍」が始まった後、ここでは暮らしていけないと、体の弱かった三男だけを連れて脱北を試みる。当時はまだ脱北者がさほど多くなかった時期だ。特に日本との連絡がうまくいかず、そうこうしているうちに逮捕され、北朝鮮に強制送還される。 その後、釈放された主人公は山奥の村に追放されそこで暮らすことになるが、1年後再び脱北を試みる。2度目の脱北でも中国で逮捕されるが、日本のNGOとの接触が功を奏して、日本出身の著者は日本行きに成功する。それは最初に脱北を試みてから7年後だったという。 著者は脱北過程でのエピソードにページのほとんどを割き、北朝鮮での暮らしについては多くを語っていない。 しかし、追放された山奥での暮らしは「朝鮮労働党の影響が少な」く、「人と人とがお互いを監視しあい、妬んだりひねくれたりするような窮屈さがなく、昔ながらの純朴な人間関係がまだ生きて」いたと書いているところをみると、北朝鮮の社会がどれだけ監視、密告社会であるかを垣間見ることができる。実際、著者が2度の脱北で逮捕されたのは密告が理由だという。しかし、この本に登場する多くの北朝鮮人は、苦難の行軍という苦しい時代に、人を助け、苦しみを分かち合う人として描かれている。苦しみの中にあってなお、他人を助けようとするのである。 一方、2度目の脱北に失敗して逮捕された際、著者が日本出身であると通報を受けた日本人の役人が彼女に面会しにくるのだが、彼は長期間拘束されていた著者(当時すでに高齢である)に対して、体調を尋ねることもなくこういったそうだ。 「あなたたちのような人がこの先増えると困る」 日本で生まれ育った在日朝鮮人を北朝鮮に「帰国」させた帰国事業。それは、朝鮮総連の働きだけで成立したのではなく、日本政府の「面倒な朝鮮人を送り返そう」という気持ちがあったからこそ可能だった事業だということを想起する必要がある。 著者は帰国して現在にいたるまですでに長い時間を日本で暮らしているが、いまだに永住権もなく帰化もできていないという。日本に帰りたいとの強い憧憬を持ち続け、7年という長い年月を拘束されたり、田舎に追放されて監視下に置かれたりし、やっと帰国した「故郷」。その故郷に受け入れられることなく、最近は韓国籍の韓国人として生きることを受け入れ始めているようである。 飢餓の中でも他人を助けようとする北朝鮮の住民と比べて、われわれには恥ずべきところがあるのではないか。そんなことを考えさせられる一冊であった。

Posted by ブクログ

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