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斑鳩王の慟哭 新装版 中公文庫
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斑鳩王の慟哭 新装版 中公文庫

黒岩重吾(著者)

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斑鳩王の慟哭 新装版 中公文庫

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 中央公論新社
発売年月日 2021/04/21
JAN 9784122070592

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2021/08/17

ゆっくりと読了に至ったが、かなり詳しい解説、作者のインタビューや対談が「極薄い文庫本…」という程度の分量になる程度に添えられていて、作品そのものの読後にそれも興味深く読んだ。 所謂「聖徳太子」である厩戸王子や、その息子である山背大兄王子が主人公ということになる作品だ。彼らは斑鳩の...

ゆっくりと読了に至ったが、かなり詳しい解説、作者のインタビューや対談が「極薄い文庫本…」という程度の分量になる程度に添えられていて、作品そのものの読後にそれも興味深く読んだ。 所謂「聖徳太子」である厩戸王子や、その息子である山背大兄王子が主人公ということになる作品だ。彼らは斑鳩の地に宮を営んだので「斑鳩王」という異称も有するのだ。 作中にも「斑鳩宮」や「斑鳩寺」という場所が登場する。ここで言う「斑鳩寺」はあの「法隆寺」のことだ。現在「東院伽藍」と呼ばれている辺りが「斑鳩宮」と呼ばれた辺りで、「西院伽藍」と呼ばれている辺りは創建時の「斑鳩寺」の様子を伝えているらしい。偶々、「そう言えば行っていない…」と法隆寺を訪ねてみた経過が在ったので、本作に出くわして「あの場所に関連の物語か…」と強い興味を覚え、入手して紐解いた訳だ。 本作は厩戸王子の晩年、そして山背大兄王子が滅ぼされて行くという経過が扱われている。故に「慟哭」なのだ。 厩戸王子は、高い理想の下に活躍したとされていて「伝説的な聖人君子」のような扱いで、所謂「聖徳太子」として知られている。「皇太子として摂政を務めた」と伝えられる訳だが、実際には豪族達や王家(皇室)の人達等の有力者達の様々なバランスの上で政務を掌った政治家として、苦しみながら難しい活動を続けたという一面が在り、晩年近くには寧ろ「微妙な立場の有力者」ということであったようだ。本作ではそういう「微妙な立場の有力者」という様子が描かれる。 作品の面白さ、或いは作者の凄さということにもなるのであろうが、本作は執筆時点での「最新の考古学的調査、調査に基づく考察を通じて明らかになった」という事実を踏まえながら、「そういう事実の背後に在ったであろう関係者のドラマ」を紡いでいるという辺りになるのだと思う。 厩戸王子が在った時代、更に少し後までは寧ろ「大王」と呼ばれた「天皇」に関して、数在るその陵墓の一部が考古学的調査の対象となっている。厩戸王子と共に在ったという推古天皇の父の陵墓と推定される場所もそうした調査の対象となった経過が在る。その調査で明らかになったのは、「大王」を葬るべく造られた陵墓であるが、或る時点で改修が加えられ、最初に「大王」が葬られたと見受けられる場所を動かして新たな棺を加えた痕跡が見受けられるというのだ。 この「後から新たな棺を加えた?」というのが、推古天皇が自身の母を葬るために「大王」の墳墓に改修を加えたとされていて、それが進められようという中での厩戸王子の苦衷が、本作の物語の前半部の底流となっている。 最近はこの「厩戸王子が在った時代」を語る“教科書”も、新しい知見を踏まえて新しい内容になっていて、自身が知るような所謂「聖徳太子」という名がそのまま“教科書”に出て来るような頃とは趣は変わっているらしい。が、それはそれとして、最高実力者たる蘇我馬子の下に天皇、摂政として据えられた推古天皇や厩戸王子という状況、高い理想で独自に色々なことを模索した厩戸王子の“達成”と“挫折”、または“挫折”の失意という中での最期が本作には描かれている。 それに加えて、厩戸王子の息子である山背大兄王子の物語だ。一部には「偉大に過ぎる父親の息子」という共通項が在る蘇我蝦夷との対比というような感にもなっている。が、この「大王」の位を継ぎ得る立場ということながらも、蘇我蝦夷等に排されしまう山背大兄王子の悲壮な運命は「読ませる物語」になっている。厩戸王子が他界し、推古天皇や蘇我馬子も他界した後の蘇我蝦夷と山背大兄王子との争い、或いは争いのようなモノは、何処となく「現代の大企業の中での“派閥抗争”」を想わせる面も在った。 厩戸王子が登場するような、古代世界を舞台にする小説ではよく知られているという作者による作品を新たに、詳しい解説を添えて文庫化したという本書…なかなかに価値が高いかもしれない。

Posted by ブクログ

2021/05/13

聖徳太子晩年の苦悩と孤独、推古女帝や蘇我一族との確執は、やがて太子没後の悲劇へとなだれ込む。黒岩古代史小説の巨篇。〈付録対談〉梅原 猛・黒岩重吾

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