つながる短歌100 人々が心を燃やして詠んだ三十一文字

あんの秀子(著者)

• 販売会社／発売会社: 朝日新聞出版
• 発売年月日: 2021/02/22
• JAN: 9784023340046

商品レビュー

2024/07/17

テーマに対して、古典、現代問わず２〜３首を選び、その対比と解説。

歌人として全然知らなくても詠んだ人の背景も紹介されていてわかりやすい。

印象に残ったのは、

紀貫之
　桜花散りぬる風のなごりには
　水なき空に波ぞたちける
視点が面白い。

柿本人麻呂
　天の海に雲の波立ち月の舟　
　星の林に漕ぎ隠る見ゆ
現代っぽい感じがする。

与謝野晶子
　金色のちひさき鳥の形して
　銀杏ちるなり夕日の岡に
視点の面白さと風景が目に浮かぶような描写。

小式部内侍と和泉式部の母娘の対比、大伯皇女と大津皇子の姉弟のストーリーも興味深かった。

伊勢の波瀾の人生や石川啄木の3行書きなどを知ることができた。

ゆる系のイラストと文字数も、ちょうど良く読みやすい。

2024/06/24

むかし古典の教科書の中で見た
短歌も、大人になってあらためて
みると味わい深いものがある。
特に、この本の挿絵はなんともほんわか
としていて、堅苦しくなく
詩の本を眺めているようだ。

口語で書かれている分
近代の文学者の書いた短歌が
胸に刺さるものが多い。
でも、学生の頃から古文・古語の
響きも嫌いじゃない。

最終ページのとじ込み付録がいい！
主要歌人の系譜がわかりやすい。

2022/07/01

中高時代、国語の授業中、隙あらば便覧で和歌・短歌のページを繰っていました。
その頃に好きだった狭野茅上娘子（君が行く道のながてを繰り畳ね…）と
与謝野晶子（やわ肌のあつき血汐にふれも見で…）が並べられているのを見て、
ニヤニヤしながら読み始めました（恋に恋する少女だったのですね。）

しかし後半に向かうにつれ、特に叙景歌について、中高生当時はもちろん、今でも、
一人で読むのではけっしてたどり着けなかったであろう鑑賞の深さを示され唸らされました。

「金色のちひさき鳥のかたちして」とうたうことで、
銀杏の葉を「ストップモーションがかかったように」見せる与謝野晶子のすごさ。

この晶子の歌と、源経信（夕されば門田の稲葉おとづれて…）の「音響の効果をともなう」秋風の描写を対照し、
更に縦と横の「黄金色の秋」の広がりを示されるあたり、素敵。の一言しか出てきません。

絵・装填のかわいさと、解説の書きぶりの率直さ
（きっと啄木がお好きなのでは？とか推察しちゃうくらいに、素直に気づいたこと、感じたことが書かれている）
の相性も良くて、愛らしい本。