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となりの男
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となりの男

柳谷郁子(著者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 幻冬舎メディアコンサルティング
発売年月日 2021/01/22
JAN 9784344930643

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2023/04/04

・ユタの肖像  飲みに誘ってきた友達、一仙とその弟子の行動により、人を信じることを恐れるようになった由布に、唯一、ほんの少し「信頼」の希望を与えた田島。これが後の由布の手紙、そして「九時四分」に繋がる。 「世界は、時代の証たちは、田島たちの書き出そうとする超現実の作品を超えて、な...

・ユタの肖像  飲みに誘ってきた友達、一仙とその弟子の行動により、人を信じることを恐れるようになった由布に、唯一、ほんの少し「信頼」の希望を与えた田島。これが後の由布の手紙、そして「九時四分」に繋がる。 「世界は、時代の証たちは、田島たちの書き出そうとする超現実の作品を超えて、なお超現実に思える。」  まさに、その通りだと思った。世界には、小説以上に現実離れした事象や出来事で溢れている。しかしそれを、当たり前のように錯覚し、小説のような夢物語とは判断しない。あくまでも生活の一部であり、非現実ではない。  それは、なぜか。現実として、起こったからだろうか。小説の内容は、実際には起こっていないから、今後も現実で起こることがないと断定しているのだろうか。  案外、叶うと思えばある程度の出来事は叶うのかもしれない。世界には、今までの時代の証たちからも分かるように、超現実で溢れているのだから。 ・桜かがよう声よ  圭二にのしかかる重圧は計り知れない。それは、試験に合格しないことだけではない。いい歳になって、いまだに職を持たず身内に頼って生きていることへの情けなさ、恥ずかしさ。祖父の発言、祖父からの期待。全てが圭二を追い込み、苦しめている。  その圭二を気にかけてはいるものの、彼を心底から安心させることのできないことにまた、ふゆ子は悩んでいる。そこに重なる祖父の病気。それは想像していたよりもはるかに重症で、祖父が好江に縋り付いてしまうほど。  全てがうまくいかず、全てが空回りしている。読んでいて非常に心が痛む。頼り甲斐があって、強靭だった祖父の衰弱。それに伴っているかのように圭二も少しずつ、でも確実に衰弱していっている。  残り僅かの人生の中で、失った目。今までできていたことのほぼ全てができなくなる、恐ろしい喪失感。  健一は、きっと分かっていない。圭二の苦労を。彼の感じている重圧を。勿論、健一の気持ちは分かる。いい歳したおっさんが、一体何をやっているのだと。ただの親の脛齧りではないかと。それもまた事実ではある。だが、それだけは、決して言ってはいけない。  とうとう健一がキレた。親の脛を齧っておいて、挙げ句の果てに十歳年下の詩織の紐にまでなりやがったと。誰も悪くない。皆が自分の正しいと思うことをしているのだ。ただ、圭二の言っていたことが本当ならば、健一があまりにも自己中心的だとも感じられる。潔く自分の非を認めた圭二がはっきりと言うのだから、本当のように感じられる ・となりの男  信じられないほどの罵詈雑言。湯川も憐んでしまうほどである。だが、自分が忌み嫌い蔑んできた友人(?)が自分を上回る才能を放っていると知ったとき、自分はどうなるだろう。恐らく、妬み辛み、更に忌み嫌うことだろう。「自分は自分、人は人」という素晴らしい言葉があるのにどうして、人は隣の芝ばかり見てしまうのだろうか。これは、自分にしか当てはまらないのだろうか。  「となりの男」は主人公と湯川の関係、そして主人公と佐山さんの関係を表していると感じた。前者は本文にもあるように、作家として似た者同士であることを。そして後者は、同じ男として、同じ旦那として庇ってやりたいという主人公の気持ちが表れているような気がする。  加奈子の豹変ぶりには毎回驚かされる。中国の伝統芸の如く表情や感情がころころと変わる様は、少々不気味で、おかしいが、ある種の生々しさをも表現しているような気がした。  加奈子の「水臭い」という発言は少々、いやかなり理解に苦しむ。話の真相を知りたいという気持ちは理解できるが、いくら隣家といっても所詮は他人である。ましてやあんな話、他人にはできない。それを「水臭い」の一言で済ませる彼女の心情が、僕には全くわからない。 ・水門  いろいろな問題を絡めて、でも粗雑に扱うことなく一つ一つを丁寧にまとめあげていた。  人間には、見えない顔があると言われるが、まさにそれを体現している人物ばかりだった。彼らには自分の知らない悩みがあり、常に四苦八苦しながら生きているのだと教えてくれた。  人間はとても難しい生き物だと思った。それぞれに違いがあり、相手の感情は絶対に分からない。そんな中で日々生活していくのは大変だが、この本のおかげで少し勇気がもらえた気がする。  柳谷郁子さん、ありがとうございます。  

Posted by ブクログ

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