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ベネズエラ 溶解する民主主義、破綻する経済 中公選書
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 中央公論新社 |
発売年月日 | 2021/01/07 |
JAN | 9784121101150 |
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ベネズエラ
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豊かな石油資源に恵まれ、ラテンアメリカにおいて最も安定した民主主義体制を誇ってきたベネズエラ。ところが2016年以降の3年間でGDPは半減、ハイパーインフレによって紙幣は紙くずとなり、飢える人びとは国外へ脱出。シリアに次ぐ世界第2の難民送り出し国になってしまった。 国家の崩壊...
豊かな石油資源に恵まれ、ラテンアメリカにおいて最も安定した民主主義体制を誇ってきたベネズエラ。ところが2016年以降の3年間でGDPは半減、ハイパーインフレによって紙幣は紙くずとなり、飢える人びとは国外へ脱出。シリアに次ぐ世界第2の難民送り出し国になってしまった。 国家の崩壊はいかにして起きたのか。日本のマスメディアが報道機関として満足な役割を果たしていないなか、アジ研の専門家による本書は実にありがたい。マドゥロ政権下で現出した危機が、それ以前のチャベス政権下において用意されたものであったことを、歴史、経済、政治、外交、社会など多角的側面から詳述している。 1980年代までの石油利益の労使間配分および二大政党間の権力分有という安定した体制が行き詰まり、取り残されるインフォーマルセクター労働者層の不満が高まるなか、キューバの後ろ盾を得て1999年大統領選に勝利したチャベスは、大統領に権力を集中させる憲法改正を強引に実現。多数派支配による超法規的な政権運営は大規模な抵抗を招き、2002年にはいったん政権を追われるものの、反対派への露骨な脅迫と支持層への利益誘導を駆使して選挙戦に勝利し支配を固めてきた。その後を継いだマドゥロはカリスマ的人気を欠くだけに、いっそう暴力的手法に依存して反体制派を抑圧し政権維持に腐心することになった。 では国家経済の破綻はいかにして起きたのか。公的支出の拡大による再分配そのものには、格差縮小や貧困緩和など一定の効果があったことは認められる。だが特に政権批判が高まって以降、公的支出は支持層をつなぎとめる道具としての性格を増し、政権による石油セクターや中央銀行への運営介入は、国際投資および生産性を引き下げる結果を招いた。さらに国際石油価格の上昇が下落に転じると、政権はキューバや中国への依存を高め、累積債務の支払いとともに政権支持をつなぎとめるためにいっそうカネをひきだすためのポケットとして石油資源をただ使いつぶすのみになる。 その結果、チャベス政権における最良の果実であった社会開発さえもが後退に転じた。貧困層の生活改善プロジェクト「ミシオン」は石油資源を原資としていたがゆえに継続できなくなっただけでなく、党派性の道具となり腐敗の温床にもなった。社会格差の増大は、持てる層よりも防護手段をもたない貧困層を、暴力犯罪にさらされやすくしている。 通商よりも豊富な自然資源を経済基盤としてきたことをはじめ、日本とはいろいろな面で違いが大きいため、安易に教訓をひきだすべきではないが、とはいえ、ベネズエラがたどった民主国家システムの崩壊を、日本ではありえないことと決めつけるべきでもなかろう。米国やグローバル資本を公然と批判するチャベスは、国際的な左派政権のリーダー視すらされてきた。しかしはっきりしているのは、左派/右派という単純な分類だけで理解することはできないということだ。 著者が指摘するように、チャベスの掲げた「社会主義」は、石油資源をもとに生活財を国家が直接配分することを指しており、マルクス主義経済における生産手段の所有関係や、労働による利潤の分配を軸に据えたものではない。国家による再生産資源の配分は、党派性と強く結びつき、自らを慈父に位置付ける、家父長的ポピュリズムにもとづくものであった。権力の集中は、公平性や多様性にもとづく民主主義を犠牲にした、私利にもとづく政権維持のみを目的化することになった。 このような政治はベネズエラに限られない。かつてクーデターに失敗したチャベスが、憲法と選挙という民主主義の装置によって民主主義を破壊したことは、著者が指摘するように、他の多くの国でも台頭している動向を反映しているといえる。腐敗の横行、司法と議会の軽視など、非民主的な民主主義のサインはここにも生まれていないか。堅固に見えたシステムがあっという間に崩壊しうることの歴史的証拠は、なにも他国に求めるまでもないのである。
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チャベス・マドゥロ政権における権威主義化、経済破綻等の混乱を丁寧に描き出す。著者は日本でも数少ないベネズエラを専門とする研究者。 ベネズエラの「失敗」はチャベス・マドゥロ政権の運営にかなり帰せられるということが分かった。政権の経済失策や非民主的な運営等よってここまで国家が誤った方...
チャベス・マドゥロ政権における権威主義化、経済破綻等の混乱を丁寧に描き出す。著者は日本でも数少ないベネズエラを専門とする研究者。 ベネズエラの「失敗」はチャベス・マドゥロ政権の運営にかなり帰せられるということが分かった。政権の経済失策や非民主的な運営等よってここまで国家が誤った方向に行くのは珍しいのではないか。 一方で本書に通底するやや上から目線でチャベス派を非難する論調には疑問に思うところもあった。失策をただ描写するのではなくそれを許す国内的事情や国際環境等についてもう少し深めて欲しかった(実は本当にどうしようもない為政者というだけなのかもしれないが)。
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ルポ的なのかと思いきや、机の上でデータを引っ張り議論するような論文的な本。 あくまで米国寄りの著者が書いた本という前提を認識する必要はある。 日本では収集しにくいベネズエラの政治についてのとっかかりとして優秀な1冊。 ただ、机上の空論的な要素も含んでおり、実態とは異なる部分もあ...
ルポ的なのかと思いきや、机の上でデータを引っ張り議論するような論文的な本。 あくまで米国寄りの著者が書いた本という前提を認識する必要はある。 日本では収集しにくいベネズエラの政治についてのとっかかりとして優秀な1冊。 ただ、机上の空論的な要素も含んでおり、実態とは異なる部分もあるということだけは常に頭にいれたい。
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