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駒形丸事件 インド太平洋世界とイギリス帝国 ちくま新書1543
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 筑摩書房 |
発売年月日 | 2021/01/08 |
JAN | 9784480073594 |
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駒形丸事件
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「駒形丸事件」──第一次世界大戦勃興時、カナダ・バンクーバーでインド人移民が上陸を拒否され、さらに送還先のコルコタで虐殺されたという事件があった。本書は、一般には殆ど知られていないこの事件をノードとして、グローバル/ローカル、ナショナル/リージョナルとして理解されてきた多層な歴...
「駒形丸事件」──第一次世界大戦勃興時、カナダ・バンクーバーでインド人移民が上陸を拒否され、さらに送還先のコルコタで虐殺されたという事件があった。本書は、一般には殆ど知られていないこの事件をノードとして、グローバル/ローカル、ナショナル/リージョナルとして理解されてきた多層な歴史観を相互に関連づけ、立ち現れる新しい視点から世界を照射しようとする試み。これが学術書などでなく、新書という親しみやすいメディアで世に問われることを何よりも評価したいと思う。地味ではあるけども、それを知ることによって視界がグッと開けるようなワン・イシュー。これを手軽に紹介できるというのが新書の醍醐味であり、本書のテーマはまさにこの新書の機能にうってつけの題材だと思うからだ。 まず、本書が別々の領域を専門とする二人の歴史硏究者が、図らずも同一の学術的関心を持っていることに気づいたことに端を発するものであることからして興味深い。そのような研究者間の交流や意見交換がなければ浮かび上がらなかった事案に、僕のような一般人がアクセスできるというのは有難い話だと思う。 ただ、読みはじめは手探りの状態となりやや読みにくい。そもそも歴史的事件というのは、それにより歴史が転換点を迎えるというエポックメイキングなもの、すなわち起点になるものもあれば、それとは逆に、歴史が明示的な変化を伴わないが後に多大な影響を及ぼすようなうねりを内在して動き始めた時、その端緒を表していたと事後的に把握されるものもある。この駒形丸事件は後者の典型だろう。したがってその意義を一言で言い表すことが困難で、多数のコンテクストを参照して初めてその歴史的な重要性が浮かび上がってくることになるのだが、これがどうしても遠回りの作業となるのだ。いきおい本書の約3分の1もその時代背景の描写に費やされることとなり、読者は本書の全体像が判然としないまま読み進めざるを得ない。しかし、これはこれでやや忍耐を要するものの楽しい読書体験の一部だと思うのだ。 終章で、紹介されてきた多数のテクスト・視点が一気にまとめ上げられ、なぜこの事件がイギリス帝国史家の関心の的となったのかが明らかにされる。当時、グローバルなインド人の商業活動と人的な移動のネットワークが「インド太平洋世界」ともいうべき経済圏を形成していた。イギリス本国は、他の列強との差別化のために、インドをはじめとする異民族を支配する側の方便として「帝国臣民」の論理を活用したが、これは帝国内の自由な移動を保障するものとして被支配側のインド人としても活用の余地の大きいロジックだった。これが、インド人移民が乗船した駒形丸がバンクーバーに入港する際、同一の論理に依拠しながらも互いに反対方向のベクトルをもつ力として作用したのだ。ここで面白いのは、支配される側の人的・資本移動が基本的には制限されていたであろう帝国主義の時代において、その「帝国の隙間」を突く形で活発にトランスナショナルな経済活動を営んでいた主体が多数いたという事実。本書で触れられるシク教徒はその典型だが、2回の世界大戦を経てネーション・ステートの勃興を経た結果、かえってそのような自由な移動が制約される結果となったという著者らの指摘が逆説的で興味深い。そうであるとするならば、「駒形丸事件」は当時の移民流動性をいわば裏焼きしたネガであり、さらに来るべき戦後の固定性のポジでもあるというが故に真に刮目すべき事象であり、著者らがこれに着目したことも十分に理解できる。 ぜひ売れて欲しい。多分売れないだろうけど、それでも本書は売れるべき本、売れないとおかしい本だと思う。
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