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太平天国 皇帝なき中国の挫折 岩波新書1862
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 岩波書店 |
発売年月日 | 2020/12/19 |
JAN | 9784004318620 |
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太平天国
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清朝の太平天国を論じた歴史書。太平天国は清朝の支配とは対照的であった。中国に新たな政治の仕組みを生み出す可能性があった。 第一に阿片の厳禁である。太平天国は阿片の吸引を厳しく禁止した。洪秀全は阿片吸引を「変じて妖を生む」ことを批判した。清朝は司令官レベルにも阿片中毒者がいた。阿...
清朝の太平天国を論じた歴史書。太平天国は清朝の支配とは対照的であった。中国に新たな政治の仕組みを生み出す可能性があった。 第一に阿片の厳禁である。太平天国は阿片の吸引を厳しく禁止した。洪秀全は阿片吸引を「変じて妖を生む」ことを批判した。清朝は司令官レベルにも阿片中毒者がいた。阿片中毒者が虚偽告発で冤罪を作っていた。 「湖北巡撫だった旗人の崇綸(ツォンロン)は西征軍が兵を引いた今こそ追撃すべきであるのに、湖広総督で漢人の呉文鎔(ごぶんよう)が怯えて出撃しないと告発した。実は崇綸はアヘンの常習者で、先の戦いで逃亡しようとしたところを呉文鎔に叱責され恨んでいたという」(129頁) 第二に軍紀である。太平天国軍は厳格な規律があった。これに対して清朝の軍隊は略奪や殺人の絶えなかった。清朝の軍隊は賊を見れば戦わずに逃げ、賊が去れば民をがして手柄にする状態であった。貧しい農民は太平天国軍の進撃を清朝の支配よりもはるかに良いと歓迎するほどであった。 湘軍は天京に入城すると住民に対する激しい略奪と殺戮を行った。「老人や年配の女性は片端から殺され、幼児も面白半分に殺された。天王府にあった金銀もすべて略奪され、証拠隠滅のために焼き払われた」(232頁) 第三に分権である。太平天国は洪秀全を天王としたが、専制君主ではなく、諸王が併存する体制であった。「占領地の経営のために実施した郷官制度も中央主権的な統治の弊害を改め、新興の地域リーダーに地方行政への参加を促す分権的な側面をもっていた」(239頁)。これは秦の始皇帝以来の官僚制の徹底した中華王朝とは対照的である。 第四に中華思想からの脱却である。太平天国は中国という言葉を多用した。中国と言うと世界の中心に位置する中華思想と考える向きもあるが、西方(ヨーロッパ)と中国という価値中立的な対比であった。西戎と呼ぶような中華思想からすると進歩的であった。 しかし、第三と第四の点は徹底を欠いた。第三の点は王の間で粛清が相次ぎ、専制や不公正な人事が行われるようになった。第四の点は既存の中華帝国と同じように欧米諸国に朝貢を要求し、相互主義に基づく主権国家同士の外交を求める欧米諸国を失望させた。これらの点は太平天国の失敗原因となる。 太平天国にも不寛容という問題があった。しかし、それは欧米思想に内包しているものであった。「不寛容さは元をたどればユダヤ・キリスト教思想の影響にたどりつく。抑圧された民の異議申し立ては、しばしば自分たちがかかえた苦難の大きさゆえにエスノセントリズム(自民族中心主義)に陥り、他者の苦悩に対する理解を欠いてしまう」(238頁)。これはパレスチナを抑圧するイスラエルに重なる。また、ハマスの攻撃にも重なる。 清朝の正規軍の八旗や緑営は太平天国の軍勢に対して無力であった。そこで漢人有力者は郷勇を組織した。曾国藩の湘勇、李鴻章の淮勇などである。曽国藩は「太平天国の中核を占めた広東、広西人に対する敵愾心を煽ることで人々を戦いに動員しようとした。それは中国社会に濃厚な地域主義を生み出した」(139頁)。後の中華民国は軍閥の跋扈に苦しむことになるが、その根はここにあった。 清朝では太平天国を「心腹の害」、欧米列強を「肢体の患」と呼び、ヨーロッパの協力を得て太平天国を鎮圧しようとした(219頁)。後に蒋介石は日中戦争で「日本軍は軽い皮膚病だが、共産党は重い内臓疾患」と言ったが、それと似ている。
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「太平天国」菊池秀明著、岩波新書、2020.12.18 262p ¥946 C0222 (2022.04.28読了)(2022.04.17借入) 副題「皇帝なき中国の挫折」 2022年2月に「太平天国」増井経夫著、を読んだのですが、1951年に出版された本だったためかよくわかりま...
「太平天国」菊池秀明著、岩波新書、2020.12.18 262p ¥946 C0222 (2022.04.28読了)(2022.04.17借入) 副題「皇帝なき中国の挫折」 2022年2月に「太平天国」増井経夫著、を読んだのですが、1951年に出版された本だったためかよくわかりませんでした。研究がまだあまり進んでいなかったのかなと思い、新しい本が出ていたので読んでみました。 太平天国の戦いは、1850年12月に始まり、1864年7月に終わっています。14年も続いたんですね。 太平天国の教えは、中華思想とキリスト教をミックスしたようなもので、キリスト教の宣教師には、とても受け入れられないようなものだったようです。 指導者の洪秀全は、啓示を受けて上帝教を創っています。宗教を作るには、啓示を受けることが必要なんですね。 ひょっとすると、イスラム教と同様に、中国全土に広まって清朝に代わる帝国ができていたのかもしれません。残念ながら、イギリスをはじめとする列強が干渉してくる時代になってしまっていたためにうまくいかなかったのかもしれません。 【目次】 はじめに 一 神は上帝ただ一つ 二 約束の地に向かって 三 「地上の天国」の実像 四 曽国藩と湘軍の登場 五 天京事変への道 六 「救世主の王国」の滅亡 結論 あとがき 参考文献 関連年表 ☆関連図書(既読) 「太平天国」増井経夫著、岩波新書、1951.07.15 「李鴻章」岡本隆司著、岩波新書、2011.11.18 「実録アヘン戦争」陳舜臣著、中公文庫、1985.03.10 「中国の歴史(13) 斜陽と黎明」陳舜臣著、平凡社、1983.03.07 (アマゾンより) 「滅満興漢」を掲げて清朝打倒をめざし、皇帝制度を否定した太平天国。その鎮圧のために組織され、台頭する地方勢力の筆頭となった曽国藩の湘軍。血塗られた歴史をもたらした両者の戦いの詳細を丹念にたどり、中国近代化へと続く道に光をあてるとともに、皇帝支配という権威主義的統治のあり方を問い直す。
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一時話題になった本である。太平天国について統一から分裂までを描いている。そこで現在の中国、あるいは毛沢東の政策に続けている。したがって、現在の中国の体制を考える視点を与える本のひとつであろう。
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