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ゴシック文学神髄 ちくま文庫
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ゴシック文学神髄 ちくま文庫

アンソロジー(著者), 東雅夫(編者)

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ゴシック文学神髄 ちくま文庫

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 筑摩書房
発売年月日 2020/10/10
JAN 9784480436979

ゴシック文学神髄

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商品レビュー

4.5

6件のお客様レビュー

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2022/05/02

「ゴシック」という言葉は現在もしばしば聞くが、それが指し示すものは何なのか、はっきりしない。  もとは12世紀から15世紀あたりの北西ヨーロッパに見られた建築様式らしい。が、Wikipediaによると「ゴシック小説」が指すのは18世紀末から19世紀初頭に書かれた幻想小説の類のよう...

「ゴシック」という言葉は現在もしばしば聞くが、それが指し示すものは何なのか、はっきりしない。  もとは12世紀から15世紀あたりの北西ヨーロッパに見られた建築様式らしい。が、Wikipediaによると「ゴシック小説」が指すのは18世紀末から19世紀初頭に書かれた幻想小説の類のようだ。音楽史で言うとモーツァルト(1756-1791)からベートーヴェン(1770-1827)辺りの世代か。  こんにち量産されているホラー映画でも「ゴシック・ホラー」と呼ばれるものがあるらしいが、このゴシックや、日本のサブカルにおける「ゴスロリ」のゴシックが何を指しているのか、私には不明である。かなり漠然と使われているような気がする。  本書はヨーロッパ(英語圏)の「ゴシック小説」の古典を集めたアンソロジーである。しかもおそろしく風変わりなのは、もの凄く古い翻訳を、漢字を新字体に改めた以外はそのまま掲載している点だ。これは読む人を選ぶのではないか。マニアックなアンソロジーである。  掲載作品は以下の通り。 (1)エドガー・アラン・ポー(1809-1849)アメリカ ■大鴉(1845) (ギュスターヴ・ドレの詩画集は1883年) 日夏耿之介訳(1929《昭和4》年-1949《昭和24》年) ■アッシャア屋形崩るるの記(=アッシャー家の崩壊)(1839) 日夏耿之介訳(冒頭のみ。翻訳年不明) (2)ホレス・ウォルポール(1717-1797)イギリス ■オトラント城奇譚(1764) 平井呈一訳(1970《昭和45》年) (3)ウィリアム・トマス・ベックフォード(1760-1844)イギリス ■ヴァテック(1786) 矢野目源一訳(1932《昭和7》年) (4)レ・ファニュ(1814-1873)アイルランド ■死妖姫(=吸血鬼カーミラ)(1872) 野町二訳(1948《昭和23》年)  巻頭に目次が無く、「落丁本か??」と焦ったものだが、実は巻頭のドレの詩画集「大鴉」を口絵として扱っているためで、その後ろに目次が入っていた。紙質が同じなのでこれでは分かりにくい。 (1)の日夏耿之介の訳は非常にものものしい文語調で、見たことのない難しい熟語だらけの古文で、これまた読む人を凄く限定してしまうことだろう。が、ポーの「大鴉」や「アッシャー家の崩壊」こそがまさしく「ゴシック文学」なのだ、と言われれば、なるほどそうなのか、と分かったような気になる。ただし「19世紀初頭まで」というゴシック小説の定義よりは少し新しい時代ではある。 (2)(3)は18世紀の作品で、なるほどこれは「完全には近代小説になっていない」感じの、波瀾万丈な冒険物語のようなものだ。『アラビアンナイト』のような、まさに「物語」という感じの、読んで楽しい読み物である。  とりわけ「オトラント城奇譚」の方はたった3日間の出来事なのに凄まじい勢いで物語が変転してゆく。本作はこうした「ゴシック小説」の嚆矢とのことで、幽霊とかも出てくるが怪奇小説というようなトーンにまとまってもおらず、ひたすらに目まぐるしくハチャメチャな物語である。翻訳は、登場人物の台詞が擬古文調で、果たしてこういう訳し方に意味があるのか、と首をかしげた。 (3)の「ヴァテック」は結構おぞましいような悪王物語で、地獄目指して突き進み、最後はちゃんと地獄に落ちるという予定どおりの終わり方。悪行ぶりはなかなかのもので、ちょっとサド侯爵の文学をも思わせる。これの作者自身が両性愛者だったり黒魔術を研究してたり、破天荒な人物だったようである。これはなかなか面白かった。  最後の(4)「死妖姫」は平井呈一さんの訳で創元推理文庫『吸血鬼カーミラ』に収められているものと同じ。遙か昔読んだのでストーリーも覚えていなかったが、これはなかなか傑出した小説である。レ・ファニュの本作は1872年と、本書に収められた諸作の中では群を抜いて新しく、(2)(3)と比べて明らかに書法が違う。「近代小説」になっているのである。場面ごとに臨場感が確保され、ディテールが書き込まれている。本書の中では唯一、ちゃんとした「怪奇小説」になっており、こんにち言うところの「ホラー」の源流として見ても、相当いい線行っていると思う。これは、良い。傑作だ。  旧仮名遣いとか面妖な擬古文調とか、研究者というわけも無い我々一般読者にとっては、あまり感心しない=ほとんど意味のない日本版アンソロジーであった。原作じたいはそれぞれに価値があると思うので、むしろ現代口語で普通に読みたいところだ。

Posted by ブクログ

2021/12/19

・大鴉/ポー ・アッシャア屋形崩るるの記/ポー ・オトラント城奇譚/ウォルポール ・ヴァテック/ベックフォード ・死妖姫/レ・ファニュ 私がゴシック文学に沼るきっかけをくれた一冊です。 それぞれ毛色は違いますが、城や地下室が登場し、超常的な存在に心惹かれてわくわくします。 お勧...

・大鴉/ポー ・アッシャア屋形崩るるの記/ポー ・オトラント城奇譚/ウォルポール ・ヴァテック/ベックフォード ・死妖姫/レ・ファニュ 私がゴシック文学に沼るきっかけをくれた一冊です。 それぞれ毛色は違いますが、城や地下室が登場し、超常的な存在に心惹かれてわくわくします。 お勧めは死妖姫で、吸血鬼の濃厚な百合が摂取できるので興味のある方はぜひ。

Posted by ブクログ

2021/07/26

名作と呼ばれるゴシック文学アンソロジー。本邦初訳バージョンが多いので、語句が古くてすいすい読みにくい面はありますが。それも雰囲気を味わうための要素になります(慣れてくればスムーズに読めるかも)。じっくり浸って読めばうっとりできる一冊。 「詩画集 大鴉」にまずうっとり。この挿絵がな...

名作と呼ばれるゴシック文学アンソロジー。本邦初訳バージョンが多いので、語句が古くてすいすい読みにくい面はありますが。それも雰囲気を味わうための要素になります(慣れてくればスムーズに読めるかも)。じっくり浸って読めばうっとりできる一冊。 「詩画集 大鴉」にまずうっとり。この挿絵がなんとも素敵です。言葉はとんでもなく難しい気もしますが。雰囲気は充分すぎるほどに味わえました。 「オトラント城綺譚」は再読なので、わりとすらすら読めた気が。「ヴァテック」は長大で壮大、豪華絢爛な物語という印象でした。でも主人公のヴァテックよりもカラチスの印象があまりに強烈で、そして恐ろしく感じました。 「死妖姫」は「吸血鬼カーミラ」なんですね。これもまだ読んでいなくてざっとしか知らなかったのだけれど。とても魅力的な物語でした。怖いというよりはひたすらに切なくて物悲しく、カーミラがあまりに可憐で儚いのに驚きです。この「死妖姫」というタイトルがあまりにぴったりな、妖美な作品でした。

Posted by ブクログ

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