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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 新潮社 |
発売年月日 | 2020/07/30 |
JAN | 9784104018079 |
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商品レビュー
3.7
14件のお客様レビュー
谷川俊太郎さんの詩集ですね。 2020年7月発行。 谷川俊太郎さんの米寿になられた時の詩集です。 米寿とベージュ、いかにも谷川さんらしいネーミングです。 ところが、この詩集は、私が今まで読んだ谷川さんの詩集とは、少し趣が違います(そんなに沢山は読んでいませんが!)。静かに静かに、...
谷川俊太郎さんの詩集ですね。 2020年7月発行。 谷川俊太郎さんの米寿になられた時の詩集です。 米寿とベージュ、いかにも谷川さんらしいネーミングです。 ところが、この詩集は、私が今まで読んだ谷川さんの詩集とは、少し趣が違います(そんなに沢山は読んでいませんが!)。静かに静かに、時にはアイロニーを含み、虚無感さえも謳い込んでいます。 詩と共に歩んでこられた人生で、虚無はあり得ないように思いますが、米寿を迎えられて、もう一度、詩と真正面から向き合った詩集のように感じました。 路地 路地を挟んで 建物と建物が 身を寄せ合っている 寂しいひと組の 老人のように 歴史は立ち止まっている 歌はおろか 睦事も 愚痴も聞こえてこない 石は既に 諦めているのだ 死ぬことを 無に向かう 足音を 国家は 路地を煙たがって 広場に 旗を掲げ 風を待っている 路地は いつも何処かに 通じている 幼児の笑い声を 夢見て 言葉と別れて 広々とした青空のどこかから 白い雲のひと刷毛が現れて 風に流れるいとまもなく すぐ消え失せるのを赤ん坊が見ている 老人の私もそれを見ているが 赤ん坊と違って私はそれを言葉で見る その情景は私の内部から外部へ跳ぶ 私の中ですでに時は止まっている 書かれた情景は一枚水彩画のように 意識の額縁に収まっている 赤ん坊を抱いて私は散歩から帰る 日常が当然のように戻ってきて やがて西陽が家並みの向こうに沈む 詩が言葉と別れて闇に消える 詩の捧げ物 文字でも声でもない詩を 伝書鳩のように虚空に放ってみたい 詩はどこへ飛んで行くだろうか 青空が雲を生むように 自然に十分自然に 詩を生みたいと夢想している バッハは音楽を神に捧げた 詩をいま何に捧げればいいのか 捧げるヒトならいないこともないが 曇り空に向かって唐突に 感謝したくなる朝は 詩を忘れている 葉の上の小さな虫を じっと見ているだけで 心が静まるのらどうしてだろう 虚空に詩を捧げる 形のないものにひそむ 原初よりの力を信じて 共感が心に満たされます。詩を短歌を、歌いたいと思う心の動揺を(谷川さんはプロですが、この詩集ではそれが見え隠れしています)、アイロニーに陥る時が私は多いです。なかなか歌えない。 谷川さんの、エネルギッシュな詩との取り組みの裏を真摯に受け止めように思うのは、私だけでしょうか?
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※このレビューにはネタバレを含みます
米寿、姿、表現方法は違っても、この年齢を重ねたかたはこういう心持ちで過ごしておられるのかな…。過去現在そして、老いについて、枯れてゆくことも生き様だという限りのないなにかを感じました。 特に「にわに木が」という詩、心掴まれ何度も読んでしまいます。 「わたしは うん どこか とおくへいきたいのだ ここから とおい しらなのに なつかしいどこか そこには はやしがある ちいさなかわがながれている そこへ」 (にわに木が)の一連より 瑞々しい言葉に目の前に情景が浮かびます 自分がもっと歳を重ねたら、体の変化と共に思考はどうなるのだろうって思いました 「にわに木がたっていて そのうえに そらは ある ありつづける わたしが うまれるまえから わたしが しんだあとまで たぶん わたしが そういうと あなたは うなずいた だまってうなずいた あなたが すきだ」
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