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洪水と水害をとらえなおす 自然観の転換と川との共生
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 農文協プロダクション/農山漁村文化協会 |
発売年月日 | 2020/05/28 |
JAN | 9784540201394 |
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洪水と水害をとらえなおす
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商品レビュー
4.5
4件のお客様レビュー
個人的に尊敬している大熊先生の集大成とも言える本。流域治水は今でこそメジャーになってきたが、ハード整備だけではなく洪水をある程度受容して受け流す、流域住民の心持ちといったソフト面での対策を宗教観や社会的共通資本といったキーワードで解いているのが特徴である。 それはご本人が土木工...
個人的に尊敬している大熊先生の集大成とも言える本。流域治水は今でこそメジャーになってきたが、ハード整備だけではなく洪水をある程度受容して受け流す、流域住民の心持ちといったソフト面での対策を宗教観や社会的共通資本といったキーワードで解いているのが特徴である。 それはご本人が土木工学の大家でありながら、同僚だった宇沢弘文先生や「地滑り免疫論」の小出博先生など出自や価値観を異にする分野からも謙虚に学び続けてきたからだろう。 そのような伝統的自然観・災害観から出てくる現実解としての治水は、今後さらに激甚化すると思われる災害に対して実装が求められる。時間をかけて段階的に破堤していく堤防、水辺を共助のための親水エリアとして流域住民に開放する日常的な連帯など、先人たちの知恵から学びつつも現代科学で対処できる領域は広がっている。
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桂離宮の浸水の話が印象的。今だとどんな感じなんだろう。洪水の水が引くときに泥を追い出す話は明治に古河生まれの大叔母から聞いたことがある。破堤しないで溢水するという話も聞いた気がする。 人と自然、人と人の関係性は面倒。関係性を希薄にすることは快適。本来の関係性が見えにくくなる。人と自然の関係性が希薄になっているのは見せかけで人は自然と切れて生きることができない。日常の見かけの快適性は非日常の災害時に何の準備もないと強烈に突き破られる。洪水は川が溢れることで、それが災害になると水害。毎年は困るが数十年に一度の洪水は受け入れるべし。被害を縮小する治水で対応。数百年に1度は??受け入れる価値観がもやいなおし。 稼働回収ができるようになったのは1990年代の土木機械力の発展による。数百年スパンの自然のイレギュラーを想定する必要性。
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一章の、自然観や近代論は、内山節さんのこととかも出てきて懐かしい感じ(学生のときによく考えたことなので)だけど、 こういうのがわからないと河川のことを論じることもできないのだという風に、市民や学生に思われちゃったらイヤだなとは思った。 勿論、本来大事なことだし、文中にもでてくるJ...
一章の、自然観や近代論は、内山節さんのこととかも出てきて懐かしい感じ(学生のときによく考えたことなので)だけど、 こういうのがわからないと河川のことを論じることもできないのだという風に、市民や学生に思われちゃったらイヤだなとは思った。 勿論、本来大事なことだし、文中にもでてくるJR東日本の不正取水や維持流量や小出博の河川観(おすすめ書籍※ もいいな)とか理解するには、却ってわかりやすいのかもしれないけどさ。 近年の「水害調査」について書かれた4章は出色。 そもそもこういう水害調査のエッセンスが、専門外のかたにも読めるような形で出版されること自体が少ない。 新潟水害の高齢者被災を教訓に、破堤を「一気に」引き起こさないように検討すべきということ。 紀伊半島豪雨で被災した「輪中堤」は、そもそも住まうような場所ではないような危険な地域に強引に高く築かれたものだったということ。 鬼怒川での自然堤防の保全の認識の甘さ。 小田川での井原鉄道等の沿川開発(建築に全く浸水対策がなかった)、支川にバック堤のないような地域だったこと。 千曲川での河積確保が「管理」できていなかったこと。 ・・・どれも説得力があるし、今の課題が詰まっているなと感じる。 後半では、ダムの問題点として、現実的な(基本高水に見合うような)適地の不足、堆砂、「緊急放流」のことなどを指摘。そして、「洪水調節用ダムはすべて撤去すべき」とする等、ラディカルな主張が遠慮なくでてくる。 ダムによる治水が十分望めないとすると、、ということで、河道からの計画的な越流(+洗掘させないための水防活動、そして下流の霞からの河道への還元)という、過去からの技術に脚光を当てている。 更に、「耐越水堤防」として地中連続壁堤防やアーマーレビーといった技術にも焦点を当てているのも印象的だし、さほど異論は感じない(但し、「決壊しにくい堤防」は「決壊の可能性がない」のとは違うことに、留意すべきとは思うけど)。 ただ、最終的な結論が「上下流の住民による徹底した議論による、お互いの痛みの共有・連帯による解決」という、学生のレポートのようなまとめになっていたのは残念。好事例として示している淀川の流域委員会だって、(筆者も書いているが)バラ色ではない訳だし、筆者の率いてきた「新潟水辺の会」だって、(それはそれで感銘を受けるすばらしい活動だが)世代交代や継承・拡大に失敗したようであるし。 それから、利根川の話のところで出てきた「三角波形」の議論には疑問。精度はそこまで悪くないはず、と大熊はいうが、本当にそんなにピークが寝ているものだろうか、と思わざるを得ない。 利根川水系での、足尾銅山前後の火山噴火による河積の減少のことや、信濃川をはじめとした日本海側の河川や平地の与条件として日本海の干満差が小さいこと(による農地の淀みっぷり)等の話は、地理学的にも面白かったし、大熊の集大成たる力作には違いないのだが。 ※)大熊が影響を受けたという小出の著書を抜粋 ①日本の水害~天災か人災か(編著)東洋経済新報社1954 ②日本の地辷り~その予知と対策 東洋経済新報社1955 ③日本の河川~自然史と社会史 東大出版1970 ④日本の河川研究~地域性と個別性 東大出版1972 ⑤日本の国土(上・下)~自然と開発 東大出版1973 ⑥利根川と淀川~東日本・西日本の歴史的展開 中公新書1975 ⑦長江~自然と総合開発 築地書館1987 →読んでみたい!
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