美しい橋

早乙女勝元(著者)

• 販売会社／発売会社: 本の泉社
• 発売年月日: 2020/03/10
• JAN: 9784780719574

商品レビュー

2023/08/26

古きよき物語。隅田川にかかる白髭橋を舞台に若い二人の淡いけれど確かな愛が育まれていく。二人とも貧しいなか、子どもたちに幻燈を見せる活動をきっかけに仲よくなった。でも（おそらく）プラトニックなまま同じ思いの二人の距離が近づいていく。彼のほうは失業中だったところようやく仕事が見つかるが、ブラック企業。彼女も母親が脳溢血になるなど、二人の前には次から次へと難題が降りかかるけど、二人は二人で立ち向かい、乗り越えていく。
若い頃の苦労や貧しさってするべきだよなあと思う。何といっても美しいし、この先への希望があるから立ち向かうことができる。……いや、斜陽の現代日本においては若くても希望がないかもしれないし、貧しさなんて忌避するものなのかもね。そう思うと、昭和30年代の貧しさって幸せといってもいいかもしれない。
何となく道徳の教科書のような甘ったるさもあるけど、それもそれで心地よい。心が浄化されるような物語だった。