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甲州赤鬼伝 新潮文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 新潮社 |
発売年月日 | 2019/11/28 |
JAN | 9784101016719 |
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甲州赤鬼伝
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頑なまでのひとすじの道、愚か者だと笑いますか かれこれ40年近く前になるのかな、年末時代劇「白虎隊」の挿入歌「愛しき日々」の歌詞が読了後に浮かんだ。 歴史は変えられない。武田が滅んだことは誰もが知っている。その武田の一武将として、運命を共にした主人公の短い生涯も悲劇には違...
頑なまでのひとすじの道、愚か者だと笑いますか かれこれ40年近く前になるのかな、年末時代劇「白虎隊」の挿入歌「愛しき日々」の歌詞が読了後に浮かんだ。 歴史は変えられない。武田が滅んだことは誰もが知っている。その武田の一武将として、運命を共にした主人公の短い生涯も悲劇には違いない。 でもこの清冽さはなんなんだ! 主人公は山県昌満。設楽ヶ原の戦い(長篠の合戦)で武田方の武将の父のもとで初陣を迎えるが、織田・徳川連合軍の前に総崩れ。撤退時に赤備え衆を率い、猛将として名を轟かせた父だけでなく、長兄までも失ってしまい、わずか14歳にして赤備え衆を率いる運命を背負わされてしまう。 失意と重圧により精神を病み、行く末を案じられる若者として物語の始めは描かれる。悩み苦しみ、殻に閉じこもる。 しかし、ある人との出会いをきっかけとして、赤備え衆の未来を託された若武者は自らの使命を自覚し、臥竜のごとく雄々しく立ち上がる。 若者が成長する姿は清々しい。そこには打算がない。見返りなど欲しない。父と兄から受け継いだ最強「赤備え」衆としての誇りしかない。 対して、若かりし頃は信玄の信頼も厚く猛将として活躍した穴山梅雪。信玄亡きあと頭領となった勝頼に従うのが癪に障るのか、家康と秘かに通じ、武田家を滅ぼすべく動き出す。まさに獅子身中の虫。 設楽ヶ原も梅雪が勝手に戦線離脱しなければ、あと一歩まで破壊した馬防柵を乗り越えて、武田が勝ち、父も兄も死なずに済んだかもしれない。そんな思いが昌満にはある。 そんな鬱憤があるとき弾け、あろうことか勝頼の御前で昌満は梅雪を詰った。半沢直樹か!ってくらい痛快に。 もうこのシーンで一気に心を奪われてしまった。 誠心の若者は強い。美しい。 赤備え衆は再び昌満のもとで団結し、戦国最強となる! このあとストーリーはもっと面白くなる。 これがデビュー作って、この作者、凄いな。
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武田軍の最強の赤備えを率いた山縣昌景が設楽ケ原の戦いで敗死した後、その最強軍を率いることになった山縣昌満の短いけれど輝かしい勇姿を描いた大作。本作の素晴らしいところは、父・兄の死の克服・復活から功績を挙げ、真摯に軍・国の建て直しに奔走し、非情な運命の中でカッコよく死んでいく姿を、...
武田軍の最強の赤備えを率いた山縣昌景が設楽ケ原の戦いで敗死した後、その最強軍を率いることになった山縣昌満の短いけれど輝かしい勇姿を描いた大作。本作の素晴らしいところは、父・兄の死の克服・復活から功績を挙げ、真摯に軍・国の建て直しに奔走し、非情な運命の中でカッコよく死んでいく姿を、簡潔に、然れどもラストは涙を禁じ得ないほど感情移入をしてしまう作者の作力である。 昌満は父の遺言である「鬼となりて、名を、天下に」という言葉を自問し続ける。この意味を考える時、武田の没落の中にあっては、自らの戦功が却って虚しく響くことに気付く失意の場面は一つのポイント。最後の突撃において、その遺言、呪いと思っていた言葉の真の意味、戦いの根源を見つける展開は一つの成長物語として完璧なラストに思える(成長したのに死んでしまうのは歴史小説ならではであるが)。 改めて気づいたことは、私は、親子や兄弟のように互いを信頼し合う二者が武家社会の定めで敵対するという展開に、非常に惹かれるのだということだ。今回で言えば、昌満と木曾義昌。高橋克彦「炎立つ」における藤原経清と源義家の関係もそう。相手に対して武勇を見せる清々しさとその尊敬する相手を殺さなければならない無情さというのが心に響いてくるように思える。
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