天皇論「日米激突」 小学館新書

小林よしのり(著者), ケネス・ルオフ(著者)

• 販売会社／発売会社: 小学館
• 発売年月日: 2019/10/03
• JAN: 9784098253579

商品レビュー

2021/05/27

ゴーマニズム宣言の小林よりのりと、日本語
も堪能で、近現代天皇制研究の第一人者とし
て知られる、ケネス・ルオフの天皇論にまつ
わる対談本です。

合意できる部分はお互いに盛り上がっていく
のは当然ですが、意見が異なる部分でもお互
いを尊重し合って、さらに高みの結論、落と
し所へと昇華させていきます。これぞ大人同
士の議論です。

きっと偏った考えの論客同士では、こうはい
かないでしょう。

内容はもちろん素晴らしいですが、こういっ
た内容が偏りがちにならない対談の見本的な
一冊です。

2020/03/21

兎に角近年感じることは、天皇の扱いが右も左も酷いこと。左はまぁしょうがないとして、右が皇室に対して不遜極まりないことが目立つ。吉田茂は米の言いなりではあったが、陛下の臣下として、分をわきまえ、自ら「臣茂」と称した。特に現政権はどの内閣（民主や自社さ政権も含め）よりも、このような気持ちが欠けていると感じる。
靖国問題については、Aの者達が祀られて以降、陛下の参拝が無い事は事実であり、中韓がAの事を問題視し始めたのは、だいぶ後の事だから、陛下のご意志として、A又は其の内の誰かにお参りすることを拒んでいると考えざるを得ない。だからといって外せば解決するものでもないだろうが。
その他の議論として、
天皇は神話が無いと成り立たない。三種の神器、これを継承することが正当性を担保する仕組みだが、これらは史実ではない。つまり神話を前提とした存在。
天皇の戦争責任。立憲君主制の下、天皇でも戦争は止められなかった。昭和天皇は満州事変を解決できない田中首相を叱責し、結果内閣が倒れてしまったことで心を痛めており、以降政府への影響を常に考慮していた。
日本がとった帝国主義政策。日本人の生真面目さにより、外国との不平等な条約でも遵守し続け、不平等条約の改正のためには、強力な帝国主義で列強と同等になるしかないと考え、それを実践し戦争に走ってしまった。中国や朝鮮は不平等条約など革命外交で破棄した。
小林氏は宮内庁長官や審議官に呼ばれ、女帝の件で話し合った。その際、長官らは男系派をノイジーマイノリティと称している。彼らと話していれば何が天皇の意思なのか判る。政治家が天皇の考えを聞かないから、宮内庁は国民に天皇の意思を直接伝えて、世論を盛り上げざるを得なかった。このことは、現在の政府が行政を自分達の意のままに動かそうとしている（最近でも検察官定年延長問題が発生）ことを良く現わしていると感じる。

2020/01/21

「日米激突」とはなっているが多くの論点で両者の意見が一致しており、既存論壇右派左派の批判の方が多いのでやや看板に偽りありでは