生命式

村田沙耶香(著者)

• 販売会社／発売会社: 河出書房新社
• 発売年月日: 2019/10/17
• JAN: 9784309028309

商品レビュー

2024/09/22

誰しも、今生きている世界を自分と他者が同じように認識しているのか疑問に思ったことはあるのではないでしょうか。わたし自身も人と笑い合っている時にふと不安がよぎりソワソワと落ち着かなくなることがある。
文化の融合を正義とする人たちへのうっすらした違和感を可視化したような素晴らしい食卓が好きでした。それぞれ違った人生を歩んできて、そこが決して交わらなくても尊重しあって共に生きることはできると思うけれど、それをよしとしない他者が溢れかえっている。
孵化はわたしをみているみたいでつらかった。誰かの求めるわたしでいるべく奔走し、職場では頼れるお姉さん、実家では優しい剽軽娘、彼氏の前では子供好きの母性に溢れる女の子、友達の前ではキャリアウーマンで自立したサバサバ女、もちろん子供が嫌い。結婚式なんて絶対にできないし、彼氏を友達に紹介するなんて絶対にできない。第6のわたしを誰かつくって。新たな地獄を始めたい。

2024/08/29

村田沙耶香、どの作品でも世界観があまりにも独特＆一貫している。日常生活を送る中で一体どんな景色が見えているんだろうか。本作の「パズル」のように、本人の考えることと周りの受け取り方はあまりに乖離しているのかもしれない。彼女の世界観、好きすぎる。
主に性・生の捉え方を通して、私の中にあるあらゆる常識・良識が揺さぶられる感覚になる。本作では、大手町に飼われていた「ポチ」、田舎も都会も命が蠢いている点で同じ「街を食べる」、性格なく環境に呼応する人物・コンビニ人間を読んだ時のような読後感になる「孵化」が特に好き。

2024/08/27

最高に面白い短編集だった。
相変わらず独特な視点から描かれた世界観。
村田沙耶香作品を読むと頭がおかしくなるw
自分の価値観がとても平凡で在り来りなものだと実感させられる。
それがたまらなく心地よくて、ますます魅力に嵌ってしまうのだ…

どのお話も大好きだけど「ポチ」が特に印象に残っている。
とんでもない話だったw
あと老婆2人が共同生活する話も良かった！
どの話も素晴らしいので、自分の価値観に疑問を抱きたい人に読んで欲しいです。

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夫も食べてもらえると喜ぶと思うんで――死んだ人間を食べる新たな葬式を描く表題作のほか、村田沙耶香自身がセレクトした、脳そのものを揺さぶる12篇。文学史上、最も危険な短編集！