将棋の駒はなぜ歩が金になるの？ ちしきのもり

高野秀行(著者)

• 販売会社／発売会社: 少年写真新聞社
• 発売年月日: 2019/09/13
• JAN: 9784879816849

商品レビュー

2024/11/18

　将棋の歴史、名人になるための制度、コンピューターが人間に勝つと将棋の未来はどうなるのだろうか、などなど、競技としてではなく文化としての将棋の知識が得られて面白かった。
　逆に将棋のルールを知りたかったり、強くなるための知識が欲しかったりする場合に読むための本ではない。そういう本であることを示す良いタイトルだなあと思った（タイトルの問いの答えは「わからない」なのだが……）。また、著者は秘境ノンフィクション作家のあの人と同姓同名だが、当然、別人。

　以下、備忘メモ。

■歴史
・家康が囲碁と将棋が好きで、それぞれ「名人」を定め俸禄を与えた。将軍に試合を見せるのと、詰将棋を献上するのが仕事だった。
・江戸時代は名人は世襲制であった（大橋家、伊藤家）。明治になった時、最後の名人には跡継ぎがいなかったため、弟子の小野五平が名人を継いだ。その次の関根金次郎も推挙により就位。その次から実力制に。一九三八年に木村義雄が実力制初代名人に就位。

■トリビア
・将棋の起源は古代インドのチャトランガ。これをルーツとする競技は百ほどあるが、取った駒を持ち駒にできるのは日本の将棋だけ。このルールがないあまたのチャトランガ系競技は引き分けが非常に多いのだが、将棋では引き分けはほとんどない。日本では室町時代には持ち駒制の将棋がされていた記録があるが、いつ誰が始めたかは謎。
・打ち歩詰めが禁じ手であることは二世名人大橋宗古による『象戯図式』（一六三六年) に書かれているが、いつからそうだったのかやその理由は謎。
・将棋盤の脚はクチナシの実の形を模している。周りから口出ししてはいけないからだとのこと。
・将棋盤の最高級の素材は榧（かや）。高齢樹でないと作れず、また何年も乾燥させないといけない。枠線は日本刀で入れる。