マリアさま

いしいしんじ(著者)

• 販売会社／発売会社: リトル・モア
• 発売年月日: 2019/09/07
• JAN: 9784898155103

商品レビュー

2024/11/02

闇鍋という言葉は妙に心をときめかせる。
箸に掴んだものが、はてなんであるかなぞと無粋なことを考えてはいけない。
ひとつ、また一つと黙して口に運び、味わって飲み込むべし。

野生の力が沸々と立ち昇るような、歯ごたえがあるものがある。
じんわりと沁みてとろけてゆくものもある。
見覚えのないはずの懐かしさを醸すものがある。
それらが作り出す滋味溢れるスープが、身体を巡り、温めてくれる。
腹が満ちて夢見心地になる。
腹の底から、ちゃぽり、ちゃぽりと水の音が聞こえてくる。

27篇いずれもおいしくいただきました。
ご馳走様と手を合わせる。

2024/07/15

いしいしんじによる短編集。恥ずかしながら理解しきれないものも少なくなかったが、そういうものは作者の頭の中を想像しながら読むのもまた楽しかった。お気に入りをいくつか◆「ウミのウマ」、舞台となる地域に訪れたことがあるのもあり、情景がよく思い浮かんでいい体験だった。「窓」、なぜだかよくわからないが心が揺さぶられる思いだった。書き出しからして秀逸で一番のお気に入り。「子規と東京ドームに行った話」、本の中でいちばん説明が多くわかりやすいお話だった。勉強にもなった。

2024/04/08

掌編集。
目に見えるもの、目に見えないものか波にゆられるような感覚で関わり合う。ときに少し怖かったり、ときに微笑ましかったり。
彼の小説は、読む、というより、感じるという方が相応しいように思う。だから、あまり内容が記憶に残らないけど、それでも感じた経験が自分の一部を形成していくだろうと信じられること。