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百本杭の首無死体 泉斜汀幕末探偵奇譚集
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百本杭の首無死体 泉斜汀幕末探偵奇譚集

泉斜汀(編者), 善渡爾宗衛(編者)

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百本杭の首無死体 泉斜汀幕末探偵奇譚集

定価 ¥4,950

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 幻戯書房
発売年月日 2019/07/24
JAN 9784864881746

百本杭の首無死体 泉斜汀幕末探偵奇譚集

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2020/05/07

泉斜汀(いずみ しゃてい)は泉鏡花の弟である。 兄と同じく、作家だ。 しかし、評判は芳しくなかった。 若いうちは、お兄さんと同じように作品を書けるようになるかもしれない、という評価も得られたらしいが、いずれ、お兄さんの模倣のし損ないだの、出来損ないだの、あまりな言われようになっ...

泉斜汀(いずみ しゃてい)は泉鏡花の弟である。 兄と同じく、作家だ。 しかし、評判は芳しくなかった。 若いうちは、お兄さんと同じように作品を書けるようになるかもしれない、という評価も得られたらしいが、いずれ、お兄さんの模倣のし損ないだの、出来損ないだの、あまりな言われようになっていく。 兄と弟は7歳ちがい。 10才と3才、17才と10才、22才と15才。 しかもその兄は、あの鏡花である。 弟から見れば、神様みたいなものだろう。 俳句の先生の処にも、兄に手を引かれて行った。 尾崎紅葉先生の処にも、兄に導かれて行った。 そして「斜汀」の名を貰った。 兄のように、兄のような作家になりたいと志すのも当然だ。 そんな兄は、書く前に、その構想を語って聞かせるならいがあった。 そして、書き上げたものを読んで聞かせることもした。 これがいいやら、悪いやら・・・・・・ 書くもの書くもの、鏡花っぽいものになるのも無理はない。 斜汀は、兄のようにはなれなかった。 兄以外のものにも、なれなかった。 作家として、あまり成功しなかった。 と、いかにも才能がなかったかに書かれさえしているが、違う。 大正7年(1918年)、斜汀は彌太吉(やたきち)という老人を訪う。 彌太吉とは幼名。 佐久間長敬(おさひろ)という、江戸の世にあっては、南町奉行所与力であった男である。 5才からそれまでのことは大抵記憶にあるというこの老人の、探偵事実談を聞きに行ったのだ。 そうして生まれたのが、この「彌太吉老人捕物帳」。 全5編あるうちの2編が収められたのがこの本である。 江戸時代の物語は、やはりその時代を知っている人が書くのが一番よい。 斜汀の生まれは明治だけれども、周りには江戸時代を生きている人がいた。 時代の空気がまだ残っていた。 直に生きた人から、空気を知る人に語られた探偵談である。 その上、聞き手は、兄の物語の構想を聞き、それから出来た物語を聞き続けてきた斜汀だ。 言葉がよい。音の流れがよい。江戸の水と空気が通っている。 『印旛沼の怪』  『百本杭の首無死体』 (彌太吉老人捕物帳) 『遊女花扇の死』  (彌太吉老人捕物帳) 『破れた錦絵』 『恋の火柱』 『女の血刀』 『酒匂川氾濫』 『おさんの意気』 『雁金文七』 『小蝶の幻』 付録 『幕末名探偵彌太吉老人を訪う』 井上精二 『斜汀泉豊春論』 伊狩章 解説 『鬼平に連なる伝承 泉斜汀の後期作品』 善渡爾宗衛 杉山淳 彌太吉老人の銘があるのは2編だけでも、彼の影響はそれだけではないだろう。 他の捕物もそうであろうし、また『酒匂川氾濫』などは、地理や建築に強い関心があった老人から想を得たとしても不思議はない。 捕物帳だけはでない。悲恋ものあり、幽霊譚あり。読み心地は様々だ。 語り口がよいものだから、どの物語をとっても、芝居や高座に相応しい。 『おさんの意気』などは、誰か江戸の落語でやってくれないものか。胸のすくような啖呵をぜひ耳にしたいものだ。 『女の血刀』は、女形三人が芸を競う、ほれぼれする歌舞伎になることだろう。 粒ぞろいの物語もさりながら、付録と解説もよいのだ。 なにせ、それまで斜汀の名を聞いたこともなかった私が、彼について、ここまで書くことができるのだから。 この1冊の本を読んだだけで! 斜汀とその物語について、いたく関心を持った私は、さらに彼の物語を読むべく本を探した。 少ない。 そして、高い。 べらぼうに高い。 色々な事情はわかる。 売れるかどうかわからない、まず売れそうにない「無名作家」の本を、大量に印刷するわけにもいかない。 よって、数を絞る。単価が上がる。 わかる。わかってはいるが、それにしても、もうちょっとどうにかならないものか。 「高く売るなら、生きているうちであってほしかった」と、先生もおっしゃるに違いない。 泉斜汀(1880~1933)享年53。 もう10年20年長生きしたら、作家として大いに賞賛を得たに違いない。 作品の舞台化、映画化が相次いだに違いない。 惜しい人を早くになくしたものである。

Posted by ブクログ