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驟雨 韓国文学の源流
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 書肆侃侃房 |
発売年月日 | 2019/07/07 |
JAN | 9784863853683 |
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驟雨
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廉想渉(ヨム・サンソプ)著、『驟雨』。 今年の6月25日、齋藤眞理子さんが、SNSに朝鮮戦争を扱った韓国文学作品を紹介していた。その中の一冊で、図書館で借りることができたこの作品を、休みの日を利用して集中的に読んだ。 朝鮮戦争が起きた1950年6月25日からの三ヶ月間、占領下のソ...
廉想渉(ヨム・サンソプ)著、『驟雨』。 今年の6月25日、齋藤眞理子さんが、SNSに朝鮮戦争を扱った韓国文学作品を紹介していた。その中の一冊で、図書館で借りることができたこの作品を、休みの日を利用して集中的に読んだ。 朝鮮戦争が起きた1950年6月25日からの三ヶ月間、占領下のソウルに残った人々が、戦争に翻弄される様を描いている。思いのほか、戦時下における緊張感や切迫感が、(全くないわけではないが)あまり感じられず、むしろ主人公の男女の恋愛模様を中心に描かれているので、韓国ドラマさながらのおもしろさがある。 それには、朝鮮戦争中の1952年から1953年にかけて執筆、同時に『朝鮮日報』で連載されていたため、韓国政府やこの戦争を批判するような内容や、北朝鮮の人々を人間らしく描くような描写は描けなかったたという背景がある。 『驟雨』の主人公スンジェは、美人で気が強くて積極的。知性があり、英語も堪能でお金もある。まさに大ヒットドラマ「涙の女王」のヘインのようだ。 恋人のヨンスクは、優柔不断ではっきりせず、いつも笑ってごまかすところがある。「涙の女王」のペク・ヒョヌがそのまま当てはまるわけではないけど、彼を演じたキム・スヒョンの物腰柔らかいハンサムな雰囲気が、この登場人物にぴったり重なる。 当時、ソウルの人々が「共産主義」と反共の狭間で、大きく揺さぶられていたことや、若い男性たちがいつ召集されどこに連れて行かれるかもわからない状況であったことが、二人の恋愛模様の後ろに垣間見える。食料がだんだんと不足していき、明日どうなるのか誰にも予測できない不安定な生活を強いられていたことなども。 同時に、朝鮮戦争がどういう戦争だったのか、具体的なことをよく知らないのだなと痛感させられた。それぞれの感情の動きや人間関係については興味深く読めるが、そのときの国の状況はいまいちつかめない。リアルタイムで戦争を描くには、こういった表現しかできなかったし、だからこその生々しさも感じる。 1950年代から、このような生き生きとした人間模様が描かれた作品が(しかもこんな奔放な女性が主人公の)書かれ、なおかつ当時の人々に好んで読まれていたというのは興味深い。 訳者の白川豊氏は、あとがきに、「…百年前からの隣国との関係を冷静に見て理解していく必要がある。そのためには歴史の流れを把握するだけでなく、個別の人間心理にまで分け入って状況をつぶさに居ることのできる文学作品も多いに参考になるのである。」と記している。まさに、それが文学の力と言える。 白川氏は、このほか併せて三部作といわれる作者の長編小説を、20年かけて翻訳したという。日本で出版されたのは、つい5年前の2019年だ。訳者の方たちの偉大な仕事のおかげで、エンターテイメントとして楽しみながら、韓国の歴史や文学を深めることができる。 そしてリアルタイムでは描けなかった戦争を、今を生きる世代が描き続けていることにまた、静かに感動する。 また、この作品については、斎藤真理子著『韓国文学の中心にあるもの』の中に詳しいので、こちらも読み返しながら、他の作品も触れていきたい。
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初出は『朝鮮日報』1952年7月18日~1953年2月10日。朝鮮戦争の戦闘が小康状態となったソウルで復刊された『朝鮮日報』最初の連載小説。物語の時間は1950年6月27日から12月23日まで、北朝鮮軍の南下とソウル侵攻の前に避難できなかった人物たちが、占領下のソウルでどう生き...
初出は『朝鮮日報』1952年7月18日~1953年2月10日。朝鮮戦争の戦闘が小康状態となったソウルで復刊された『朝鮮日報』最初の連載小説。物語の時間は1950年6月27日から12月23日まで、北朝鮮軍の南下とソウル侵攻の前に避難できなかった人物たちが、占領下のソウルでどう生き抜いたかを背景としながら、姜ヨンジェ、申永植、鄭明信の三角関係を描く。勤め先の社長の愛人兼秘書から、自分の家族や使用人の暮らしにも心を配りつつ、申永植を自分の愛の方に引き寄せていく姜ヨンジェのたくましさが印象に残る。 ソウルが北朝鮮軍に占領され、青年たちが志願という体裁で動員されて家族と離ればなれになり、国連軍によるソウルの再占領後に家族の帰りを待ちわびる――直接の戦闘・戦場こそ描かれないものの、「内戦」がどんな悲劇とドラマを生むかが淡々と記述される。しかもそこには、植民地時代の経験と記憶が小さくない影も落としていた。何を信じてよいかわからない混乱の中では、「共に生き抜いた」という事実性こそが最も強い絆となる。朝鮮戦争をテーマとした他の小説も読みたくなった。
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