好きすぎるから彼女以上の、妹として愛してください。(1) 富士見ファンタジア文庫

滝沢慧(著者), 平つくね

• 販売会社／発売会社: KADOKAWA
• 発売年月日: 2019/07/20
• JAN: 9784040732121

商品レビュー

2020/03/20

世の中に妹キャラを主題として扱った作品は数多い。
王道を征く作品は勿論面白いが、それだけでなく時折変則的な作品も世に現れる
本作は同級生女子たちが主人公を「お兄ちゃん」としてレンタルして妹になるというかなり変わった設定の作品だね

最初から妹の実妹モノ、親の再婚によって妹となる義妹モノと違って本作の主人公とヒロインの関係は最初から最後まで完全に他人
けれど、レンタルを通して兄妹になる
だから、ヒロインたちが妹になって主人公の圭太に甘えるシーンは勿論作品の肝となるわけだけど、同時にレンタルしていない時の普通に他人同士の瞬間も作品の肝であるように思えた

というか、ヒロインの初葉と仁奈は最初から圭太を好きだというのに、圭太の発言やらそれぞれが抱えた事情のせいで「彼女よりも妹になりたい！」なんて考えてしまったものだからややこしい事になっているね
オタクの圭太とギャルの初葉は通常なら相容れない存在なのに『レンタルお兄ちゃん』することで親しい関係になることが出来る
初葉も仁奈も『レンタルお兄ちゃん』をきっかけに恋人になりたいとかじゃなくて、妹として可愛がられたいと思って色々とアプローチしてくるのはこの作品の特色と言えるのだろうね

ただ、この状況って初葉と仁奈にとっては良くても圭太にとっては難しい状況だよなぁ……
二人は元々妹として扱われたいという願望を持っていたから構わないものの、圭太は二人を妹として接したいなんて微塵も思っていなかったのである
だから圭太は二人からのアプローチに戸惑い続けるし、どう接して良いか判らないままストーリーは進む
でも、圭太は受動的に戸惑うだけじゃなく、特に初葉が望む兄として振る舞う中で彼女が求める姿を模索しどういう関係になるべきかと考えるようになっていく

模索していたからこそ、終盤にレンタルされたわけでもないのに、困っている初葉を助けるために兄として振る舞った圭太
「他人」なら相手の家の事情には踏み込めない。けれど、相手が「妹」であれば踏み込めるし、頼られたいと思う
圭太と初葉は良い落とし所を見つけたようで

でも、やっぱりこれって恋愛面で考えたら非常にややこしい事になってるよなぁ(笑)
圭太に対して割とヤバメな感情を抱いている仁奈、先輩だけど後輩で妹(仮)な瑞希。初葉に加えて彼女らが今後のストーリーに更に絡んでくると思うと圭太の周囲は本当に厄介なことになりそうだ(笑)