カム・ギャザー・ラウンド・ピープル

高山羽根子(著者)

• 販売会社／発売会社: 集英社
• 発売年月日: 2019/07/18
• JAN: 9784087716771

商品レビュー

2024/06/03

たんたんと物語が進んでいくのだが、作品に登場するヘルメットや雪虫、おばあちゃんの背中、イズミ、渋谷、寮などがいろいろ絡まっている。それらがどれだけ重要なのかは、はっきり言ってよく分からない。もう一歩踏み込みそうで、踏み込まないで次のアイテムが出てくるような感じだった。これが悪いのではなく、読者が想像を膨らませて、もしかすると自分の中の経験とも組み合わせて味わっていくのかもしれない。読解は難しそうだけど、さくっと読めるので文字の流れを純粋に楽しめばよいだろう。

2024/05/25

さまざまな要素に彩られながら淡々と主人公の過去が語られてゆく。意味のない要素かな？と思っていたがどれもそんなことなく欠かせなかった。そして淡々と語られ過去のなかにしれっと性被害にあった彼女の姿が描写されていて、ああだからこんなにも彼女は淡白で淡々としてしまったのだろうか、と思わされてしんどかった。そうやって心を凍らせないといけなかったのでは。最後のシーンもとくにつらくて…全然なんてことない、という言い方を彼女はしてたけど、全然そんなことあるよ。

2023/08/22

　起こったこと・存在することを、宙にただよう小さな虫のように気にせずに生きる主人公。存在するものが視力の問題で見えなくなった祖母。でも祖母は、祖母にしか感じ得ないものを感じていたのではないか。飛び込み自殺した人・高校時代の友人・たまたま入ったバーの店員。デモにつどう人々。他人同士は簡単にはつながれない。つながる必要もない。成長するとは例えば、その人が自分では気づけていないものを見出し、いつくしむことができるようになること。怒りの表明ではなく、世の隅にただようかすかなものを見出すために、手を握りしめよう。