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戦後と私・神話の克服 中公文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 中央公論新社 |
発売年月日 | 2019/05/23 |
JAN | 9784122067325 |
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戦後と私・神話の克服
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戦後と私・神話の克服
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江藤淳のエッセイ・批評のエッセンスを一冊にまとめた選集。 文芸批評を久し振りに読んだのだが、「神話の克服」、本稿で指摘されている日本ロマン派が文学において果たした役割がどういうものなのか、正直良く分からず、ついていけなかった。 「文学と私」「戦後と私」「場所と私」。 ...
江藤淳のエッセイ・批評のエッセンスを一冊にまとめた選集。 文芸批評を久し振りに読んだのだが、「神話の克服」、本稿で指摘されている日本ロマン派が文学において果たした役割がどういうものなのか、正直良く分からず、ついていけなかった。 「文学と私」「戦後と私」「場所と私」。 母のあまりにも早い死、明治国家を「つくった」海軍将校だった祖父のこと、空襲で焼けてしまった大久保の実家、義母の大病と江藤自身の肺病、父との懸隔、家族の困窮など、江藤が何とか文筆で生計を立てることができるようになるまでの様々な困難が述べられ、また戦後の「正義」への違和感が表明される。これらの文章を読んで、江藤の仕事の芯にあったものを感得することができたような気がする。
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本を読みながら「あ、ここは感銘を受けた」と思う箇所はページの上を小さく折り曲げる癖があるのだけれど、冒頭からの「文学と私」「戦後と私」があまりに素晴らしすぎて、ほぼ全てのページが折り曲がった挙句、おもうらで折り曲げたかったのでページが足りなかった。語りが明快で美しすぎないか?とい...
本を読みながら「あ、ここは感銘を受けた」と思う箇所はページの上を小さく折り曲げる癖があるのだけれど、冒頭からの「文学と私」「戦後と私」があまりに素晴らしすぎて、ほぼ全てのページが折り曲がった挙句、おもうらで折り曲げたかったのでページが足りなかった。語りが明快で美しすぎないか?という衝撃と、読み手の心をここで揺さぶろう、という抑制の効いた文体の力があり、とても文学だとおもったしこういうのがやはり批評家なのだとも思ったな。 ところでーー幼少期に母を失い、それから世界と調和できなくなり、その軋轢を緩和するためにひたすら納屋(母の胎内)にこもって文学を読む、というのはほとんどオタク的な振る舞いすぎて、読んでいてちょっと驚いてしまった。わたしは「生身の自分のままでは日常と対峙できず、その軋轢から身を守るためフィクションなどで武装する人間」をオタクだと認識しているのだけれど、ほとんど同じ行動原理ではないか? しかし、なぜこの時代までは、その柔らかな自我を守るための武装が、文学と結託して、社会や、より大きなものを描きたりえたのかがまったく実感として伴わない。江藤淳にとってライナスの毛布であった文学が社会を語り得たというのはある種の文学の力なのだとおもうが、もはや今、文学からはそんな力は失われているように思えるし、オタクたちはまったく現実に作用しない言葉で遊んでいる。オタク的な振る舞いに端を発して世界と触れられるという世界は、一体どんなだったのかと想像してしまった。 それにしても、父の落ち込んでいく様子に日本の敗戦の姿をみていたというのは、あまりに大変なことだが、階級的な問題もありおそらく本当なのだろう。こうした私的な領域から戦後にこだわり、やや右傾化しながらもテーマを追求していくというのは、とても誠実だとおもう。そしてこうした誠実さは、わたしはその主張の立場がどうあれ、とても尊敬する。同時に読み継いでいかねばとおもう。というか江藤淳、読めば読むほど、村上春樹は江藤淳を割としっかり読んでいたのでは?という気がしてくる。 そして、編集が素晴らしい。それぞれの文章が、内容はもちろん、年代別に(引用などで)相互関係を保ちながら緩やかに繋がるように構成されており、江藤淳の戦後への屈託を読む上でのベスト・アルバムといった編成になっている。良い読み手の編集者がまだギリギリ存在している書き手なのだと感じる。
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戦後の価値観のなかでなぜ己が保守的な言説を繰り返してきたのかを、あたかも吐露するような随想でした。相当のルサンチマンが蓄積されています。江藤淳の過酷な戦後の暮らしと喪失感について当時どれほどの共感があったのかはわかりませんが、戦後民主主義が掲げる理想に対して保守が私情をもって対抗...
戦後の価値観のなかでなぜ己が保守的な言説を繰り返してきたのかを、あたかも吐露するような随想でした。相当のルサンチマンが蓄積されています。江藤淳の過酷な戦後の暮らしと喪失感について当時どれほどの共感があったのかはわかりませんが、戦後民主主義が掲げる理想に対して保守が私情をもって対抗する様はインティフアーダ的にも見え、左右から嘲笑と感動と両極端な反応があったのではないかと想像しています。
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