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幻想の経済成長
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幻想の経済成長

デイヴィッド・ピリング(著者), 仲達志(訳者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 早川書房
発売年月日 2019/03/20
JAN 9784152098450

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商品レビュー

4.2

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2023/05/29

GDPは第二次世界大戦中のアメリカが国民所得推計を測る為、生み出された。漠然と、戦争能力を査定するための指標が始まりだと認識していた。また、お金でカウントできないものは含まれない。つまり、犯罪率が低く、公共サービスの高い効率性、健康で長い平均寿命など、こうした点はGDPに含まれな...

GDPは第二次世界大戦中のアメリカが国民所得推計を測る為、生み出された。漠然と、戦争能力を査定するための指標が始まりだと認識していた。また、お金でカウントできないものは含まれない。つまり、犯罪率が低く、公共サービスの高い効率性、健康で長い平均寿命など、こうした点はGDPに含まれない。本著は、こうしたGDP信仰に冷や水を浴びせる一冊だ。しかし、こちらはGDPなんて端から絶対視していないため、自ら冷や水を浴びる。まるでアイスバケツチャレンジだ。 人々の幸福感は絶対的な富の量ではなく、周囲の人間との相対的な差異によって決まる。不平等賃金を拒否する猿の例を引くが、まさに。カウントして、労働を測り、比較し、気持ちを満たす。位置関係を確かめるための指標が世になんて多い事か。自分の価値は自分で決めれば良いが、プロジェクト単位では、その意義が結成力に直結するため、組織維持のために指標が必要。国家も同様。 幸福な国々かどうかは、6つの変数によって説明できる。所得、平均健康寿命、頼れる知人や親族の存在、他人に対する信頼感、行為主体性、寛大さ。有名なブータンの国民総幸福度GNHなんていう指標もある。皮肉な話だ。幸せかどうかは主観で良いのではないか。指標で測られるお仕着せの幸福感にリアルとのギャップはないのか。幸福モデルは人により異なる。 GDPが素晴らしい発明である事は間違いないが、経済成長を測定する一指標に過ぎない。問題は、GDPがあらゆる尺度の頂点に君臨していることで、国が成功しているかどうかその数値だけで判断されてしまうからだ。この点は良く分かる。こうした理解の下、正しく判断する事が重要だ。

Posted by ブクログ

2023/05/02

週刊東洋経済でインタビューを読み、興味がわいたので書店で購入しました。結果から言うと満足しています。GDPの限界論については以前から一連の議論がなされていたかと思いますが、ここ数年間の議論熱の高まりを見ると、今度こそ本当に変化が起こるのではないかと感じており、その背景や世界中での...

週刊東洋経済でインタビューを読み、興味がわいたので書店で購入しました。結果から言うと満足しています。GDPの限界論については以前から一連の議論がなされていたかと思いますが、ここ数年間の議論熱の高まりを見ると、今度こそ本当に変化が起こるのではないかと感じており、その背景や世界中での議論の広がりなどは本書から包括的に理解できました。著者はフィナンシャル・タイムズの記者ということで、現地での取材を前面に打ち出した記述が多いのですが、特に新興国の統計作成官へのインタビューはなかなか興味深く読みました。統計作成は政治に密接に関係していること、それは特に新興国では顕著だということがにじみ出ている内容でした。つまり現政権に不利になるような統計作成は自分の身(生命さえも)を危うくする、ということです。 他方少し気になった程度ですが、本の端々から「労働者vs資本家」「富裕者vs貧困者」のような二項対立的な記述が多く、これは著者の心理的バイアスがかかっている気はしました。ベストセラーになった本「ファクトフルネス」の用語を使えば分断本能がかかっている気がしました。本書では、労働分配率が下がり資本分配率が上がっている、という記述がありましたが、確か実際は両方の数値が下がっているはずです。その意味で、インタビューなどの現地現物の情報が多い反面、データの裏付けが弱い印象は感じました。ただGDPあるいはGDPの代替指標として世界各国で提案している各種新指標については、現地インタビューを通じてリアリスティックな姿を提示してくれてとても理解が深まりました。

Posted by ブクログ

2021/06/06

GDPの有用性を認めつつも、人間の幸福度を測るには問題があることを提起しています。筆者は今までの経済記事を、鵜呑みにはしない方がいいよと言っているように思います。すごく乱暴に例えるなら、工場を建てて環境を破壊して、さらにその環境を戻すための施設をつくればGDPは増えるのだろうけど...

GDPの有用性を認めつつも、人間の幸福度を測るには問題があることを提起しています。筆者は今までの経済記事を、鵜呑みにはしない方がいいよと言っているように思います。すごく乱暴に例えるなら、工場を建てて環境を破壊して、さらにその環境を戻すための施設をつくればGDPは増えるのだろうけど、それでいいですかということかと。国民一人あたりのGDPというワードを少し疑いながら、報道を見ることになりそうです。

Posted by ブクログ

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