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〈いのち〉とがん 患者となって考えたこと 岩波新書1759
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 岩波書店 |
発売年月日 | 2019/02/21 |
JAN | 9784004317593 |
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〈いのち〉とがん
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商品レビュー
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8件のお客様レビュー
著者に代わって詠める、「発病を『異任地異動』と言い切ってがんと生きる人生始める」「喜びを失わぬこと最期まで生ききることが私の願い」。
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著者はドキュメンタリーなどを中心としたテレビ製作者だという。本書は著者による自身の闘病を記録したドキュメンタリーとみることができるだろう。「文系」を自認して、科学技術について正確な理解を心がけつつ簡潔に自身の心身の状況を記していこうとする姿勢には、率直に敬意を覚えた。 膵がんとい...
著者はドキュメンタリーなどを中心としたテレビ製作者だという。本書は著者による自身の闘病を記録したドキュメンタリーとみることができるだろう。「文系」を自認して、科学技術について正確な理解を心がけつつ簡潔に自身の心身の状況を記していこうとする姿勢には、率直に敬意を覚えた。 膵がんというきわめて困難な病と向き合い、「集学的治療」という言葉を実感から意味づけ、再発後の抗がん剤治療体験から「生き切る援助」が不足する現状を描く筆致は、平明ながら鋭く、また重いものがある。キューブラー・ロスの「死の受容」モデルに疑問を呈しているところなど、ひじょうに勉強になった。安易に人を励まそうとしたり、逆に悲惨な状況を感情的に描いたりする、ある種の「説教臭さ」とは無縁であり、それゆえに訴求してくる力が強い一冊と感じる。 著者が年来追いかけていた遺伝子技術について、出生前診断とがん治療を重ねながら記そうとした部分は示唆的である。テクノロジーの進歩の両義性に言及しようとしていたのだろうか。もうその時間は残されていなかったのだろうが、より十全な展開がされていればと残念に思う。
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「二人に一人が罹患、三人に一人が死亡」、まさに「国民的病」となったがん。医療の進化で、全がんの10年死亡率は58%と、がんは治る病気になりつつあるが、「すい臓がん」は5年生存率9%と最も手ごわいがん。 著者は、東大文学部卒業後NHKに入社、札幌放送局、東京の番組制作局のディレクター・プロデューサーとして、福祉・医療・教育などの番組に携わり、NHK放送文化研究所主任研究員などを経て、教育番組部専任部長、山口放送局長、編成局主幹(総合テレビ編集長)…。女性キャリアの花道を歩んでいた。さらにこれからという56歳で、すい臓がんの宣告を受ける。それもステージⅣ(転移あり)。この「絶対絶命の状況」から二度の手術、二度の再発、術前術後を除く継続した化学療法とその副作用との闘いを継続。生きるための治療の選択、術後の副作用があるなかで何を食べればいいのか、術後の不安の中で届かない患者の声、死の恐怖を、「患者として」言葉を紡ぐ。 「詩人のジェイソン・シンダーは、『がんとは死すべき運命という名のガラスにあなたの顔をおしつけさせる、すさまじい経験である』と書いている。だが、患者がガラス越しに見えるのはがんの外側にある世界ではなく、がんに乗っ取られた世界-がんが無限に映し出される鏡張りのホール」(がん4000年の歴史、シッダルータ・ムカジー)。 著者はシッダルータ・ムカジーの言葉を引用しつつも、「でも私は、たとえ絶体絶命でも『鏡張りのホール』にいるのではないと思ってきた。素っ頓狂なたとえかもしれないが、これは私にとって最後の『異任地異動』」。全国転勤が宿命の放送局、著者も異動を経験。「西の方、陽関を出づれば故人無からん(知人はいないだろう)」(王維)。風景が一変する世界。そこはどうふるまっていいかわからず、孤独も感じる初めての場所。しかし、暮らし始めれば、その土地の歴史に興味がわき、自然に惹かれ、風習の一端に触れる。初めはとりつくしまのなかった人とも言葉を交わし、時には酒を飲み、ともに出かけるようにすらなる。がんの国には希望して来たわけではない。しかし、あらたなことを教えてくれる人、助けてくれる人との出会いがあった。そしてこれまでの友人、知人たちは私の危機に対して、これまで以上に励ましや助力を惜しまないで接してくれた。だからここは「鏡張りのホール」ではなく「陽関の西」。 著者は1960年生まれ。この本は再々発が分かった2018年2月から11月までに書き綴られた。1ケ月後の12月に逝去。癌だと宣告されてから2年7ケ月後の逝去であった。 心に響く豊富な引用、深く重く刺さる安らぎを求めての行動。極めてメッセージ性が強い本。言葉に力がある本。身近にがん患者のいる方に、強くお薦め。
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