関係障害論 老人を縛らないために シリーズ考える杖

三好春樹(著者)

• 販売会社／発売会社: 雲母書房
• 発売年月日: 2018/11/20
• JAN: 9784876723577

商品レビュー

2023/01/28

高齢者認知症ケアの第一人者にして全国区のカリスマ、三好先生の古いご著書の復刻版。三好先生の本を読むのは初めてではないが、本作は初めて。一気に読み終えた。
なによりも、一冊全てを通じた三好先生の語り口が心地良い。
時にはフーコーやマルクスの古典からの引用にまで言及するやや難解な部分もあるにはあるが、それを全く感じさせない軽妙で飄々とした、時にはクスっと笑ってしまうユーモラスなエピソード等も交えながら、最後まで読者を飽きさせずにエンディングまで誘う筆力は大したもの。これは他に読んだご著書にも共通する三好先生の偉大なお力の一端だと思う。
著名で人気のご講演は未だ一度も聴いたことが無いが、機会があればそのうち是非一度、リアルなご講演も聴いてみたい！

2022/09/29

自己実現ということに対して、進歩や、向上という時間的把握に対して、「今の関係」という無時間的な把握をする。(そして関係は３種あり、それぞれがそれぞれに影響を与える。)専門家による支援実践の現場はブリコラージュだと本文にあるが、その支援実践が構造主義的にしかもわかりやすく把握されている。

2019/07/05

【何度でも読みたい福祉の教科書】
1、『防衛機制の先取り』
「私なんか死んだほうがいい」
自分の口から先に言うことで、言われたくないことに気づいて欲しい、遠回りに思いを伝えようとする。
「死んだほうがいい」とは言われたくない、それ以上に「大切にして」と口にできない思いが隠されている。
実に人間らしいと思います。

2、『小さな自己実現』
自己実現とは大きなものでなくて良い。
ご飯が食べられて幸せ。
お風呂が極楽。
あなたと話せて楽しかった。
そんな小さな自己実現、難しく言わなくたっていい。
「毎日が幸せ」と思えれば、生きている価値があるというもの。
実に人間らしいと思います。

3、『関係こそその人らしさ』
社会が悪い、環境のせいだ。
他人のせいにすることは自分の人生を生きてませんよね。
《関係》＝家族的関係×社会的関係×自分自身との関係
どんな人と一緒にいるか
どのような居場所があるか
自分にOKを出しているか
いづれかが欠けると、その人らしさが発揮されなくなってしまいます。
その人らしさを感じられない生きづらさが、認知症に「逃げ込む」原因ではないか。
そしてそれは統合失調症をはじめとする精神疾患も同様ではないか。
その人らしさを考える時、３つの関係に分けて考えると、よりその人を理解できそうです。